Lonigng...
case4 Tom Marvolo Riddleの場合
【 ハッキリ言ってあげればいいのに。 】
「 何を如何ハッキリ言うの?私は丁重にお断りをした、其れで充分でしょう?! 」
【 全然。丁重じゃなくて、事実を説明してあげなきゃ 】
スリザリンの談話室、元々使われる事自体が珍しい其の部屋は深夜ともなればより一層誰も寄り付かない空間へと変化を遂げる。
皆が当に寝静まったであろう深夜、暖炉に僅かな燈が灯されただけの暗い部屋に独りの少女の声が響く。
と言っても、酷く小さな声でしかなく、耳をすまさなければ内容を理解する事は困難で有ると言える。
そんな状況下で耳を凝らしてみれば、少女は誰かと会話を交わしている様に喜怒哀楽の怒りを交えた口調で話し続けては居るが肝心のその相手は見受けられない。
唯ぼんやりと白い霧状の浮遊物がゆらりゆらりと空中を漂っているに過ぎない。
そうして少女は、事も有ろうにその浮遊物に向かって罵る手前の精神状態でモノを言っている様にしか捕える事が出来ない。
「 …事実?リドル…事実って何よ? 」
【 事実?そんなの、言わなくても判ってるだろう? 】
酷く愉しそうに表情を歪めた白い靄の人物こそ、に取り付いていると言っても過言ではない人物、トム・マールヴォロ・リドル。
ゆらりと自由に身体を移動させ、其の度にクルクルと視点を変えなければ為らず、其の内の半数以上は追いつく事すら出来ずに瞳を鋭利にさせるを見ては笑って。
軽蔑侮蔑する様な笑みではなく、心の奥底の愛しさ滲み出たと言った方が正しい位の笑みに、当の本人は気付いていないらしい。
慕情を表した処で気付いて貰えぬ其の事実が酷く気に入らないのか、リドルの機嫌は今日も優れぬ侭。
とは言え、今日はさして機嫌が悪い訳でもなかった。
リドルが温厚な面の下に隠した本性を現す様に機嫌を損ねたのはが、同じスリザリンに在籍する有る人物から告白を受けた時であり、其れから今の今まで不機嫌其のモノ。
普段はの心の中に巣食う形で取り付いている為に、こうして姿を表さない時は120%の確率での中に居る。
勿論、が告白を受けた時も、リドルは其の中で面白そうに男の一喜一憂の表情を眺めていた。
唯一言の台詞を聞くその瞬間までは。
「 他に好きな人でも居るの? 」
「 まさか、そんな人、居るわけ無いじゃない。 」
男からの告白を断るその瞬間口にしたの台詞は、温厚で通すリドルの面を根底から剥ぐ程の効力を持つ刃と化した。
に気付かれる様に態と脳内で浅い溜息を吐き、次に吐く言葉は皮肉か厭味か。
彼是と考えて居る内に、皮肉とも厭味とも取れぬ…言うなれば醜い嫉妬が剥き出しになって口から吐いて出た。
其れが、事の発端に始まった。
霧状の浮遊物から固定形の姿を見せたリドルは想像以上に柔らかい眼差しだった。
しかし、紅蓮の焔から滲み出る其の深紅の赤は、怒りの其れを象徴するかに見え、常に無い鋭さ。
表情は柔らかく笑すら湛えて物腰も至って柔らかいと言うに、唯一瞳だけは笑っては居なかった。
鋭利な瞳に見詰められ、一歩距離を引いたの肩口を掴む様に手を添えると、リドルは何時もの様に柔らかく微笑んで。
【 は僕に惚れているんだろう? 】
「 なっ…、そんな事有る筈無いじゃない!!何処からそんな物凄い勘違… 」
一言、切り捨てる様に否定の言葉を述べれば、最後までは紡がせないとリドルは其の侭桜色の唇を静かに塞いだ。
傷つく顔を作ろうともせず、唯柔らかく微笑んだ侭に触れた感じる筈の無い口付けを。
瞳を見開いたが見たものは、燃える様に紅い瞳と酷く普段どおりの笑みを湛えた侭近付いてきたその端正な顔。
自我を保っていなければその場に崩れ落ちてしまいそうになる位に其の出来事は常軌を逸脱していて、状況的には絶対に有り得なくて。
今此処に居るのは夢か幻か、一瞬で脳内回路が凍結して助けてくれと本能が叫んだ。
さり気無く腰に回された腕は、決して絡まる筈等無いのに引き寄せられた様に距離が縮まったと錯覚する自分が酷く厭だとは嘆く。
唇が触れたのは唯の一瞬。離れたのはもっと短い刹那の時間。
その間にリドルは去り際に哀しそうな笑みを見せて、霧が晴れる様に途切れた靄は、記憶となっての脳内に戻って行った。
【 僕は…大好きなんだけどなぁ… 】
言った台詞が酷く物悲しそうで、拭い掛けた唇から指先を離した。
こう云う反応を返すと判って、リドルは口付けた後に哀しげな表情を見せた、そうに決まっている。
言い聞かせる様に心で叫べば、刹那にリドルに否定されそうで恐かった。
今までに無い程に距離を縮めてきたリドルに、確かに見かけ上は重なった唇。
錯覚かもしれないけれど、触れた唇から温もりが伝わればどれだけ救われるかと思った事は紛れも無い本心だった。
リドルの言った様に、自分は後戻りが出来ない程リドルを好きに為ってしまったと気付かされた。
「 そんな事ばかり言ってると、追い出すよ? 」
【 厭だなぁ、僕を棄てられない癖に 】
クスクスと脳内に響く声の主は、今心から笑っているのだろうか。
其れともあの哀しそうな表情の侭笑っているのだろうか。
心の内、湧き上がるのは心の中から侵略されていく予感。
次にもう一度、口付けを仕掛けて来たリドルに、何と罵声を投げかけてやろうかとそう思えば確定と化したその未来に自分で哂った。
少なくとも、自分の中にリドルが居る間は心から笑っていて欲しいのだから。
其れを知らぬ間に、願うように仕向けられて居たのだとしても、其れでも構わないと随分リドルに対して甘くなったとが笑い。
深夜の談話室には、今日も愉しげな笑い声が絶える事は無い。
Tom Marvolo Riddle…虚偽の笑みの裏側に隠された本当の一面を見せるのは、生涯唯独りの情愛を注ぐ者のみ。
case1 Severus Snapeの場合
case2 Lucius Malfoyの場合
case3 Load Voldmortの場合
case5 Remos J Lupinの場合
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