Natural Monument
例えばそう…これが他の人間だったら容赦はしなかったかもしれない。
ましてや、元生徒であったとしたら、在学中は確実に減点対象になっていた。
寧ろ減点どころでは済まされぬような事態が容易に想像できるであろう。
しかしながら、減点どころかその不可思議な発言の数々に、我輩は何時も瞳を細めるだけに終ってしまう。
それどころか、この腕に抱きいれて愛しさの余りに甘やかす程で。
傍から見ても到底信じられぬそうなその甘ったるい行為の中で…今日も我輩は生活を続ける。
「 、我輩のTie知らぬか? 」
遽しい朝の一幕。
ホグワーツを卒業して直ぐ我輩の元へと嫁いできた元スリザリンの優等生は、可愛らし気な真っ白いエプロンを空気に揺らしながらぱたぱたと廊下を掛けてくる。
目の前には全身が映る鏡。
脇の椅子にかけられているのは、普段は袖を通すことが余り無いタキシード。
しっかりとアイロンの通ったその上着が示すとおり、我輩はそのタキシードを着、ワイシャツの釦を掛け終えたところで。
準備しておいたTieが見当たらない。
に洗濯を頼んでおいた故、既に乾いて置かれている物だとばかり思っていた。
が、実際はそれよりももっと深刻な状況下におかれていた。
「 きゃーーーーーーーっっ!! 」
「 何だ、、どうした??! 」
バスルームの辺りで駆け寄る足音が聞えなくなった矢先、劈くような悲痛を込めたの叫びを耳が捉えた。
止め掛けていた釦もそのままに、ドアを蹴り破るように急いで廊下に出でる。
若しや、この僅かな距離でがどこぞの変質者に襲われているのやも知れぬ。
もしくは、もっと性質の悪い何かによって、の身に危険が及んでいるのかも知れぬ。
何を考えるわけでもなく、何か良い解決策を見出すわけでもなく、ただ浮かんでは消えるそんな思考と戦いながら、一心不乱並にバスルームへ続く扉を開け放つ。
すると其処には、瞳に涙を湛えたが洗濯機の傍にペタンと腰を落としていた。
「 セブ…ルス… 」
「 なんだ、どうした。
いきなり洗濯機がブラックホールにでもなったかね? 」
「 違う…、違うの。 」
座り込んだに合わせて我輩が屈みこんでその肩を抱いてやれば、は長い睫毛を震わせながら仰ぎ見る。
固く握り締めたその両手を、徐々にゆっくりと開き。
”ごめんなさい”
小さくそう謝りながら、小さなの両手が完全に開かれた時、我輩は目を見開く。
否、正しくはの発するとんでもない発言に眼を見開かざるを得なくなったのだ。
「 Tie…牛になっちゃった…。 」
「 ……見様によっては…確かに牛だな。 」
が両手をいっぱいに開ききった時、其処には洗濯前よりも幾らか小さく縮んだTieが姿を現した。
いや…、唯縮んだだけなら良かったのだ。
皺皺になったそのTieは、以前は純白の輝きを放っていたのだが、それは見る影も無い。
所々に、斑で歪な形の黒い斑点が張り付き、純白を染め上げていた。
そう…それはまるで牛の様な仕上がり加減で。
「 あのね、昨日…セブルスのローブと一緒に洗濯したの。
セブルスのローブ…古いしくすんでるし年季入ってるから絶対に色落ちしないと
思ったのに…なのに牛に… 」
「 …古くてくすんでで年季入ってて悪かったな… 」
「 そんなものよりも、牛だよ、牛ー! 」
「 我輩の大切なローブが”そんなもの”かね…。 」
消え入りそうな低い声でそう呟くけれども、その声はには届いては居ない。
会話を無視された事への苛立ちがこみ上げるのが普通である。
長年大切に大切に使っていたローブだ。
それどころか、我輩は座り込んだままのをその腕に招きいれ、あやす様に髪を撫でてやる。
こんな事は日常茶飯事だ。
長いホグワーツの生活で…既に慣れてしまっていた。
慣れる事のほうが大変だと皆は口を揃えて言うが、我輩にとってこれこそまさに”こんなもの”である。
「 今日のパーティはキャンセルにするとしよう。 」
「 駄目よ、セブルス!
今日はダンブルドア先生のお誕生日なんだから!! 」
「 しかしだな…Tieがこれでは行ける訳も無いで… 」
「 ………!!! 」
そう我輩が言葉にしたとき、暫く考え込んでいたようなの表情が一気に明るくなる。
そして、我輩の顔面は蒼白に包まれる。
こういう時のは…、必ずと言っていいほど何か良からぬことをよからぬ方向で考えるのだ。
そしてそれが発動されて、巧く言った試し等皆無。
何を言い出すのかと思って待ってみれば、それこそ時間の無駄だったと気づかされる。
「 ガレージに行かなきゃ!! 」
「 何の為にガレージに行くのかね? 」
「 勿論、白いペンキでTieを塗るのv
去年使ったペンキが残っている筈だから…
我ながら、ナイスアイディア♪ 」
「 …あれは木工用なのだが…
否、問題はそんな点ではない。
そのアイディアとやらは即刻却下だ。 」
流石に痛くなりそうな頭を抱えるけれど、なら確実に遣りかねないと心が叫ぶ。
しゅん…としたまま俯くをふわりと抱き上げる。
白い…否、白黒のTieを握り締めたが驚いたように顔を上げた。
小さな顔が、真っ直ぐに我輩を見つめる。
「 直ぐに支度をしたまえ。
ホグワーツに向かう前に、ロンドンでTieを買って行こうでは無いか。 」
「 本当…?!
パーティに行けるの??! 」
暗暗く俯き気味だったの表情が瞬時に明るさを取り戻す。
微笑を満面に湛えたは余程嬉しかったのか、我輩に強く抱きついてくる。
そんなに苦笑しつつ、我輩はの額にそっと口付けを落とした。
それから暫くして、何時にも増して綺麗で洗練された美麗なを連れ立って、我輩はロンドンの街を久しぶりに歩くこととなる。
…無論、何事も無くホグワーツにたどり着くことなど有りはしないと思いながら。
■ あとがき ■
55555HITリクエスト夢、 榊 一葉 様へ捧げますv
リクエスト内容は…
・ヒロインがものすごく天然で可愛い。
・そのヒロインに対して凄く甘いスネイプ先生(ヘタレ)←ちょっと可愛い教授で。
・なんかほのぼのとしたお話。。
ヒロインは天然というよりもただのお莫迦な気がしてなりません(苦笑)
そして更には、スネイプ教授がヒロインを甘やかし…過ぎているような気も(笑)
一葉さんの描いたイメージには程遠い気がしてなら無いのですが…返品書き直し承りますので、お気軽にお願いします!!
判りづらいのですが、今回のヒロインはホグワーツ卒業生で、教授の教え子です(笑)
きっと学生時代も手を焼かせまくった生徒だったのでしょうね…。
此処まで飛んでる性格破綻ヒロインを書いたのは久しぶりなので、稀城的には楽しかったです(笑)
個人的にはもう少しヒロインと教授との絡みを書きたかったのですが…かなり長くなるためにカットしました(苦笑)
何かの機会があったらまた書きたいなぁ…と思う今日この頃です。
因みに題名の意味は「天然記念物」です(爆)
それでは、榊さん、リクエスト有難うございましたvv
++++ この作品は榊 一葉 様のみお持ち帰り可能です ++++
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