| last scene ![]() day-70 :ずっと友達で居ようね、言葉に出せない約束を交わした最後の夏 2 「---------------------------聞いたら…答えてくれるかな。」 密やかに、低く平坦な返答がの唇から零れる。 ほんの些細な冗談の一つで「スネイプに直接聞いてみれば」と口に出したハーマイオニーは、即座に怒り心頭で無言の一瞥を紛れなくハーマイオニー自身に投げ 捨てるスネイプの姿が浮かび、慌てて小さな頭をしきりに左右に振った。 「じょ、冗談よ、、そんなこと本気で聞いたら私がスネ…彼に厭味爆弾を貰う羽目に為るわ!」 「え?勿論ハーマイオニーから聞いたなんて一言も言わないつもりだけど?」 …スネイプ、ダンブルドア校長、ハリーにロン、そしてマルフォイと云う面子の中で、軽々しくスネイプがに対する頑ななまでの感情を剥き出しにしていた だ等と、直接に教えられる人間が自分以外に居ると思っているのだろうか。 まぁ、当事者であるスネイプは蚊帳の外に放り投げておくにしても、に好意を抱いている(と本人は知らないだろうが、スネイプは既知している)ハリーと マルフォイが言う筈は無い、とスネイプならば思うだろう。 さすればロンか。だがこれは当事者であるスネイプ以上に有り得ない為に数に入れないも同然だ。では、ダンブルドア校長?……無い線では無いのかもしれない が、確実にある線だとは言い切れない。 残った自分とダンブルドア校長を天秤に掛けてみれば、上下にグラグラと揺らぐものの、70%の確率で自分の方が下方へ垂れ下がる気がした。 と為れば、結論は一つ。 「駄目よ、絶対駄目、私はこれ以上スネ…彼の怒りの矛先に宛がわれるのだけは免れたいもの!」 全身全霊で言い放ち、さっきの話はの胸の深層にだけ留めて置いて欲しい、と懇願するハーマイオニーには声を挙げて笑った。「勿論、聞くつもりは無 かったけどね」と冗談交じりに言って退けたに、漸く嵌められたのだと気付いたハーマイオニーは浮かぶ反論の言葉を飲み込み、代りにと同じ様に笑っ た。 勤勉に励む生徒から煙たがられる視線を浴びながらも、司書であるピンス教授に咎めを受けるまで、二人は木漏れ日射し込む窓辺で笑いあっていた。 「図書館に居続けたいならば、もう少し小さい声でお喋りなさい」、そう告げたピンス教授の言葉に従い、二人は図書館を抜け出し、大声で笑い転げても誰も何 も文句が言えぬような場所を探そ うと校内を散策し、行き着いた場所は意外にもクィディッチ競技場丘だった。 未だ練習が行われて居ないのか、其れとも今日は練習が無いのか、がらんどうの広大な平原に腰を落として。 梟に運ばせた僅かなお菓子とアップルティーを片手に、女二人の恋愛話の花は再び咲く。 「そう言えば、昨日はスネイプと星を見たの?」 「うん。報告書書き終わったらもう消灯の時間に為っていて…、先に誘ってくれたのにごめんね。」 「が謝る事無いわよ、あのスネイプが消灯時間を過ぎても見回りに来なかったのはそう云う理由が在った訳ね」 ヒキガエルチョコを口にしながら、納得した様に頷きながら話すハーマイオニーに、は未だ夢でも見ているような心地に為る昨日の出来事を思い出してい た。 『空から全ての星座が消える日』、字なの通り、時が経つと共に零れ落ちる流れ星の量は尋常を超え、落つる星は既に其の生涯を閉じて焼き切れるのだ、と教わっていても、今まで輝いていた星座から星を一つ一つ切り取って流しているような感覚に陥っていった。 広大な空を見上げ、幾千もの星が一斉に毀れるさまを見れば、自分なんて本当に小さな一つの存在でしかないのだと痛感した。痛感すれば、感情の欠片が音も無く落剥して。 この世に在れる、唯其れだけが本当に素晴らしいことなのだと実感出来た。 「誰に一番最初に誘われたか、も大切だけど…其れより『が誰と見たいか』が大事よ」 「…誰と…見たいか」 「そう、1000年に一度の流星群を誰と一緒に見たいか、が大事なのよ。だっては独りしか居ないもの。 だから貴女が決めていいのよ。其れに…もスネイプ教授と一緒に居たかったんでしょう?」 「一緒に…居たかった…?」 昨日はスネイプに行き先を告げられる事も無く、無理矢理抱き上げられて上空1000メートルの空の彼方に連れ去られた。 確かに「少しばかり我輩に付き合って頂けるかね。」と断りを入れられた事は入れられたが、有無を言わさずに、と言った方が正しいだろう。 だが、本気で厭なら拒絶する事も出来た筈だ。 スネイプに恋情を抱いている事を自覚したあの瞬間、拒絶する事は無いだろうが、「先約が」と一言告げる時間位は在っただろう。 其れでも抱き上げられた腕の中で素直に連れ去られる事を了承した。 其れはつまり、自分自身の中でスネイプと一緒に「エクステンデット流星群」視たかったと云うこと。 スネイプともっと多くの時を共に過ごしたいと願い、スネイプと一緒に居たいと………… 「いや、だってその…あの…」 熟れたトマトの様にぼんっと顔を真っ赤にさせ其の侭眼を伏せるの秀麗な顔を、何とはなしハーマイオニーは眺める。 母親に殺され掛ける事幾たび、命削がれて尚、愛されるどことか憎しみだけを一心に与えられた。 今こうして改めて見てみれば、少女のような容姿の侭残酷な言葉を吐き、ヴォルデモート卿の愛し人ととして在り続ける桔梗に似過ぎている。 其れが良い事か悪い事かは置いておくとしても、其の容姿の所為で最初にスネイプから疎まれたのは事実だ。 Revalue王国の血を継ぐ最後の皇女、と云う忌まわしい肩書きも加味しているのだろうが、一連の出来事を見ていれば根底の原因がそんな些細な事では無 いと伺える。 嘗て桔梗に心を奪われ、恋情を心中奥深くに封印していたスネイプにとって、桔梗と似通った声と眸と容姿を兼ね備えたの存在はスネイプの触れたくは無い 心の傷に触れたどころか化膿させたのだ。 だから敢えて必要以上の距離を取り、関わらぬ様に触れぬ様に、言葉を交わさぬ様に、燻る恋情が蘇らぬ様に嘗ての想いが目覚めぬように。 だが運命の輪は廻り、スネイプの中でに対する感情が疎隔から確かな愛情へと変化するなど、ハーマイオニーの優秀な頭脳を以ってしても原理を解き解す事 は出来なかった。 この少女の一体何処に、思いながら改めて薄紫の瞳を見詰めれば、馬鹿馬鹿しい理論を唱えようとしているのだと気が付いた。 誰かが誰かに恋をし、誰と誰が恋に落ちるかなんて、神様でさえも既知しないような単純で複雑な原理が判る筈は無い。勿論、今現在恋をしている訳でも無けれ ば誰かに恋に落ちた事も無いハーマイオニーが連綿と考えたところで、決して解ける事の無い難解な方程式と類は同じなのだ。 と為れば「私に解けない問題があるなんて」と躍起に為る気持ちも判るが、色恋心理と数式の類を一まとめにすること自体が間違っている。気付いたハーマイオ ニーは純粋に思う。私も貴女のような恋がしたい、と。 「私にも…いつか現れるかしら」 静かに唯其れだけ、問う訳でも無く自問自答するように告げれば、は顔を上げ、ハーマイオニーを真っ直ぐに見据えてくる。 は思い出すように口唇を開いた後、ハーマイオニーに答えを返した。 「現れる、きっとハーマイオニーも気付かないうちに恋をしていて、気付いた時にはもう全てが始まりだしてる」 自分自身がそうであったと思い出すような口調に、ハーマイオニーは素直に頷いた。 いつか自分にも、誰かに恋をし誰かを愛しく想い、如何しようも出来なく為る程恋に落ちる日が来るのだとすれば、其の時にはまた違った立場でと恋愛話が 出来る事だろう。何時訪れるかは判らないけれど、そんな日が早く、くれば良い。 「そうしたら、一番に貴女に報告するわ!の方が先輩だもの、色々と教授して貰わなくっちゃ。」 「教える事なんて何も無いよ、寧ろハーマイオニーは自分で答えを見つけ出して行きそう」 「だから困るのよ!誰かが横に居てくれて、私が考えた事や遣ろうとした事が間違っているなら教えて貰わないと。 普段の授業での私の様に、自己勝手に進んで答えが判る様な安直な問題では無いもの。」 ふわりと微笑んだハーマイオニーに「そうだね、それは言えているかもしれない」と返せば、「それは如何云う意味かしら」と悪戯交じりに返される。 こんな他愛無い話。忙殺される日々に埋もれる人に取ってみれば、瞬きと同じ位に価値が生まれず忘れ去られて行くような時間。今日が終わればまた明日が遣っ て くる。当たり前の出来事が当たり前に遣ってこないにとって、あっという間に忘れそうになる心の内に描いた想い一つ、時間に換算すれば僅かでしかない世 間話一つ、全て生きていた証だ。 時間は立ち止まってくれない。ハーマイオニーからの報告を聞ける日が本当に遣ってくるのか来ないのか、声に出し問うたとしても、答える者は誰もいない。 「、一つ…約束しましょうか?」 「約束?」 「今未だ早いのかもしれないけど…でも、約束は早い内にするに越した事は無いもの。」 「確かに…ハーマイオニーの言葉も一理あるかもね。-------------------で、どんな約束?」 が瞳を覗き込んできていた。その紫水晶に似た瞳を見ていると、ハーマイオニーは何時も呑まれそうになる。 惚れるだ等と低俗な言葉では計り知れない程の魅力がには在った。潜在的な血が繋ぐものだろう、桔梗からも同じ類のものを感じたが、から感じる其れ はもっと儚く泡沫のようなもの。 何かは判らない、けれど彼女にしかない魅力のうちの一つであることだけは確かだ。 「私は貴女を忘れない。この先何が在っても、例え誰かに忘却魔法を掛けられても… 脳が忘れて仕舞っても、心は絶対に貴女を忘れないわ、貴女は一番大切な友達よ、」 毀れそうになる涙を堪え、は微笑った。今更何を言っているの、そう表情で作り上げるように。 気を張らなければ、嬉しさで涙が堰を切った様に零れ落ちて仕舞いそうな柔な心に鞭打って、はハーマイオニーに見えぬ様に唇の裏側を噛み締める。 此処で泣く訳には行かない。たとえ其れが嬉し涙であっても。決めたのだ、このホグワーツを去らねば為らぬ日が来たとしても、最後の瞬間まで笑っていよう と、他でも無い、生まれて始めて自分自身で決めた誓いだ。 だから、 「私も忘れない、忘れられるわけ、無いよ、ハーマイオニー」 二人で見詰め合い、可笑しさが込み上げて笑いながら寝転んで、空を見上げた。振り仰いだ空は眼に痛いほど美しく、何処までも果てしなく続き、何も変わらな い様な蒼穹に白い千切れ雲が、ゆっくりと昇り風に散っていく。 [ home ][ back ][ next ] (C) 2002-6 The fanfictions are written by Saika Kijyo. update 2006/9/8 |