要らない、君以外のひとからの贈り物なんて、貰っても何の意味も無い。
本当に欲しいものは何時だって手に入らない。だからこそ人は手に入れようと努力するって言うが、其れは手に入れられる可能性が0.1%でもあるから だろうに。
本当に欲しいものを手に出来る可能性、空に掛かる月を片手で引き摺り下ろす位に難しければ、諦める?仕方が無い事、最初から無理だった、って納得出来るか い?思慕の念を抱いた相手を諦められる?

其れとも ----------------

力づくでも跪かせて見せる?







That is just what I wanted









隠し通していた訳でも無いけれど、自ら進んで喋り捲る様な内容じゃ無かったから黙ってい た、世間一般で云う処の僕の生誕日。何処の誰から漏れたのかは知らないけれど、何やら朝から女子生徒たちが活気立ち忙し無い様子で居るものだから、何かと 画策してみれば下らな過 ぎる事実に呆れさえ起きなかった。
自分でも遥か遠い昔に忘れ去っていた、この世に生まれ出でた、目出度いのか不幸の始まりなのか興味すら湧かない日。祝って貰った記憶なんて、途切れ途切れ どころか、片隅にも無い。幼少時代を過ごした孤児院で祝って貰っただろう誕生日の記憶は、望んで自分で抹消した。だから良い想い出どころか、思い出すもの がない。

誕生日、其れは僕にとって何の役得をも齎さない有り触れた退屈な一日でしかない。次から次へとベルトコンベアーか何かの様に流れ運ばれてくるプレゼントの 数々、柔らかな微笑み、言葉だけの愛を浮かべてくる女。


「 お誕生日おめでとう、リドル。あの…良かったら、これ、貰ってくれる? 」


真意を諮るかの如く投げ掛けられる言葉と甘えた様な猫なで声に、文句つけようない笑みを持って応えていたのは去年まで。だが、毎年毎年貰える訳でも無い愛 を乞う 様に、プレゼントと拙い言葉で睦言を連ねる女の子達に付き合う事に疲れてしまっていた。
勿論、柔らかく微笑んで有難うと言い受け取れば、其の場は至極穏便にことは解決するのだ。後は勝手に女の子が盛り上ってくれる。去年まではそうやって切り 抜けてきた。だ が、今年は如何無理強いしたとしても欲しいものが出来た。だからもう、他のものなんて、要らない。


「 有難う、でも、気持ちだけ受け取っておくよ。 」


切れ長の紅眼を眇める様にして、手にした羊皮紙からゆっくりと伏せていた顔を上げる。機微を気付かれないよう、表面だ けは取り繕ってみれば、視線の先には渡し掛けたプレゼントを手に、寂寞感を浮かべ瞳の端に涙さえ零す女子生徒。
名前は何だったか…つい先日までは覚えていたのに、もう忘れてしまった。覚える必要が無いのだと悟ったあの日、全てが綺麗に泡沫の様に消えてくれた。


「 ど、如何して…? やっぱり、誰のプレゼントも受け取らないって、本当だったんだ… 」


あぁ、そういえば。この子の前にも何人かプレゼントを渡しに来たっけか。この寒空の中、ホグワーツを点々とする僕を探し出すのは至難の業だろうに。そんな 手間を掛けさせる位なら、いっそ今日一日秘密の部屋にでも逃げ隠れていようか。そう思ってしまうのは、あんなにも普通に周囲に寄って来た人間が心の底から 鬱陶しくなり、表面を取り繕う事さえ面倒になったから。
昼食時だからといって、大広間に来たのは聊か間違いだっただろうか。


「 僕は如何しても、欲しいものがあるんだ。 でも、残念ながら君じゃ僕にあげられない。 」
「 なぁに? そこまでして…トムは何が欲しいの? 」


甘えた声で、言う。見上げる様に上目遣いで媚びを売るように。男という生物を本能的に理解しているのか、女という武器を最大限巧みに利用し活用している。
表面だけしか僕を知らない癖に、良くそんな台詞が吐けたものだね。感服しちゃうよ。
愛しいひとを殺す覚悟も、誰かのために死ぬ覚悟も、誰かに殺される覚悟も、誰かを見殺しにする覚悟も無いくせに。

私はリドルの為ならなんだって出来る、だって私はリドルを愛しているんだもの。

嘘ばかり。僕の素性を知れば恐懼し身体を震わせ暗鬱な声で助けと赦しを乞うくせに。僕の全てを知って、其れでも僕を受け入れるだなんて、言葉に出されて言 われると陳腐に聞こえる。そんな言葉だけの愛なら、僕は要らない。同じ世界に足を踏み入れる事の出来ない人間なんて、必要ない、寧ろ一番最 初に殺してあげるのに。

でも…、君ならこんな僕でも受け入れてくれるだろう?僕と同じ野心を抱く、君なら。


「 スリザリン寮3年…、僕は君が欲しい。 」


隣に置いた友人と談笑している想い人を視界に入れながら、死の宣告に似た言葉を言い放った瞬間、我先にとプレゼントを抱えた女子生徒が放った殺気が満ち溢 れた。ごくりと飲み込む唾の音さえ聞こえてきそうな緊迫感、瞬時に静寂に包まれ る空気、そして行き場の無い確かな憎悪嫌悪感。
名指しされた本人は恬然とした表情を浮かべた侭、訝しげに薄紫の瞳を細める。夜の帳の様な深い漆黒の髪、零れ落ちそうな大きな瞳、力を込めれば折れてしま いそうな細い首。髪色と同じ、黒い、闇よりも深い底の見えない心の色。
遺憾に滾る鋭い眼光が自分を射、向けられるのは厳しい眼差しなのに心地良さを感じる。

そう、僕は、君だから恋をしたんだ。


「 ちょっ…トム、なんてよりによって!? あんな薄気味悪い魔女… 」
「 …僕が好きだって言ってるんだ。 その相手を侮辱するのは僕に対する侮辱と同じと捉えるよ? 」
「 ち、違うのよ、リドル、ちょっと驚いただけ、そう、驚いただけなんだから!  」


莫迦莫迦しくて笑いさえ起きてくる。あぁ、如何して君たちはこんなにも純粋でこんなにも知能指数の低い動物なんだろう。僕の機嫌を取ることだけが全て、僕 から嫌われたらもう生きていく術を失くしたような表情を見せる。
僕の云うことが全てなのかい?なら、僕が命令したら君は僕のために死ねるの?人を殺せって言ったら禁じられた魔法を唱えられる?それとも言わずして排除し てくれるかな。

…ねぇ、君達は僕のために一体何が出来るのさ?僕は君達に望むものなんて、何一つとして無いのに。


「 …で、僕にくれるのかな、。 」
「 勝手に私をモノにしないでくれる? 私は別に貴方なんて欲しくないわよ。 」
「 ちょっ…、何様のつもりなのよ!? 少し位トムに必要とされたからって、調子付かないでよね!
 大体、トムに次ぐ明晰な頭脳を誇る純血一族の末裔だかなんだか知らないけど、貴女とトムじゃ… 」


右から左へと流し聞いて居るだけでも虫唾が走る金きり声に、歪む顔。決して不細工だとは思わないけれど、の端麗な顔に比べたら比較する事が申し訳無く 感じる。
美麗の定義を知っているかい?如何やらみんな穿き違えているらしいね。本当に美しいものは着飾った容姿でも無ければ虚を塗り固めた様な顔でも無い。内側か ら滲み出てくるものなんだよ、可哀想に、そんなことも判らないなんて。


「 煩いね、消えなよ、邪魔なものはみんな。 」


懐から取り出した杖を軽く左右に振れば、辺りは一瞬で静寂を取り戻し、緩やかな時が流れ落ちる。一体何事が起きたのかと周囲を見渡すの視界に映り込む のは、とリドルだけを残し他の人間は全て時が止まっている様にフリーズしている情景。不自然な姿勢の侭固まる女子生徒は愚か、教師陣でさえ瞬き一つ出 来ぬ状態で固まってしまっている事態に、は 少なからず警戒心を抱いた。


「 能ある鷹は爪を隠す、って言うけど…此れが本当の貴方の実力かしら。  」
「 目聡いね、賢い子は嫌いじゃないよ。 本当は今直ぐにでもこんなところから逃げ出したって良いんだ。 」
「 じゃあ如何して逃げないの? 貴方は…貴方には遣りたい事があるんでしょう? 」


ふわり微笑まれ、そうして薄紫の瞳に全て見抜かれて居るのだと知った。肯定もせず否定も出来ず、他に返す応えも思い付かなくてポートレートの様な微笑みに 曖昧に頷く。勢いよく振り向いた動作とは裏腹、興味を失ったついでに肩の力まで失くしたようにして結われた頭が向き直る。


「 君は如何? 僕が遣りたい事…為すべき事に興味はあるの? 」
「 無いわよ、興味なんて。 さっきも言ったでしょう? 私に貴方は必要ないの。  」
「 …如何して君はそんなにも明晰な頭脳を持っているんだい?  この子達みたいに黙って従っていれば楽なのに。  」
「 ………必要ないもの、だって私が貴方を必要としなくても、貴方が私を必要としてくれるんでしょう? 」

声は恐ろしいほど低く、独特の抑揚を持って紡ぎ出される。さらり、と擬音を伴って流れる様な絹髪が陽の光りを受け、が動く度に灯のように揺らぐ。
言葉の出ない僕に、は無表情に歩み寄る。無感動で鋭利な貌が、静かに見詰める。

「 貴方は欲しいものは如何遣ったって手に入れてみせる…そうでしょう? 」

自信に満ち溢れた表情から聞くような言葉じゃない、掠れる囁きは自嘲に満ちていた。から媚びた言葉や優しい言葉を貰えないだろうことは僕は知っていた し、きっと自身もそれを望みはしないだろうということは良く分かっていた。だから、君に惹かれた。

「 そうだね…君が世界の果てまで逃げても僕は追い駆けるだろうね。 」
「 止めてよ、本当に来そうだから。 」
「 何処へでも、君が居るなら僕は何処へでも行く。 だから君は必死に逃げれば良い、僕に摑まらない様に。
 摑まったら最後--------------- 君は僕のものになるんだ。 」

幼稚染みた行為、そんなことは重々承知していた。澄み切った声音に意識を引き摺られて、ぐるりと脳が揺さぶられる感覚にも気づかなかった。思えば、会話を したのは今日が初めてかもしれない。

「 捕まえられるなら、捕まえてみ…… 」

拒否を貫き通すつもりなら、一瞬の油断も為らない、躊躇する一瞬、相手に心を赦した其の一瞬で全てが無駄に終わる。一瞬の時間が、付け込まれてしまう。 例えば僕のような策士に。
言葉の途中、無理やり引っ手繰る様に細い腰に片腕を回し、一気に距離を詰める。 本当に僕から逃げたいのなら、本当に僕に捕まりたくなかったら、隙など見せず僕の前からその姿を消せばいい。


「 君はもう、僕のものだ--------------


耳元近く、どんな感情も含まれてはいない、静かな声で囁く。闇へ密やかに忍び入るような、人の心の奥深くに潜む暗闇。だが、表面上は憎悪や寂寞、悲哀や喜 悦、そう云う色の何も見えない、空虚な声。
流行もののアイドルの様に僕を崇めて集る女子生徒が好む、一見して澱みない笑顔を見せて。もう逃げるには時期を逸したと悟ったのだろう、もこれ以上は 言い募っては来なかった。

代わり、獲物を見つけた黒猫の様な瞳で見詰められ、気を取られた一瞬の内で世界が破裂した。
僕が掛けた魔法をが解いたのだ、と知ったのは、見るも無残な歪みを作り上げた侭固まっていた女子生徒たちが憑き物から解き放たれた様に動き出したか ら。
仕舞った、そう思った瞬間、眼前からは消えていた。相変わらず、明細な頭脳と長ける才能を持つ。あんな魔法、使えるのは僕だけだと自負していたのに。


「 あれ?…トム、さんは? 」
「 一度手に入れたら…絶対に逃さないよ、僕は。 」


姿見えぬひとに向かって呟いた言葉は、今年の僕への最大の誕生日プレゼントに為った。ハッピーバースディ、自分。
来年は君に、何を貰おうかな。



























後書き

870000HITリクエストドリーム、神無月みさぎさんに捧げる学生リドル夢。
*トム・マールヴォロ・リドル(学生)の夢で、ノット恋人未満でお願いします。
*ラストはくっ付くかくっ付かないかの微妙なライン!で。

学生リドル……ドウシヨウ、と悶々と考えていたのですが、こんな誕生日エピソードを交えて書いてみました。リドルの誕生日っは不詳ということになっている ので、此れがいつなのかはご自由に想像下さい(笑)。
誕生日にリドルから名指しでお前が欲しいとか言われたら、テンション 上がるどころのお話じゃ御座いませんよね!!きっと昇天並なんだろうなぁ…と思いながらもヒロインには敢えて逆を言って頂きました。

受け取って頂けるのでした、是非にお持ち帰り下さいませ。
勿論、書き直し等24時間承りますのでお気軽にどうぞv

++++ この作品は 神無月みさぎ様のみお持ち帰り可能です ++++


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