Lonigng...
case5 Remos J Lupinの場合
ホグワーツも金曜日ともなれば、翌日に休日を控えて生徒達も自然と浮き足立った空気に包まれる。
勉強授業課題から開放されると、唯其れだけの事だと言うにやはり根底は未だ子供なのか、週末を心待ちにしている者は愕くほど多い。
勿論、休日も返上で勉学に励む者も一握りでは有るが存在する。
どちらかと言えば、も休日を満喫すると言うよりは独り部屋で読書をする事を好む部類の人間であり。
今日も今日とて、郷里から梟便で届いたばかりの本を読もうと小脇に抱えて図書館を目指した。
其の途中、やっぱり部屋で大人しくしていれば良かったと痛烈に後悔する出来事に遭遇する。
急勾配の坂を上る様にくねる道を進めば、何処からとも無く酷く甘い薫りが鼻をついた。
例えるなら、焼き上がったばかりのシフォンケーキ、蜂蜜をたっぷりと落したハニートースト、柔らかで上品な薫りが漂うホットココア、上げたらキリが無いそれらの種類を一瞬で脳裏に描けるのはの得意分野と言えた。
郷里の両親がパティシェをやっている為に、幼い頃から甘い物に慣れ親しんだ環境下、否応為しに食べさせられた菓子類は並みの人間の倍は行く。
其れに付け加えて、甘党の両親の血をしっかりと受け継いだは、身体が拒否反応を示すドコロか縄で引っ張られる様に自然と香りの方に足が向いていた。
其の時既に、図書館に本を読みに行こうと言う第一の目的等記憶の彼方からすっ飛んでいる。
「 …やぁ、。丁度クッキーが焼きあがったトコロなんだ。 」
「 リーマ……ルーピン先生、あの、私は… 」
「 この匂いにつられて来たんだろう?は甘いものが大好きだからね。
さぁ、ゆっくりしていくといい。今ホットチョコレートを入れよう。 」
私は今から図書館で本を読むんです。
思い出した其の一言が如何しても言い出せずに居れば、追い討ちを掛ける様に次々に飛び出すお菓子の種類に脳内が再感染する。
ズルズルと引きづられる様にルーピンの自室に入り込めば、決定打とばかりに至れり尽くせりのお菓子の山。
更にはハニートーストも真っ青の綺麗な琥珀蜂蜜色の瞳で真っ直ぐに見詰められれば、「帰ります」とは到底言える筈も無い。
苦笑を浮かべる暇も無く、目の前の光り輝くお菓子の大群を視野に入れれば、「要らないよね?」との問いと共に差し出された掌に抱えた本を置く始末。
立ち昇る甘い香りを含んだ湯気、隣には柔らかい笑みを浮かべた恋人、目の前には大好物のお菓子。
これ以上の贅沢を堪能しないで如何する、と本能が言いかけた刹那に、心の中の理性が叫んだ。
瞬間、ハッと闇から覚醒する様に意識を戻したは真顔でルーピンに言う。
「 リーマス、私…要らない。 」
「 え?如何したんだい?君がお菓子を食べないなんて…具合でも悪いのかい? 」
「 い、いえ具合は万全…、寧ろ全部食べ尽くせる位に胃はバッチリなんですが…その… 」
「 何か他に不都合でも?
あ、体重を気にしてるならは痩せ過ぎなんだからもっと食べた方が良い位だよ?
」
「 た、体重も気になるところなんですが…その… 」
「 一体何が原因だと言うんだい? 」
「 …禁欲、してるんです。
だって何時もリーマスよりも私がいっぱい食べちゃうから…! 」
余りに真面目な瞳で言った為か、其の言葉を言った瞬間ルーピンは暫し固まり其の後に堪え切れなかったのか声を上げて笑った。
お腹が痛いとでも言うように、脇腹を心成しか押さえながら、甘い蜂蜜色の瞳を一層甘くして穏かな表情の侭。
一頻り笑い終えたのと、が顔を朱に染めて俯いたのは略同時刻。
項垂れる様な其の仕草を見かねたルーピンは、ホットチョコレートを一旦机の上に置くと、空いた腕の中にをすっぽりと抱き込んだ。
幼い上に小柄な少女は、ルーピンの腕の中に抱かれれば暴れるのを取り押さえこむのも容易なほどに腕の中に納まる故、抱き込まれたら最後強く抱きこんだ腕を離す訳が無い。
如何していいのかすら判らないが抱かれた侭にルーピンの表情を伺えば,蜂蜜色の瞳が酷く優しげに笑んだ。
「 、私が一番好きなもの、何か知ってるかい? 」
「 …一位がお菓子。次いでチョコレート、甘いもの。 」
「 其れだけ? 」
「 …かな? 」
言えば一瞬、ルーピンは哀しそうな表情をしたけれど其れも直ぐに何時もの笑みで消してしまった。
指先を伸ばして焼き立てのクッキーを掴むと、其れをパキリと二つに折って一方をに差し出した。
仄かに鼻を付く甘い香りは酷く食欲をそそり、我慢し切れず誘惑に完敗したは其の侭其れを口に含んだ。
途端に広がる香ばしい香りと甘い味が口の中一杯に広がって、なんとも言えない幸せな気分にの表情は自然と綻んだ。
其の表情を見て、ルーピンもより一層幸せそうに表情を崩す。
自然と肩から流れ落ちた艶のある髪を指先で梳くって撫ぜる様にしてやれば、擽ったそうに身を捩って笑みを零す。
絵に描いた様に幸せな雰囲気に包まれた空間の中、先の解答をする様にルーピンが飽きずに髪を何度も梳きながら告げてきた。
「 私は、が幸せそうに笑ってくれるのが一番好きなんだ。 」
「 え? 」
「 だからね、お菓子の量云々じゃなくモノ其の物でもなくて…
この空間に君と二人で居れる事が幸せなんだよ? 」
何を今更そんな事を言い出すのかと問う前に、当たり前に為っていたこの関係に気づいた。
笑みを浮かべてはいるけれど、本当は先の質問でお菓子ばかりしか上げられなかった事に悲しんでいるのだろう。
本当はこんなにも直ぐ傍で愛されていると知っていた筈なのに、気付いたのは言葉で告げられてから。
だけれども、如何返事を返していいのかすらも浮ばない侭で、気がついたら背伸びをして頬に手を沿え其処に口付けを落していた。
唇ではなく、頬。
其れだけでも自分からするには精一杯だと言う様に頬を赤らめたの唇に、瞳と同じ甘いキスが降りて来た。
柔らかい口付けは、仄かに甘いチョコレートの薫りがして。
目の前のどのお菓子よりも甘い時間が、此れから静かに幕を開ける。
Remos J Lupin…温厚穏健、純然とした心を透過したその甘い瞳に映し出されるのは、蜜よりも甘い唯独りのhoney。
case1 Severus Snapeの場合
case2 Lucius Malfoyの場合
case3 Load Voldmortの場合
case4 Tom Marvolo Riddleの場合
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