last scene

day-29 :意地の張り合いと男のプライドU
「 大体、グリフィンドールのお前が如何してスリザリンの人間と付き合う必要がある?
」
「 友達は自分で選ぶ、そう言ってやったのを覚えていないのか、マルフォイ! 」
「 友達…、そうだな、唯の友達ならば別に問題ないだろう。 不毛な言い争いだ、莫迦莫迦しい。 」
「 唯の友達…? 」
「 あぁ、お前とは唯の友達なんだろう? 」
「 "唯の友達"って何だ、如何云う意味か説明してよ! 」
傍から見れば、大広間の入り口を陣取って戦をせんとする獅子と蛇の絵図が其処にある。
しかし実際問題、言い争っている相手は一介の女子生徒、其れもつい先日転校してきたばかりの東洋人であること等事情を知っているハーマイオニーとロンを除
けば誰も其の事実を知らなかった。
故に、グラッブとゴイルは一体何をポッターと言い争っているんだ、と両者顔をつき合わせて暗黙の内に画策し始めていた。
「 唯の友達、その意味すら判らないのか、やっぱりお前は所詮其の程度か。 」
「 何だって!? 」
「 に友情しか抱いていない…そう云う意味だろう、友達とは。 」
ふふん、と勝ち誇った様に言い放ったドラコに、言葉の意図を掴みきれていないのか、暫し固まるハリー。
この状況に、拙いと直感的に悟ったのは意外な事にハーマイオニーではなくロンの方だ。
不毛な言い争いで終わっておけば良かっただろうドラコとハリーの口論は、此の侭突き進めば在らぬ方向に飛び火し兼ねない。
ドラコは既に自分の抱くへの想いに気がついていて、ハリーはきっと気付いていないのだろう。
此処で気付かせては為らない。何故そう思ったかは判らない。けれど、気付けばロンは二人の間に無理矢理割り込む様に身体を滑らせて、ハリーの腕を掴む。
「 そうだ、ハリー! 僕、君に丁度良い土産を買ってきたんだ。 」
「 離せよ、ロン、土産なんて後でも… 」
「 いや、今じゃなきゃダメなんだ、いいからっ! 」
ハーマイオニーの中で、何時も蒲公英の綿毛の様にほんわりとしているイメージが根強くあるロンが、此処まで自己主張したのは【魔法界のチェス】をしたあの
時以来じゃないかと思う。
あの時は確かに、スネイプを犯人だと決め付けて追っ掛けていた為、何も意識せずにロンの話を正論だと受け止めて従った。
しかし、今のこの状況は如何考えてもロンが一方的にハリーの意見も聞かず自分勝手なる欲求を満たす為だけに、この場から引き離そうとしているようにしか思
えない。
「 じゃ、あとでね、ハーマイオニー。 」
もがくハリーを綺麗に無視して、ロンはひらひらとハーマイオニーに手を振ると、ハリーの腕をがっちりと掴んで強制連行した。
呆然とするグラッブとゴイルはこの状況に如何して良いか判らず、ドラコは冷め切った視線を送るだけだった。
一人残されたハーマイオニーはと言えば、ロンがハリーに言いたかったこと、でも此処では決して気付かせたくなかった事を悟っていた。
だからこそロンを止める気にも為れず、況して男同士の秘密談義に加わる気さえ起きなくて、呆れた様な表情を貼り付けてハーマイオニーは食卓へと踵を返し
た。
どうせ寮に戻っても談話室は使えないだろうし、マルフォイ一味の顔を何時までも見ている気には到底為れない。
其れならば、此処でを待っていた方が得策だ。
「 待て、マグル。 」
後からの冷えた声に、ハーマイオニーの可愛らしい顔に青筋が立つ。
振り返り、制止させた相手を睨み上げながら、仕方なくハーマイオニーは言った。
「 別に貴方に名前を呼んで貰わなくても結構だけど、不特定多数を示す言葉で呼ばないで欲しいわね。
他の該当人物が立ち止まっているけど? 」
「 煩い。 マグルをマグルと呼んで何が悪い。 呼んでやっただけでも有り難いと思うことだな。 」
一体何の為に呼び止めたのよ?
口に出してやる事さえ惜しく感じられたハーマイオニーが、表情だけでそう告げる。
ドラコは相変わらず冷えた表情の侭で、グラッブとゴイルは如何して良いのか判らないらしい。
「 お前はと仲が良いだろう。 僕はが他の女と居るのを見た事が無い。 」
「 そりゃあそうでしょうね。
スネイプに疎まれているに話し掛ける命を棄てたスリザリン生は居ないでしょうから。
況して、スリザリン生に話し掛ける他寮の生徒も居ないと思うし。 」
「 は…その、僕のこと、何か言っていたか? 」
「 が貴方の事を? さぁ…私はホグワーツに帰ってきてからに逢って無いから知らないわ。 」
其の返答はドラコの意図したものではなかったらしい。
明らかな不機嫌を更に上塗りしたドラコは、一言、何処までも使えない人間、とだけ言い放って踵を返した。
一体、何なのか。
そう思っても見たけれど、これ以上余計な時間を割くこと事態無意味だと、ハーマイオニーも踵を返して席へと戻る。
オレンジジュースを口に入れながら、暫く余暇を持余していたら、丁度スリザリン席にの姿を見つけた。
余程お腹が空いているのだろうか?
嬉しそうに、でも忙しなくブレッドをぱくついている。
真珠の様な歯で噛み切られたブレッドが、小さな口にどんどん吸い込まれて消えていった。
其れを遠目で見ながら、ハーマイオニーは一気にオレンジジュースを飲み干すと、意を決してスリザリン寮へと足を運んだ。
そして、現在に至る。
「 …って云う事があったの。 全く…二人とも、子どもなんだから。 」
ハリーとドラコのに対する想い。
気付いているか居ないかだけの違いしかない其れは、互いに同じ想いを抱いているだろう事は安易に予想が出来た。
しかし、ハーマイオニーは敢えて其れをに告げることはしなかった。
先程ドラコがハーマイオニーを引き止めたことも、には告げては居ない。
ドラコがハーマイオニーを態々引き止めた理由、其れは多分、隠されるように置かれた小さな袋の中身に在ると悟った。
「 そうなんだ。 スリザリンとグリフィンドールって…そんなに仲が悪いんだ。 」
「 あら。 そうでも無いと私は思うけど? 少なくとも…私と貴女は仲が悪くは無いもの。 」
ふわりとハーマイオニーが笑って言った。
其れにつられて、も微笑んだ。其れは此処がスリザリン寮生専用の食卓だと想像させない様な、そんな朗らかさを持ってして。
ハーマイオニーは常々思う。最初に逢った時こそ疑問には思わなかったが、如何してがグリフィンドールではなく、スリザリンに選ばれたのか。
生粋純血一族だというのは判る。しかし、それだけでスリザリンに入れるかと言えば、決してそうではない。
天真爛漫、純真聡明、才色兼備。
そう思えて仕方が無い筈の眼の前の少女に組み分け帽子が出した結論は正しかったのか、否か。
ハーマイオニーには如何しても不思議で仕方が無かった。
「 …その、一つ、聞いても構わないかしら? 」
突然のハーマイオニーからの問いに、は口にブレッドを挟み込んだまま、大きく頷いた。
「 ドラコと一緒に帰って来なかったのよね? その…道に迷っていたの? 」
てっきり隠す様に仕舞ったドラコからの贈物の事を聞かれるものだとばかり思っていたは、意外な質問を受けた、と言わんばかりの表情だった。
勿論、ハーマイオニーもが小袋の事が気にも為っては居たが、其の贈り主が誰か等と、容易に想像が付いた。
少なくとも、ハーマイオニーが知る彼は、そんな粋で気さくな事を遣って退ける筈は無い。ならば贈り主に該当する人物等、消去法で見付かる。
其れよりも、ハーマイオニーの脳裏に浮かんで消えないのは。
「 あ…スネイプ教授とお話してたの。 魔法薬学研究室で。 」
ダンブルドア校長と共にホグワーツの正門で出遭ってからの経緯を割愛してしまったが、まぁいいか、と横に流したは驚愕を貼り付けたハーマイオニーを見
た。
其れに愕いたのはの側。
まさかそんな表情をされるとは思わず、初めからきちんと説明すれば良かった、と後悔した。
「 あのね、ハーマイオニー、スネイプ教授…そんなに悪い人じゃなかったよ? 」
「 え? あ、…そう、それなら良かったわ。 スネイプ教授もスリザリン生には優しいのかしら。 」
先程と同じ様に笑ったハーマイオニーの顔が、何処か笑っていない様に見えたのはの気のせいだろうか。
何か気になって、言葉を投げようとした矢先、ハーマイオニーの言葉が降ってくる。
「 お食事を邪魔してしまってごめんなさいね。 私、用事を思い出したから寮に戻るわね。 」
「 邪魔だなんて、ほら、もう食べ終わるし… 」
「 明日また、ゆっくり話しましょう? 」
そう告げると、ハーマイオニーはの返答も聞かずに一方的に席を立ち、大広間を後にした。
一体如何したのか、と気にはなったものの、スリザリン生であるはグリフィンドール寮には入れない。
仕方なく、最後のブレッドを小さな口に放り込むと、も大広間を後にする。
一人で行動するなんて、ホグワーツに転校してきた日以来だ、と少し懐かしく感じる。
「 結局、返せなかったな、これ… 」
水分を含んでしわがれた小さな袋の柄が、細い指に絡まって、頼り無く空間に揺れている。
其れはまるで、其々の心の揺れを現しているかの様な光景だった。
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(C) 2002-6 The fanfictions are written by Saika Kijyo. update 2005/7/10