Lonigng...

case2 Lucius Malfoyの場合







マルフォイ家の朝は、今日も当主の不機嫌極まり無い声によって目覚めると言っても過言では無い。
可愛らし気な鳥の囀りが聞こえ、薄白色のカーテンから毀れる様に射し込む陽の光りは酷く温か味を帯びていて深い眠りに堕ちていたベットの主を覚醒させようとしていた。
最も、ベットで安眠を貪っているのは可愛らしい小柄な女性で、誰かの代わりの様にブランケットを胸に手繰り寄せた侭細い髪を背に垂らして夢現の世界に居る。
隣に居たであろうダブルベットの主は面倒臭そうに椅子に深く腰を落して一点を見詰めた侭。
銀糸に蒼青の瞳を兼ね備えた容姿端麗の男こそ、この広大なる屋敷の主でもあり、代々続くマルフォイ家の現統帥ルシウスその人。
眼前でテキパキとまるで機械人形の様な手付きでネクタイを締め上げ、身形を整えていくのは代々マルフォイ家に仕える専属の執事。
誰しもが見慣れたこの光景、其のルシウスの隣には茶褐色の分厚い手帳を持ち上げた男が、事細かに彼の一日のスケジュールを告げていた。
詰まらなそうにその予定を右から左へと聞き流しながら、ルシウスの瞳はベットの上で安眠を貪る愛しい妻に向いていた。
何が哀しくて、付き合いと言えど折角の休日を妻以外の興味関心皆無の名すら覚える気に成らぬ令嬢と過ごさねば為らぬのか。
考えれば考えただけ、莫迦莫迦しさに腹が立つ。





吐きかけた溜息を押し殺す様に唯黙秘を続ける囚人の様に沈黙を守れば、予定を聞いているのだろうかと執事が表情に焦りの色を見せた。
勿論、ルシウスが聞いて等いない事は明白で有るが、其れを指摘し訂正出来る人間はこの屋敷には唯の独りを除いて存在しない。
其の稀な人物は現在ブランケットを抱き締めた侭夢の世界を堪能中であり、彼女以外の他の人間は口が裂けても主に物言い等出来る筈が無かった。
如何にか早めに起きてくれないだろうかと思うけれど、昨日は金曜日、本来ならば今日は休日である筈の土曜日。
況してや、今日は望みもしない他の女性とのディナーと有っては…想像する事さえ間違っているが夜の営みが普段以上に行われた事は容易に想像が付く。
眼を覚ます事が万が一有ったとしても、起き上がれることは無理に近いだろうと誰もが思った其の時。
ブランケットがベットからずり落ちる音が聞こえ、寒さが温い身体を襲ったのか、漆黒の瞳を奥に隠した双眸がゆっくりと開いた。










「 …ルシウス…何処…かに…お出かけ? 」


「 あぁ、詰らぬ仕事だ。、未だ寝ていろ 」










未だ夢現なのか、瞳を擦りながらも背を起こして立ち上がろうとすれど、流石に腰が据わってないのか直ぐに眼前のブランケットにバフンと顔ごと突っ伏す始末。
元来低血圧で朝が極端に弱いは、普段も目覚まし通りに起きれた事が数少ない。
其れでもルシウスよりは早く起きようと毎日苦戦に苦戦をしき、平日は其れでも起きれるのだけれど身体が慣れてしまっているのか休日には滅法弱い。
其れを知り尽くすルシウスは、縁れたタイを直そうと手を伸ばしてきた執事の腕を払い除ける様に立ち上がるとベットサイドに腰を落す。
抱き直す様な形で起こしてやれば、焦点定まらぬ瞳で此方を伺い、藍を滲ませた瞳で見詰めてやれば漆黒の瞳が大きく開いた。
夢なのか現実なのか、朧気な意識と格闘しているのだろうか、抱き起こされても尚、コクリコクリと船を漕ぐ。










、夜には戻る。其れまでに… 」










意識定まらぬ妻を抱えた侭、ベットでもう一眠りさせようと腰に腕を回して横たえ様とした刹那、グイとローブの袖を強く掴まれた。
寝惚け眼のの何処に其の様な力が有るのかと愕いた様に指先を見詰めれば、何時ぞやに聞いた小さな赤子が必死に親の指を握る様を思い出した。
人間、無意識の時の方が平常心の時よりも何倍も自制の心を欠く。
行きたくないと思っている心がそう勝手に解釈させるのか、の其の行動が【行かないで】と物語っている様でルシウスは柔らかく表情を歪めてしまう。
虚ろな瞳の侭、其れでも真っ直ぐに蒼青の瞳を見詰めたは、ルシウスのローブの袖口を掴んだ侭に決定打を下した。
如何やら夢と現実が合い混じっている事には変わり無く、にしてみれば其れは夢の中の一幕としてしか捉えていないのだろう。










「 ルシウス、もう一回…ね? 」










その場に居た誰もが凍った様に静止するかの効力を発する言葉を言った刹那、あどけない表情の侭可愛らしく小首を傾げ問うた真似をする。
其の仕草が甲と出るか、寝相の所為か暑がりの所為か、第二釦まで綺麗に外された寝着に空間が生じた。
小首を傾げた反動からか、華奢な身体が大きめの寝着の仇と為ってしまう。
出来立ての空間を利用して細い肩口がスルリと滑り落ちる様に露になり、折れそうな細い鎖骨がクッキリと柔らかな陽の光りの下に映し出された。
第二釦ギリギリのラインには下着等着けていない為に、もう少し身を捩れば胸さえ露になって仕舞いそうな状況下に置かれる。
そうでなくとも、白い寝着に負けない位に白い柔肌が垣間見れ、桜色の唇は濡れた様虚ろな瞳は誘う様にルシウスを見詰める。
此れは不味い、と室内に居た執事の誰もが思った瞬間、最も恐れる事態の引き金を引く言葉をルシウスは静かに吐いた。










「 …今日のディナーはキャンセルだ。先方にそう伝えておけ。 」


「 で、ですが…何とお断りを?当日にキャンセルされる等と不躾な事が許され… 」


「 風邪でも引いたと言っておけ。 」


「 さ、昨夜は元気一杯に会話されて居たのを知っております故、如何も其れは… 」


「 為らば腹を壊したとでも言っておけば良い。 」










ああ言えばこう言う。
正に其の状況がピタリと合う中で、ルシウスも引かなければ執事も引こうとはしなかった。
今日のディナーの予定は魔法省直々のモノで、断れる位の低レベルなものならば話が来た時に断っていた筈。
其れでも渋々支度をしなくては為らない状況下に置かれたのだから、余程高官な人間の娘と捉えて良い。
今後の出世云々にも十二分に支障を来たす様な逢瀬、況してや当日にキャンセル等と先方に如何伝えようか、そんな事が許される筈が無いと執事は必死にルシウスを説得する。
しかしながら、当のルシウスは更々行く気を消失したらしく、執事の助言を悉く拒否する始末。
こうなったら手に負える者は独りしか居ないと、の方を向けば酷く扇情的な姿を晒した侭にルシウスの腕の中で眠りに落ちていた。
吐きたくなる溜息は、主の為に有るのだと執事は何度と無く経験してきたこの状況にホトホト困り果てる。
一切の責任はルシウスに有り、自分たちは何も悪く無いと言うに、ルシウスと会話をすればする程責任はそのまま自分達に有る様な気がして頭を抱えたくなった。










「 旦那様、お願いですから… 」


「 行かぬと言ったら行かぬ。
 其れより貴様等…何時まで私の妻を見ているつもりだ?さっさと出て行け…! 」










落ちたのが雷なら其方の方が未だ救われると心に思いながら、慌てて眼が離せなくなっていたから眼を引き剥がした執事達は部屋を駆け出した。
パタリと扉が閉まる音がして、ガチャリと錠の落ちる音が廊下に響く。
瞬間、如何足掻いても事が済むまで部屋からは一歩も出て来ない未来予想図が描かれた。
が目覚めてルシウスを諭してはくれないかといっそ降参か請願の意味合いを篭めて祈ってみれど、お生憎、今日ばかりは其れも叶わないと悟る。
何だかんだで、先方に言い訳を考えて其れを告げた際にキレられるのは自分達だと初めから判って居たのなら昨日のうちにしておけば良かったと後悔だけが残る。
しかし其れでも、明日もまた同じ様に主に仕えるのだろうな、と思い傍若無人なルシウスの執事以外に仕事を見つける気が起きない自分達が一番重症過ぎて話にならない。
如何頑張っても、後戻りも転職も考えない時点で、主に負けているのだと思い知らされた。
寧ろ、勝てると思う事自体が間違っているのだと。






ルシウスが、と共に階下に姿を見せたのは其れから約半日が過ぎてからであった。









Lucius Malfoy…冷酷冷徹な灯を宿していない性格の裏には、何より愛しい存在を優先する契が刻印されている。







case1 Severus Snapeの場合
case3 Load Voldmortの場合
case4 Tom Marvolo Riddleの場合
case5 Remos J Lupinの場合




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