Place 3
「 …何故に我輩がこの様な真似をせねばならぬのだ… 」
誰一人として通ることの無い、薄暗い廊下を、やたらと大きな紙袋を抱えたスネイプが歩く。
中身が見えないようにきっちりと封がしてあるその紙袋は、余程の重量があるのか、ずしりと重たいように見て取れる。
それを片手で持ち上げて急ぎ足で歩き去るスネイプの姿は、どうみても人に悟られたくない、というオーラを醸し出していて。
「 、いいか、もう二度とこんな真似はしな… 」
自室に入るや否や、紙袋をソファーに投げ置くように置き、に声を掛ける。
支えを無くした紙袋は、最上部の戒めが解き放たれて中身が溢れ出る。
ごろり、と転がり落ちたのは、紛れも無い、猫の缶詰。
そんなものには眼もくれずに、暖炉の傍のカーペットの上を見れば、とシュラインが仲良く眠りに堕ちていた。
遊び疲れたのか、あどけない表情のまま眠りに堕ちる様は幼い少女の様で。
その少女の腕の中で眠っていた子猫は、我輩の声に誘われたのか、ぱちりと瞳を開けた。
「 何だ、腹でも空いたか。 」
一瞥するようにそう問えば、子猫は小さく伸びをする。
そうしてそのまま、細いの腕を飛び越えて、我輩の元までやってくると其の身体を摺り寄せ始める。
暫くその行為を繰り返した後、攀じ登る様に小さな身体を一身に使い、ソファーを登り切ると放置したままの紙袋の中に入り始めた。
ガサガサという音を立てながら楽しそうに袋の中でじゃれ、缶詰にカシカシと爪を立てた。
「 爪を折ったらどうする。
夕飯なら今用意してやるから待っていたまえ。 」
紙袋の中で楽しそうにしている子猫の首を摘みあげると、片手の中に閉じ込めるように抱える。
そのまま足元に転がる缶詰を一つ取り上げると、奥にあるキッチンへと歩き出した。
暴れることも無いまま、手の中で大人しくしている子猫に苦笑しながら、缶詰を皿に盛り付ける。
真っ白な皿に少しだけ盛られた餌と、其の脇にミルクを沿えて子猫に差し出すと、子猫は嬉しそうに食事に付いた。
「 アルバスに拾われて幸せだろうな、お前は。 」
未だ幼い所為か、口の周りをミルクで汚した子猫がミャウと鳴いた。
自ら舐め取るように毛先の手入れをしながら、の傍に腰を落としたスネイプの傍に寄り添うように懐いてくる。
怪訝そうに一瞥してやれば、その無邪気な子猫は大きな瞳を更に大きくさせてスネイプを見上げた。
大きなピーコックグリーンの瞳。
小さな顔に似合わない大きな瞳で一身に見つめ続けられると、心に何故か暖かい物が過ぎる。
「 お前はに似ているな。 」
大きな瞳で、一身に自分を見つめ、無邪気に微笑む。
今はその役目も果たす事無く静かな眠りについているのだけれど、その寝顔もまた無邪気そのもの。
子猫を抱きながら寝ている様は、何処ぞの絵画の一場面の如く。
形は違えど、が二人居るような感覚に、スネイプは歯痒さを感じずにはいられなかった。
「 お前を膝に抱くのは二日振りだな 」
右手で優しくの髪を梳きながら、左手で未だお手入れ中の子猫を掴み上げた。
瞬時に大人しくなる子猫。
そうしてそのまま己の膝の上に乗せると、左手で喉元を撫でてやる。
嬉しそうに喉を鳴らす子猫に苦笑しつつ、我輩も暫し瞳を閉じてその和やかな雰囲気を楽しんでいた。
そうした矢先。
抱えた子猫の辺りから、何やら生暖かい感触が、ローブを伝って脳に届いた。
何事かと慌てて子猫を退けて見れば、しっとりとした感触が確実に膝から背に悪寒となって駆け抜ける。
漆黒のローブの一箇所が、更に黒味を増して。
はた、と気づいた時にはもう、遅かった。
「 シュライン!!貴様、我輩の膝の上で粗相をしたな?!
子猫だからとは言え、容赦はせん!
その着肌毛、そっくり抜いてくれようか!!!? 」
首根っこを掴み上げてそう怒鳴れば、当の子猫は耳を垂らせ、しゅんとする。
叱られた子供のようなその仕草にも、憤慨しているスネイプには通用はしない。
見る見るうちに眉間の皺が本数を増やし、はちきれんばかりの堪忍袋の緒が、今にも切れそうで。
鋭さを増した瞳には、確実に”獲物”として子猫を捕らえていた。
「 さぁ、バリカンか梳き鋏か…はたまた剃刀か。
好きなものを自由に選ばせてやろうではないか。 」
しゅんとしたままの子猫に向かって怒鳴るスネイプ。
それは傍から見てもかなり不審であることは言うまでも無い。
掴んだままの子猫の首を更に上へ持ち上げようとした瞬間、すぃっとその手中から猫が消えた。
代わりに、小さなタオルに子猫を包み、胸に抱いたと瞳があう。
「 、コヤツはだな、我輩のローブに… 」
「 セブルス、そういうの"動物虐待"って言うんだよ。
私はシュラインとお風呂に入ってくるから、セブルスは後片付けお願いね。 」
「 何故に我輩がコヤツの後始末など…!
それ以前に、何故お前も一緒に入る必要がある?! 」
憤慨したままのスネイプは、子猫を抱いた紫苑にそう問う。
するとは、開きかけの瞳を擦りながら、喉奥から這い出すように低い声でこう返す。
「 人がお昼寝してるのに、耳元で怒鳴り声を聞かされた挙句に…
子猫の粗相くらいで憤慨している大人気ないセブルスを遺憾に思っちゃって。
セブルスは小さい頃一回も粗相をしなかった子供なのか、って。
だから頭を少し冷やして来ようかと思って。 」
何か問題でも?
そう聞くの瞳は完全に笑っては居なかった。
低血圧で極端に寝起きが悪いに、"怒鳴り声での目覚まし"は相当最悪の部類に入ることは用意に見て取れた。
子猫を抱いたままバスルームにその姿が消え、シャワーの音と、泣き叫ぶ様な子猫の鳴き声が聞こえるまで、我輩はその場に固まったまま。
子猫の犯した小さな粗相を片付けながら、不機嫌オーラに包まれているであろう恋人の機嫌を如何にして取るか。
我輩はが子猫と共に出てくるまでそのことだけを一心不乱に考えていた。
まぁ、がバスルームに居る間にアルバスがやって来、子猫の預かり延長の旨を伝えられた、と言えば瞬時に笑顔になったのだが。
の笑顔と引き換えに、スネイプは小悪魔との生活を暫く続けなければならないと知り、悲観にくれるだけのこと。
…子猫の巻き起こす騒動は、これだけに終ることが無いと、我輩が知る由も無い。
■ あとがき ■
8000hitリクエスト 琥珀様へ捧げますv
リクエスト内容は…
・Place2の続き(表)
何だか教授が一方的に可哀相な話になってしまいました(苦笑)
申し訳ないです、書き直し、承りますので、仰って下さいませ(汗
子猫の巻き起こす騒動、第三弾は「スネイプ教授のお膝に粗相!」
教授…これはきっと応えたでしょう。
何せ、自分から抱き上げて膝に乗せたら粗相をされたのですからね(笑)
それでもやっぱり、ヒロインの為にこれからも教授は餌を買いに行ったりするのでしょうか(笑)
教授が優しげな眼差しで猫を撫でている姿、是非とも見てみたいです!!!!
そして、出来れば、今後も猫を絡みとした話を書いて行きたいですねv
琥珀さん、大変に遅くなってしまいましたが、リクエスト、有難うございましたvv
++++ この作品は琥珀様のみお持ち帰り可能です ++++
Back
