大人の策略






「そう言えば…今日はホワイトデーだな」






思い出したように、スネイプが口を開いた。
積み上げられた山の様な羊皮紙の間に、埋もれるようにしてその存在が確認できる。
いつもと変わらぬ真っ黒な影のような出で立ちで、余り寝ていないのか、いつも暗そうに陰を作っている瞳の辺りが今日はやけに暗く感じる。
何時も通りに放課後スネイプの部屋に居る は、段々酷くなるスネイプの表情の蔭が心配で、休むように進めるけれど、一向に聞く耳を持たない。
邪魔にならぬようにと、ソファーで大人しく課題をしていたのもつい数分前までのことで。
手招きされるように差し出された腕の中に…体を落としたのが現在。






「スネイプ先生でも、知っていたんですね」






別に厭味を言ったつもりは無いのだけれど、こういう行事に人一倍気を使わなそうなイメージがある為に、そんな台詞を聞くと驚いてしまう。
大きな瞳を更に丸くした は、抱えあげられたスネイプの膝の上でぱたぱたと足を前後に揺らしながら興味深々にスネイプを見る。






「 …そんな期待の眼差しを向けられても
 準備もなぞ何もしてはいないが?」






一心に向けられるキラキラとした期待を瞳で象徴しているかのような を見て、スネイプは引きつったような顔を垣間見せる。
思い出したのはつい今のことであるから、当日である今日準備等している筈が無い。
しかし、女というものは、そういう事に酷く敏感であると昔散々に聞かされている。
も癇癪を起こして瞳に涙を溜めるのではないかと、スネイプは少しばかり心臓がドキリと痛む。
正直言って、 に泣かれるのは困る。
どうしたものか、と頭を悩ませていると、 は向いていた正面からくるりと向き直るとスネイプと向かい合った。






「スネイプ先生、”モノ”は要らないんで、一つだけ我侭聞いてくれますか…?」






真っ黒なローブの端を握って、控えめで遠慮がちに呟く。
瞳を合わせ辛いのか、少しばかり俯いた様な表情で、上から仰ぎ見る形となる。
唯でさえ身長の差ゆえに、スネイプの方が視点が高いというのに、 に俯かれてはその差は広がるばかりで。
上から見下ろす の小さな顔は、やはり可愛らしかった。
伏せ目がちになった大きな薄紫の瞳に似合う長めの睫がふるっと小さく震える。






「 何かね?
 我輩に叶えてやれる願いなら幾らでも聞いてやる」






遠慮がちに俯く の頭にぽんっと掌を乗せて、スネイプは顔を上げるように促す。
すると は、ローブの端を握ったままで、小さくこう言った。






「…キスマーク…私も先生につけてみたい…」






いつも自分ばかりがつけて貰う、愛されているという証。
ほんのり紅く色づく、マークは自分だけがつけて貰える唯一のもので。
初めのうちは少しくすぐったくて、チクリと痛みが走って、でも鏡を通してみると、物凄く幸せな気分になれて。
肌が白いから、目立つところには付けられないけれど、その証が消えてしまう前にまた、スネイプ先生が付けてくれる。
そんな事の繰り返しで、 の身体から紅い痕が消えることは無かった。
けれど、時折思う。
自分もスネイプ先生に付けて見たい、付けるほうの気分も味わってみたいと。






何かの雑誌か本で読んだことがある。
男性…特に大人の男性はキスマ−クを付けられることが非常に厭だ、と。
その一文を読んで以来、スネイプ先生にキスマークを付けたい…という願いは言葉にして現れることは無かった。
愛の証だと教えてくれたハーマイオニーの言葉がすっかり頭の中に入ってしまっている は、スネイプに拒否されたら…という恐怖が先にやってきて、どうしても告げられなかった。






「 …別に構わないが、そんなことでいいのかね?」



「 え?!いいんですか?
 やったぁ♪」






予想して居なかったスネイプの言葉に思わず は顔をあげて喜ぶ。
其れほどまでに喜ぶとも思っていなかったスネイプは、苦笑しながらも、”おいで…”と を引き寄せる。
嬉しそうに微笑んだままで、 はスネイプの開いた足の間に立ち膝をする形で立ち上がる。
が立ち膝をしても、やっぱりまだスネイプの方が高くて、背伸びをする。






「 付けた方は知っているのかね?」






スネイプの首に手を回してすがり付く様な形で はようやくキスマークを付けられる位置までやってくる。
自分と同じ漆黒の黒髪を手で除ける様にすると、ふわりとシャンプーの香りが鼻先を擽る。
さらさらと手を滑るスネイプの髪の柔らかさに は少しだけ戸惑う。






「 い、一応は知ってます…」






「 では、 が一つ付ける間に我輩が何個付けられるか…
 見ものだな」






- この方がやり易いであろう…? −






意地悪そうにニヤリと笑ったスネイプが、小さく屈むような形で、 の細い首に手を掛ける。
優しく一撫ですると、さらりと落ちる髪を後ろへ落とし、現れた白い首筋に柔らかく唇を押し当てる。
吸い付くようにぴたりとよって来る粋肌の感覚が、妙に可愛らしくてペロリと舌先で舐め上げた。






「 …んっ……ぁっ…」






条件反射のように口から零れだす甘い嬌声に は思わず息を呑んだ。
クスリと自分の咽喉下で笑うスネイプに妙に腹が立って、自分も負けないようにと首を抱きかかえてその首筋に唇を落とした。
初めて触れるスネイプの首元は、驚くほどに暖かくて柔らかい感触が唇から伝わってきた。
自分が今現在して貰っているように、そっと優しく舐めた後で、きゅっと吸い上げる。
その間にも、スネイプは驚くほど巧みな業で、 の首筋に綺麗な華を咲かせていく。






「 それではいつまで経っても付かんぞ。
 こうしてみては如何かね?」






身を持って教えると言わんばかりに、スネイプはキツメに白い肌を吸い上げる。
一瞬小さな痛みが走ったのか、 はピクリ…と身体を震わせた。
その反応を面白そうに咽喉で笑った後、優しく嗜めるように、スネイプが其処に優しく舌を這わせる。
促されるように は、少しキツメに吸う。






- そうそう、その調子だ… −






耳を舐め上げられて、身体に力が入らないけれど、それでも はスネイプがしてくれたことを思い出しながら必死に痕を残すように努力する。
しかし、初めてというのは中々思うようには巧く行かなくて、唇を離してみてみても、うっすらと付いているか居ないかだけで、スネイプのような綺麗な紅い華 は咲かす事ができない。
キツク強く吸ってみても、痕は赤く残るが、其れはそれ以上は赤みを増すこともなく、自分にばかり華が散りばめられて行く。






「 巧く付けられないよ…」






諦めたように が唇を離してスネイプの瞳を見る。
それは、既に濡れたような扇情さをかもし出していて、ドキン…と心臓が跳ねる。
唾液で濡れたのか、唇もいつもの桜色の唇ではなく、紅い華のようにスネイプの瞳に映し出される。
首に腕を回されて、少しだけ解けたTieが誘惑する。
高揚した様な頬が淡く色づいて、スネイプが付けたばかりの紅い華ととても良く似合っていて。
スカートから伸びるすらりとした足がぐらりと揺れた瞬間に…
スネイプの理性は既に飛んでいた。






「 いい方法を教えてやろうではないか、
 我輩が何をやっても首筋から唇を離すな。
 綺麗な…華を咲かせてやろう…」






ニヤリと笑った口元が、この先を暗示させた様な気がした。
けれど、既にスネイプの誘惑に乗ってしまっている にとって、彼の言葉には贖えない魔力が宿っている。
小さく頷いた は、濡れた瞳のままでスネイプの首筋に再び唇を落とした。







レッツ、続編、裏へ!!!(爆)
すみませんが、Another World戻って「 大人の策略-Other Side- 」に飛んで下さいませv
それでは、裏で会えることを楽しみにしていますvv





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