last scene




day-28 :意地の張り合いと男のプライド




スネイプが魔法薬学研究室から自室へと戻り、嘗て屑同然と扱ったの経歴に関する書類 を見直している事など知る由も無いは、腹の虫と鐘の音に誘われる様に食堂へと向っていた。
途中、ドラコからの贈り物でもある小さな袋を一旦寮の自室へと置いてこようかとも思ったのだけれど、今から寮へと戻り其の足で食堂に向えば、夕飯を食べる 時間は 5分に満たない計算になる。
夕食等如何にでもなるだろうと思っている普段とは異なり、今日ばかりは盛大に腹の虫が泣き喚いてくれた。

仕方なく、腹の虫をおさめる為に足早で食堂へと向う。

雨の中、上から水を引っ被る状態の侭暫くスネイプ教授と無言の押し問答をしていた為に、小さな袋は降り注ぐ雨粒を其の身体に受け止めていた。
申し訳ない様に草臥れた袋と、未だ僅かに水分を含む髪とローブに、居た堪れない気持ちに為る。
人から貰った物は粗末にしてはならない、と昔から言われているが、そもそも人から物等貰った験しの無いにしてみれば、其の現実はよりいっそう重みを増 して圧し掛 かる。

防水の魔法を施してくれていなかったら、中のブレスレットは其れこそ無残なものに出来上がっていただろう。

この時間帯ならば誰にも遇うまい。
鷹を括る様に忍び足で食堂に着けば、案の定、端のほうに一つだけ席が空いていた。
ちょっと食べて、直ぐ出よう。少なからずとも、この状態をドラコにだけは見られる訳には行かなかった。
折角渡したプレゼントが無残に近しい状態になっていたら、流石のドラコでさえも切なそうに両の目を顰めて苦く笑うだろうから。

そんな彼の表情を画いて、そんな未来にしては為らないと、無言のうちに両手に力が入る。

意気込んで掻っ込む様にコーンスープとブレッド、そして熱いスープを胃に落とし込んだところで、の肩を背後から誰かが軽く叩いた。


「 そんなに慌てて食べて…また閉館前の図書館にでも行くのかしら? 」


叩かれた方に首だけ動かせば、柔らかく微笑んだハーマイオニーが其処に居た。
何時も一緒に居るであろうロンやハリーの姿はなく、ハーマイオニーが一人スリザリン生徒用の食卓に居るのは酷く珍しい光景に見える。


「 ハーマイオニー、違うの、そうじゃなくてね、、 」


ブレッドを口に咥えながらそう答えれば、愕いた様にハーマイオニーの丸い瞳が更に丸みを帯びた。
ハーマイオニーにしてみれば、がホグワーツに転校してきて以来、礼儀正しく、それこそハーマイオニーを凌ぐ優等生の素振りを見せてきた筈だ。
少なからず、ハーマイオニーの眼にはそう映っていた。


「 口にパンが付いてるわよ、。 図書館に行くんじゃないなら、如何してそんなに慌てているの? 」

「 えっと…寮に早く帰りたくて、ね 」

「 そう…って、貴女、雨に濡れているんじゃない? 大変よ、早く着替え… 」


元々黒いローブだけに、水分を多少含んでいても気付かないものだが、毛足の長かった起毛で出来ているのローブの毛が寝てしまっていることに気付いた ハーマイオニー。
先程の雨に遣られたのだろう事は予想が出来た。
お昼過ぎに既にホグワーツに戻ってきていたハーマイオニーが雨の被害に遭うことは無かったが、慌しくホグワーツに駆け込んでくる生徒が居たことを図書館か ら外を見ていた時に気が付いた。
生憎、の姿を確認するまでには至らなかったが。

ハーマイオニーが傾げた様な視線をに送った矢先、は其の視線の矛先が、ドラコから貰った小袋に有ると悟った。
隠す様に置いたわけでも無いが、堂々と机の上に置くのも如何だろうと思い、のローブに隠す様に椅子の上に置いておいた代物。
言葉に詰ったハーマイオニーに、言葉を返そうと彼是思案しているうち、困った様に柔らかくハーマイオニーが笑った。


「 ドラコもハリーももう此処には居ないから、大丈夫よ。 」

「 え? ドラコは兎も角…ハーマイオニーはハリーと一緒じゃないんだ? 」


何時も一緒なんだって思ってた。


言葉に、再度驚いたように開かれた瞳は、零れ落ちそうに大きい。
初めにハーマイオニーと出逢った時は酷く綺麗な女の子だと思ったが、こうして話してみると随分童顔が目立つ。
純粋無邪気に笑って居る時は、年齢どおりの表情になるのだなと今更に思って。

がそんな事を考えているとも知らぬハーマイオニーは、周囲をニ・三度見渡し、スリザリン寮の生徒が疎らにしか残っていないことを確認すると、意を決し たようにの隣に座る。
眼の前に並ぶ湯気の立った食事の半分も片付けていないを此処から連れ出すには、忍び無いと思ったのだろう。

耳打ちをする様な小声で、につい先程繰広げられた蛇と獅子の論争の一部始終を話して聞かせた。
事の始まりは、本当に些細な事。






何時も通り、ハーマイオニーはロンとハリーを連れ立って、夕食を取る為に大広間に向って歩いていた。
本当はも誘い、共に向おうと思ったのだけれど、スリザリン寮の入り口が判らない。
大方の予想は付くのだけれど、スリザリン寮生しか往来しない薄暗い地下牢にグリフィンドールの彼等が居る事は好ましい事態ではなかった。

大広間で逢えるだろう。
そう自分に言い聞かせ、三人が仲良く連れ立ち大広間に着いた時既に、眼の前のテーブルには料理が並べられていた。
一瞬躊躇もしたが、スリザリン寮生の集まるテーブルにが居るかどうかの確認なんて出来る筈も無く、大人しく食事を行う。


「 スリザリン寮席に…、居ないな。 」


大き目のブレッドを口に咥え込んだまま、ロンが立ち上がってスリザリン寮を見回した。
精巧なビスクドールの様な漆黒の黒髪と薔薇色の頬、桜色の唇に陶器の様な肌。
遠目から見ても際立つ容姿を兼ね備えたの姿は、遠く放れたグリフィンドール寮生用の席からでも、立ち上がって見れば一発で視界に留めることが出来る。
其れほどの端麗な容姿を持つを、今日ばかりは見つける事が出来なかった。


「 ほら、座って。 そんなはしたない恰好でスリザリン寮を見たら、スネイプに睨まれるわよ? 」


の姿を見付けられないと嘆きの声をあげたロンのローブの裾を、ハーマイオニーは指先で下方へと引っ張った。
皆が食事している其の最中、大広間に入ってくる生徒と出て行く生徒以外は皆着席している。
つまり、ロンがグリフィンドール寮席の略中央に位置する場所で立ち上がり、パンを咥えたままスリザリン寮を見詰めていれば、睨みをつけていると捉えられて も可笑しくは無いだろう。
この状況がスネイプに見付かりでもしたら、減点までとはいかずとも、明日の魔法薬学の講義でどんな厭味を言われるか知れない。


「 でも…スネイプのヤツ、居ない… 」

「 居ないって如何いうこと? 」

「 ぽっかりスネイプの席だけ空いてる 」

「 きっともうご飯を食べ終わったのよ、何でも良いから早く座ってよ! 」


周囲からの痛いばかりの視線に耐え切れなくなったハーマイオニーが、半ば無理矢理ロンのローブを引っ張って座らせる。
と、同時。スネイプが居ない、とのロンの報告に、一瞬ハーマイオニーの脳裏にある記憶が蘇った。
あれは魔法薬学研究室で偶然にに出遭った(一方的にハーマイオニーが後から尾行していたのだが)出来事。
ハーマイオニーやハリー達が想像している以上に、を疎んでいる筈のスリザリン寮監の間には交流があるのではないのだろうか。
思えば、面倒事が降りかかる事を誰よりも忌み嫌い、日常が日常通りにいかなくなる事を何よりも恐れるスネイプが、へのホグズミード許可を出した事自体 に疑問を感じる。


「 まさか…ね。 」


幾らなんでも考えすぎだろう。
たかが一巻のレポートで嫌悪末端に居る人物を認める筈がない。と、思ってみたところで、相手はあのスネイプだ。
普段の人が考えもしない様な複雑な思考回路で人格が形成されていると思ってもまず、間違いないだろう。
そう考えてみれば、もしかしたら【有り得ないだろう】ことが【有り得るだろう】事に摩り替わる気がして、ハーマイオニーは眉根を顰めた。


「 それにしてもマルフォイのヤツ、を置いて一人だけ帰ってくるなんて!
 が不慣れなホグズミードで迷子にでも為ってたら、如何責任取るつもりだ!! 」


結局、に出逢う事が無いまま、大広間を後にしようと連れ立って歩いていた矢先。
意気揚々と宣戦布告をする様にハリーがそう言えば、はっとロンが大広間の扉を横切ろうとした三つの影に気が付いた。
あちらは此方に気が付いた様で、運の悪い事にハリーが口走った言葉も聞えてしまっていた様で。
言葉を口にした本人だけが気付かない侭、怒りを露わにしたドラコがグラッブとゴイルを従え、紳士に有るまじき足音を立てて此方に近付いてきた。


「 閲覧禁止の棚(あの部屋)から尻込みして逃げ帰ったお前に比べれば、僕はマシだと思うが?
 弱虫のポッター君。 」
「 何だと!? もう一回言ってみろっ 」
「 あぁ、何度でも言ってやる、お前は弱虫だ! 」
「 だったら如何してと一緒に帰ってこなかった!? 迷子に為ってたら、マルフォイ、君の所為だ! 」
と一緒に何をしていて、何故僕が一人で帰ってきたか、なんてお前には関係ないだろう! 」


先日を思い起こさせる、不毛な争いが眼前で続けられるのを見ながら、ハーマイオニーは心底溜息を吐きたくなった。
どちらが弱虫だなんて如何でも良い事。ハーマイオニーから見れば、どちらも精神年齢の発達に乏しい【子ども】に見える。
口火が切られた不毛論争は、未だ当分終わりの兆しを見せようとはせず、周囲を生徒が怪訝な表情で見ながら通り過ぎていった。

















































[ home ][ back ][ next ]

(C) 2002-6 The fanfictions are written by Saika Kijyo. update 2005/7/8