Under The Moon






その日は特に忙しかった。
生徒たちに”少し出しすぎたか?”と自分でも思ってしまうような課題の数々。
しかも、それを生徒が誰一人欠けることなくきちんとやってくるのだから、面白くない。
課題の提出日は今日で、夜ともなれば、目の前の羊皮紙の山でさえ、霞んで見える。






気付くと溜息が零れそうになる、妙に疲れた日。
狭い自室の机の前で、 の寝息だけを聞きながら、惰性で仕事を進める。
効率が落ちてきているのは、自分でも判っていた。
もう止めればいいのに、まだ眠るのは早すぎる時間だから、仕方なく羊皮紙の一枚…また一枚と手にとり、それが延々繰り返される。
席を立ったら、もう2度と戻りたくなくなるような気がして、 が眠る前に淹れてくれた紅茶を口に運び、冷めている事を気付かされるとどっと疲れが襲ってきた。
ぴたりと閉められなかったカーテンの隙間から、頼りない月の光がだらしなく零れ落ちていて、時計の秒針は相変わらず一定のリズムを刻む。






明りが届かない部屋の隅にたゆとう闇のように、徐々に大きくなっていく、……身体をくすぶる熱。
そういえば、今年が始まってから、一度も と身体を重ねては居なかった。
ふと、 を見てみると、相変わらず気持ちよさそうな寝息を立てながら眠っている。
うーん…、と寝返りを打った拍子に此方に向き直る。
その瞬間、スネイプは我慢の限界を感じずにはいられなかった。






大きすぎるスネイプの服を一枚着ただけの格好の
シャツから覗くのはすらりと伸びた白い足。
白いシャツから薄ら透けて見える下着の線。
暖炉の傍で寝ているからか、少し上気した頬。
身体に合った小さな顔は、さらさらしている上質の絹のような髪が寄り添っていた。






「… 、起きたまえ」






寝ている を抱き起こして、抱えるようにするとスネイプは低い声で囁く。
それだけではない。
空いている左手だけで器用にシャツのボタンを外して耳に唇を押し当てる。






「…ん、…せんせ…なに……?」


寝ぼけた声と表情のまま、 は目を覚ました。
どうやら、未だ夢見心地らしい。
それはそれで、好都合だな、とスネイプは不敵な笑みを浮かべる。






「んんぅ……」






チュク、と唇を吸われて の身体の力が抜ける。
口の中、奥のほうまで探ってくるスネイプの舌に、翻弄される。
酔わされる。
は、深い口付けにようやく目を覚ます。
スネイプの口付けに溺れそうになったから、しがみついた。
もっとして、とねだる様に自分からも拙い仕草で舌を絡める。






スネイプのことが好き。
教師であり、恋人であるスネイプ。
そんな立場の彼にとって、自分は邪魔なんじゃないのか、捨てられるんじゃないかな、と時々不安になる。
だから、 はスネイプのすることには大抵逆らわない。
口では我儘を言ってみるけれど、スネイプの言う事は大抵受け入れる。
スネイプだけを見ているし、スネイプの思っている通りにしたいと思う。






スネイプの手が、意味ありげに の身体のラインをなぞって来た。
唇を重ねたまま、露になった真っ白な素肌のあちこちを擽っている。






「……ん、ぅぅぅん……ヤぁ…」






感じてしまって、これ以上こんな場所で感じ続けるわけにはいかない、と身体をねじると、スネイプは唇を離した。






「イヤ、ではないのだろう、 ?」






勿論、イヤな訳ではない、イヤな訳などある筈がない。
スネイプに触れられるのはいつだってうれしい、……けれど。






「だって、こんな…とこ……で……?お風呂、はいって…な……んっ」


「…では、先に湯にでもつかるかね?」






意味深に呟いたスネイプは既に を抱き抱えてバスルームへと足を進めていた。






「あ、あぁぁ……んんっ」






湯船に浸かる前に、身体を洗われる。
ボディーソープを片手にとって、泡立ててからそっと撫でるようにされると、それだけで の身体は反応した。
お湯を張って、蒸気が部屋に満ちている所為なのか否か、身体に熱が回るのが異常に早い気がした。






「…どうした、
 我輩は身体を洗ってやってるだけなのだが?」






面白そうに含み笑いをするスネイプ。
それでもその手の動きは止まらない。
年相応の可愛らしい胸を撫でていた手は、下肢へと伸びる。
泡の力を借りなくても、すべすべとした手触りの の肌の感触を楽しむかのように、ゆっくりと撫でる。
その度、小さく声を上げながら身体をくねらせる
しかし、かえってそれがスネイプを煽る事になっていることを、彼女は知らない。






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