*この話は 「
21 月夜の出来事
」の続編になっています。
一読されてから読むことをお勧め致します。
予兆
之は未だ、がルシウスと婚約した直後のお話。
ルシウスもも共に幸せの中に居た、遠い日の出来事。
誰もが永遠に続くことを願い、望んだ日常の一幕。
漆黒に満ちた未来を予期することも無く、悠久にこの安堵に包まれるものだと信じて疑わなかった日々。
有り触れている何もかも、当たり前の出来事が
「一番幸せだった」
と思わずには居られない頃のお話。
「 ルシウス、遊びに連れて行ってvv 」
マルフォイ家の休日は、の喜びに満ちた声で明ける。
魔法省という非常に高い身分の者しか就けない様な職業についているルシウスにとって、休日は唯一の休める時間でもあった。
独りで居た頃はそれこそ気の済むまで寝、好きな時に起き、好きな時に女を抱いて、飽きたら次を探すというサイクルの中の一コマにしか過ぎず。
規定の時間に起こされ、規定の時間に起き、唯一人の女だけに縛られ、その女の言うことを聞く等、一体誰が想像しただろうか。
一番信じられていないのはルシウス自身なのだからそれもまた頷ける話で。
開き切っていない重い瞼を開けた先に垣間見れる愛しい女の微笑んだ顔に、思わず苦笑がこみ上げる。
期待に瞳を輝かせて一心に自分を見つめる透明な瞳を離す事無く、ルシウスは優しく頭を撫でてやった。
幼い子供のように嬉しそうに笑って頬を摺り寄せてくるこの少女を、自身の布団の中に招き入れる。
「 今日は何処へ行くのか。 」
髪を梳きながらそう問うて遣れば、微笑んだままのの表情が困惑に変る。
記憶を植え替えたとは言え、外界をよく知りもしないにとって、行きたい場所どころか、知っている場所すら数え上げる程度でしかなく。
いつもルシウスに引っ付く形で行動を共にしている故、そう問われると困ったような顔を見せる事は容易に想像できる。
百面相のように表情を変えながらあれやこれやと悩むを横目に、ルシウスは大分掛かるであろうその答えの結末をゆるりと待つことに決め、を抱えたまま枕に頭を沈めた。
ふわりと包まれるような感覚が、再びルシウスを夢の中へと誘い込む。
「 ハニーデュークスはこの間行ったし…マグル界はルシウスが嫌いだし… 」
指を折りながら、自分の知っている場所を思い出しながら行きたい場所を探しているのだろう。
時折コメントも織り交ぜながらそう独り言を言うの声を、子守唄の代わりの様に聞いていた。
何時もならば、ルシウス自身も一言付け加えた上で何か提案を投げるのだが、今日ばかりは昨夜の仕事の疲れからか、思うように思考が働かない。
このまま眠りに堕ちたい衝動にすら駆られ、重すぎた瞼を閉じれば、霧の掛かった様に睡魔が身体を襲う。
委ねれば楽だと知っている身体からは力が抜け落ち、思考も止まりかけた矢先。
それでも脳の一部だけは起きていた。
しきりに自分の名前を呼ぶの声が聞こえ、”寝ちゃったの?”という投げ掛けの疑問にすら答えぬままで居る事、約数秒。
ベットのスプリングがギシリと軋み、片手で己の体重を支えたが、倒れこんで来るような感覚を覚える。
何事か、と瞳を開けかけたその刹那。
ふわりと薫る柔らかくて甘いの薫りが、辺りを包む。
桃色の唇が、乾いた己の唇にそっと触れた。
一瞬触れただけの、キスとは到底呼べないような稚拙な代物で。
自分でしておきながら、震えたような仕草が何ともガキ臭くて。
心の中で嗟嘆する。
「 一体何のマネだ? 」
自身を支えて居たであろう手と、頬に添えた手を一つに纏め上げて上方に押さえ込むような形でひっくり返してやれば、驚いたような表情が飛び込んでくる。
普段の前では吐きもしないような冷たい音調でそう問へば、涙に濡れた様な瞳で此方を見、ビクリと小さな身体を竦ませ、詫びる様な台詞を述べようとする態度を許さない。
嘲るように見下ろしてやれば、怯えた様な震えが手を通じて伝わる。
空いた手で頬に手を添えてやればそれだけで身体を強張らせ、瞳に涙を滲ませる。
何たる子供さか。
少し前の自分なら、そのまま家に送り返して二度と逢う事も無いようなそんな未経験の女。
触れただけのキスで瞳を潤ませ震える等、中学生でも遣りはしない。
情欲が一気に削がれる様なその痴態ですら、相手がと為ると話は別で。
より一層泣かせたいという嗜虐心へと転心する。
「 私の寝込みを襲う等…高く付くと思え。 」
「 ごめんなさ…っ… 」
冷たい台詞にの身体が跳ねる。
言い訳の言葉も聞いてやらずに震える唇に強引に口付けた。
怯えた様なその柔らかい唇を割り開いて舌を忍ばせてやれば、腕の中で苦しそうにが呻く。
頭を抱えるようにして無理やり引き寄せ、逃げる舌を追い駆けて撫でてやれば、その細い喉奥から甘い嬌声が漏れ始める。
依然逃げるような仕草を繰り返すに構いもせずに咥内を蹂躙してやれば、観念したかの様に身体から力が落ちる。
柔らかく舌を吸ってやった瞬間に走った淫らな感覚に感じた自らの衝動に怯えたは、咄嗟にルシウスの唇に歯を立ててしまう。
すっと息を呑んだを冷たく見下ろして、ルシウスは冷たく笑った。
「 覚悟は…出来ているな。 」
出来立ての唇の傷跡を、しなやかで長い指の先でそっと撫でながら、ルシウスは問うような眼差しをに向けた。
既に震えが走っているその身体に更に震えの波が襲う。
息が詰まりそうに籠もっている隠微な空気を冷たく凍り付かせる雰囲気が一瞬で辺りを包み、の視界が涙で滲む。
何時もは"悪い冗談”で済ませて貰えそうな出来事だというのに、今日のルシウスは許す気は無いらしい。
ニヤリと意地の悪い微笑を浮かべたまま、更に深く口付ける。
何とか止まりかけていた理性の糸が、ぷつりと切れてしまった瞬間のあの音を、ルシウスは心の中で聞いていた。
「 ルシウス…っ…、何、するの…っ 」
「 素直に可愛くしていれば、いいだけの事。 」
”とて、痛いのは嫌であろう?”
ルシウスなりの妥協を示したつもりらしい彼の唇が、再び深い角度で重なっていく。
しっとりと柔らかく甘い唇を堪能するかの如く軽く触れ合わせ、焦らすようなキスを落としてやり、巧みなその舌技で甘い声を上げさせる。
硬く閉ざされた目元から溢れ落ちる涙を、ルシウスは優しく舌先で舐め取ってやり、耳元で囁いた。
「 お前が私を惑わせたのだから、責任は取って貰う… 」
冷たく笑ったルシウスは、を再び組み敷くと、”朝食の支度が済んだ”と起こしに来た執事を追い払う。
長い休日の幕開けは、今まさに此処から始まる。
□ あとがき □
次回は裏です、裏!!!
ついに迎える初夜…vv
ルシウス鬼畜めなんですが、許してやってください!!
裏だけはどうしても優しいヤツは書きにくくて…(汗)
何だかヒロイン強姦気味ですが、ルシウスの性格上、ととってやって下さいねvv(死)
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