My sweet home
最近、ホグワーツ内の空気が少し以前とは違っている、と生徒達はその感覚を身を持って体験していた。
特別行事があるとか、何か善からぬ事があるとかいった類のものではない。
異種の集まるホグワーツきっての変わり者…嫌われ者…近寄りがたい者…凝視されれば其れだけで立ち竦んでしまいそうな鋭利な瞳を持つ魔法薬学教授。
毎日眉間に深い皺を刻ませて、黒いオーラを全面に放ち、減点贔屓は日常茶飯事のスリザリン寮監。
普段から決して黒い服以外を身に着けたりはしない…ホグワーツでは知らぬ者など居ない、居る筈のない人物。
噂の中心的的となっているその人物…セブルス・スネイプが…どうやら最近結婚したらしい。
− 今から、帰る。
迎えには来なくていいから家で大人しくしていたまえ −
久しぶりに取れた長期休暇を利用して、スネイプは自分を待つ愛しい者の元へと帰る為に手紙を認めた。
和紙の様な特別な薄い紙に魔法を掛けて、梟に運ばせる。
小さく一鳴きした梟は、想いを込めた手紙を足に括り付けて主の元へと帰ってゆく。
部屋を見回せば片付けられた羊皮紙と、まとめられた荷物、配布し終えた課題の残りだけが置かれていて、以前とは打って変わってのさっ風景さ。
綺麗好きな妻のお陰か、スネイプの部屋はいつも綺麗に片付けられており、埃一つ落ちることは無かった。
そんな自室を満足そうに見て、自分の妻が軽く文句を言いながら部屋を片付けていた一年前を懐かしむように苦笑した。
明かりを落とし、荷物を持ち、鍵を掛けるとスネイプは足早に部屋を出る。
愛しい妻…の元へと帰るために。
「 見つからないようにしなくちゃね 」
「 当たり前でしょう?
あのスネイプの奥さんだもの、きっと物凄く変わった奇特な人に決まっているわ 」
スネイプの知らないところではそんな会話が繰り広げられていた。
スネイプが休暇を利用して家に帰るという情報は、本人の知らぬ間に急速に生徒の間に広がっていった。
誰もが、スネイプはホグワーツ発の特急列車で帰る物だとばかり思っていたが、それは大きな裏切りとなって身に降りかかる。
神妙な面持ちとそれ以上の好奇心を持って終着駅でスネイプの姿を探すけれど、その姿を視界に入れたものは誰一人として居なかった。
待てども待てどもその姿を捕えることは出来ずに、一人…また一人と駅を後にし始める。
最後まで粘り強く残っていたハーマイオニーやロン、ハリーも諦めて駅を後にした。
皆、重要なことを忘れているのだ。
スネイプがそんな単純なことを予感出来ぬほど頭が鈍い訳が無いと言う事に。
休暇前に山ほど宿題を出されているにも関わらずに、浮き足立ったような、楽しさを全面に出し切ったような表情ばかりの生徒達を見ているスネイプが、そんな安易な待ち伏せに引っかかる筈などは無い。
何故に愛しい妻を、我輩だけの妻を他人に見せなければならないのか。
来るな、と言ってものことであろうから、きっと我輩を迎えに来るだろう。
己の為だけに微笑んでいて欲しいその存在が、生徒に向かって微笑みかけるなど想像しただけで腹立たしい。
誰の目にも触れさせることは出来ない、させない、許さない。
「 ……今帰った。 」
「 セ…ブルス…? 」
愛梟が運んできた手紙を受け取って広げた時に、すぐ後ろの暖炉からスネイプの声が聞こえた気がした。
列車到着時刻はまだまだ先の筈なのに、幾らなんでも早すぎる、と首だけを少し後ろに回して暖炉を覗けば、其処には確かにスネイプの姿があった。
使用用途がら…毎日の掃除リストの中に加えられている暖炉のお陰か、スネイプに埃や煙等が掛かっているわけでもないけれど、それでも意外過ぎる場所からの登場に、流石のも苦笑する。
それから、愛しむようにふわりと微笑んで、手にしていた手紙をそっと机の上に置くと、暖炉から出てきたスネイプに背伸びをして口付けた。
そっと口付けたら、スネイプによって更なる深い口付けを受けて、とっさには首に腕を回す。
「 おかえりなさい、セブルス。
今から迎えに行こうかな…って思って支度してたのよ? 」
ようやく開放された事をきっかけに、はスネイプの着ていたローブを脱がせると、その腕に掛ける。
クローゼットへと掛けに行く前に、はそう言ってテーブルの上に置かれた淡い色の服に目配せをした。
それはスネイプが一度も見たことのない服で、教え子だった頃より随分と大人びて綺麗になったが着るにはピッタリの服装で。
これを着た姿も見てみたいものだ、と素直に思わせる位、には似合いの服だった。
「 …だろうと思って此処から来たと言う訳だ。
お前を迎えに来させる等、我輩が許す訳がないだろう? 」
「 私はもう、セブルスの生徒じゃないんだから、そんなに心配しなくても… 」
「 それとも何かね?
我輩が早く帰ってきた事がそんなに不服かね? 」
「 まさか。
早く帰ってきてくれて嬉しいもの。
ありがとう、セブルス 」
ふわりと微笑んでは自分の服とスネイプのローブを終いに向かう。
帰ってきた実家は、スネイプが住んでいた以前と全く変わらぬ出で立ち以上に、隅々まで綺麗に掃除されており、自室同様だったさっ風景な家具たちはの手に掛かってとても落ち着いた雰囲気が醸し出されている。
庭もきちんと手入れされ、季節の花々が所狭しと植えられて、洋風なガーデニングが其処には広がっていた。
小窓から見える、その景色に、安息の溜息が思わず漏れるスネイプ。
この家で、と過ごす楽しい時間の為に、スネイプはホグワーツでの日々を過ごして来たと言っても過言ではない。
「 ご飯にしますか?
それとも、先にお風呂に入りますか? 」
先ほどの服装の上に真っ白いエプロンをしたが、窓から見える景色に心を奪われていたスネイプに問いかける。
「幼な妻」という言葉が似合い過ぎるほどに似合っているの服装に、スネイプは目を奪われた。
細い腰に緩やかに結ばれた蝶の形の紐が、の動きと共にふわりと揺れて酷く可愛らしい。
丈が小さめな事も手伝ってか、身体の小さいにはぴったりのエプロンで、ひらりと舞う裾から覗く生足が何とも艶かしい。
「 そうだな…
先にお前を頂くというのはどうかね? 」
ニヤリと口元に笑みを浮かべ予想通りの言葉を返してきたスネイプは、引きがちな腰をぐいっと掴んで引き寄せる。
エプロンから覗く白くて細い綺麗な足を一撫ですると、ピクリとの身体が跳ねる。
頬に紅を浮かべつつも否定の言葉を紡がないを見て、スネイプは満足そうに口端を緩めた。
日も大分沈みかけているから、さして問題はないであろう。
自分自身も、夕食よりもバスタイムよりも愛しい妻との甘いひと時を堪能したかった事には変わりは無くて、ベットルームに向かう為にそっとを抱き上げた。
「 あ…セブルス、実はね、貴方に話していなかったんだけど…
実は、後輩が遊びに来るの 」
申し訳無さそうに両手を合わせてそういうに、学生時代の面影を垣間見た。
いつもそうやって課題の提出期限を延ばしにやってきた懐かしい日々。
けれど、今回はそんな言い訳や理由は通用しない。
久々に逢えた愛しい妻との甘い時間を、後輩なんぞに取られて堪るかと。
が呼んだ後輩が誰かは知った範疇ではないが、例え来客が誰であろうと邪魔を許すわけには行かない。
「 残念だが、日を改めて貰いたまえ 」
ニヤリと笑ったスネイプは、否定の言葉を紡ごうとするの桜色の唇を塞いでいた。
軽く口付けただけだったその行為は、だんだんと深みを増してゆく。
緩んだ唇の隙間からするりと忍び込んだスネイプの舌が、逃げようとするの舌を追いかけながら咥内を犯してゆく。
甘く吸われるように口付けられて、柔らかく愛撫するように絡められれば、の細い喉奥から甘い声が漏れ始める。
二人は久しぶりの逢瀬と、甘い口付けに、ある事を完全に忘れ去っていた。
此処が玄関であることと、開かれたドアの音が聞こえなかったことを。
「 先輩、手紙で結婚したとお聞きしたので挨拶に伺い…… 」
元気な声が途中まで、セブルス家に響いた。
何事かとが後ろを振り返ると、驚愕したような表情の後輩が居た。
ドアの取っ手を握り締めたまま、顔面を蒼白させて文字通り、凍り付いてしまっている。
けれど、声に気づいたスネイプが、鋭利な瞳で一瞥してやると、魔法が解けたようにふっと身体が軽くなったのか、こんな声が響き渡る。
「 お、お邪魔しましたっ!!!! 」
セブルス家にやって来たのは間違いなく、ハーマイオニー・ロン・ハリーの三人。
彼らはスネイプに睨まれた瞬間に、侘びの言葉を簡潔に述べて重くないドアを閉めて足早に立ち去る。
三人が見たものは、自分の大好きな先輩の旦那がこともあろうにあの、セブルス・スネイプで…
玄関の正面で熱いキスを交わしていたということ。
そして、瞳に真っ先に飛び込んできたのは、幸せさを全面に出し切った見たこともないようなスネイプの姿であった。
普段の彼からは想像も出来ない、したくないものを垣間見た瞬間で。
散々騒いで話題になったあのスネイプの「変わり者の妻」がだったという事実も加えられて…それらのショックが一気に身体を駆け抜ける。
− 今日見たことは、忘れよう。二度と思い出すことも無いように −
帰り道に三人がそう無言のうちで誓い合ったのは言うまでもないことで。
勿論、その後でスネイプとは想像を絶する甘い一夜を過ごしたのである。
■ あとがき ■
77777hitリクエスト 夕紀 麻斗 様へ捧げますv
リクエスト内容は…
・ヒロインは教授の奥さんで、新婚さんv
甘く…との要望は受けていなかったので糖分控えめで書かせて頂きました。
教授の新婚話は初めてで、どうにもしっくり書けなかった気がします。
こんな夢しかかけなくて申し訳ないのですが、返品・書き直し大歓迎ですので、お気軽にお申し付け下さいませ。
ヒロインの口調を妻ということで、大人めに書いてみたんですが、如何だったでしょうか。
何分、教授新婚話は未知の領域で、自分では書く気が無かったので、いい機会を頂きましたvv
ありきたりな夢になってしまいましたかね…申し訳ありませんです。
落ちが思いつかなかったので、冒頭の三人に無理やり登場して頂きました(笑)
この後…三人が再びスネイプの家を訪れる日は来るのでしょうか(笑)
++++ この作品は 夕紀 麻斗 様 のみお持ち帰り可能です ++++
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