fall for beloved honeyed words








「 ……… 」











スネイプは、酷く疲れていた。
連日の度重なるホグワーツでの事件に生徒のレポートの採点、論文の提出に古書の読破。
次から次へとやってくる難題難問を、切れそうになる血管を叱り飛ばしてどうにか此処までつなぎとめてきた。
それもこれも、今日と言う大事な日を迎える為である事は言うまでもない。
埒の開かない仕事を大方片付けて、投げ捨てるように休暇届けを出したのが昨夜。
それから、遅いホグワーツ特急に乗るなどと言う時間のロスはせずに、荷物だけ乗せると箒に飛び乗って。
満天の星空の下、半年振りに逢う愛妻の顔を思い浮かべながら、箒の柄を握るスネイプの掌にも知らずに力が入る。
逢ったら先ず、何を話そう、何をしよう、どう抱きしめよう、そんな事を延々思案しながら家路に着く。
急いで箒を飛ばして、見えた仄かに灯りの燈る家のベルを鳴らす。
パタパタと小さくスリッパの音が聞こえ、愛妻の声が可愛らしく響く。
久々の再会に息を呑んだスネイプがゆっくりと扉を開き、玄関先に立つ人物と目が合う。
瞬間、眉間に皺が寄り、押さえてきた血管がゆっくりと戻りつつある。











「 お帰り、セブルス。
 随分早かったね 」


「 …リーマス…貴様何故我輩の家に… 」



「 あぁ、それはね…、 」



「 なんじゃ、セブルス。
 のケーキは美味じゃぞ 」











あ、もうミズ スネイプじゃったのぉ…、と遠くで高笑いが聞こえる。
抱えたくなる頭を必死に抑えながら、スネイプは玄関先に重い足を乗せた。
何故超ハイスピードで帰ってきた自分よりも早く、アルバスとリーマスが居るのか。
いや、問題は其処ではない。
半年以上逢えずに、我慢に我慢を重ねて今日と言う日を待った自分よりも先に、愛しい妻に逢い、其れだけに為らず茶まで嗜むとは。
今すぐ怒鳴り散らしてやろうかとすら思いながらも、申し訳無さそうに微笑み、自分の元に掛けてくる妻を見ればそんな気も失せて。

「お帰りなさい、セブルス」

と囁かれ頬に口付けされれば機嫌なぞ吹き飛ぶというもの。
微笑むの唇に一つ口付けを落とすと、スネイプは二人きりで団欒する筈であったダイニングテーブルに腰を落とした。











「 セブルスはアールグレイでいい? 」



「 あぁ、貰おう。 」











アッサムにダージリン、ディンブラにウヴァ、キームンと、様々並べられた紅茶の葉から、は馴染みの葉を一掴み。
湯気の立つ透明ポッドにそっと葉を入れ、湯を落とす。
忽ち芳しい柑橘系の香りが中り一面に立ち込める。
別な物を呑んでいるのか、アルバスとリーマスはそれぞれ別の紅茶を嗜んでいた。
カタン、と紅茶と共に置かれたのは、銀紙に包まれた苺のケーキ。
料理は決して得意とは言えぬけれど、和菓子・洋菓子を作らせたらその辺のパティシェ顔負けの腕を持つ
自他共に認める”甘いもの好き”が功を奏したのか、の作る菓子は絶品。
甘いものを好まぬスネイプも、の作る菓子にだけは興味を示した。











「 凄く美味しいよ、のケーキ。
 出来ればおかわりが欲しいな。 」



「 ワシももう一つ頂こうかのぉ… 」



「 …、包んで今すぐ持って帰って貰い給え 」











サクリと音を立てて真っ赤に熟れた苺にフォークを刺す。
とろりと透明な蜜が固まったものを一緒に絡ませて口へ運べば、それだけで味が咥内に広がる。
疲れている時には甘いものがいい、と昔からよく言うけれど、その気持ちが今なら判るとスネイプは思う。
幾ら食べても食べ飽きぬその味は、賛美以上の絶品。
おかわりを要求するリーマスやアルバスの気持ちも判るけれど、邪魔で仕方ない。
けれども、当のスネイプよりもは思いの他二人には優しく、切れそうなスネイプを優しく諭す。











「 いいじゃないの、セブルス。
 それに、ダンブルドア校長先生は貴方に学会からの報告書を持ってきて下さったのよ? 」











は柔らかく微笑むと、棚の上の書類の入った紙袋を指し示した。
その表紙には、赤い呪印で「重要且緊急」と明記されている。
大方、スネイプがホグワーツを飛び立つと同時にホグワーツに届けられた速達の手紙であろう。
それをわざわざ届けに来てくれたと言うのならば、アルバスには感謝の意を示さなくてはならない。
遠きホグワーツから届けにきたと言うのだから、のケーキを食べる位は許す。
が、しかし。











「 リーマス…貴様は… 」



「 わたしはアルバスに付いてに逢いに来ただけだから何も心配要らないよ、セブルス 」



「 いいじゃないの、セブルス。
 ダンブルドア校長先生も、リーマスも久しぶりに来てくれたんだから、ゆっくりして行ってね 」











リーマスの無垢な笑みに、の可愛らしい微笑み。
前者はともかく、に微笑まれたのでは流石のスネイプも怒る訳には行かない。
ふつふつと込み上げる怒りをどうにかやり過ごしながら、スネイプはお手製のケーキを食べ、紅茶を飲む。
アルバスとリーマスのおかわり分のケーキを切り分けるに、リーマスとアルバスが話し掛け。
嬉しそうな笑みを混ぜながら返事を返すに、それに気を良くする二人。
睨んでやろうにも、相手がアルバスとリーマスと言うのが難題で。











「 はい、どうぞ。
 おかわりは未だ有るから良かったらいっぱい食べてね 」



「 有難う、
 もこっちに来て座りなよ 」











微笑んだリーマスは、事もあろうに、自分の隣の空いた席を指し示した。
そうねぇ…、と考え込んだの腕を掴むと、スネイプはそのまま自分の方へと引き寄せる。
バランスを崩したは、そのまま倒れこむようにスネイプの膝の上に腕を付く。
その腕を引き寄せ、細い腰を抱くと一気に膝の上までを抱えあげる。
誰がリーマスの隣になんぞ座らせるものか、と。
リーマスが指し示した隣の空いている席とは、スネイプの隣の席でもある。
しかし、リーマスの指図を受けて堪るかと子供の様な低俗思考を働かせたスネイプが、有無を言わさずの席を決める。

それは勿論、スネイプの膝の上。











「 ちょっと、セブルス…! 」


「 久しぶりに逢えたのだ、コレくらいは許されるであろう? 」











後ろから腰に回した腕に力を入れ、スネイプは勝利の笑みを浮かべた。
それを見つめるアルバスとリーマスも、最早邪魔どころか何も言えなくなってしまう。
もそれ位なら…と、仕方なく了承する。
それを言いことに、スネイプは口角を歪め、不敵な笑みを浮かべる。
、と小さく呼びかけ己の方に向き直ったの唇にそっと唇を重ねた。
無論、アルバスとリーマスの見ている目の前で。











「 …セブ…ルスッ!! 」



「 コレくらいは許される、と言って承諾したのはであろう?
 我輩は”膝の上に抱えるくらい”をコレだと言った覚えは無いがね 」











再度不敵な笑みを浮かべたスネイプに、三人が凍りつく。
勝利を確信したスネイプは、冷め掛けたアールグレイを喉奥に流し込むと、ケーキの続きを食す。

fall for beloved honeyed words.

甘い言葉に騙されたのは、言うまでもなくである。











■ あとがき ■


40000hitリクエストドリーム、 羅雪 様へ捧げますv
リクエスト内容は…

 ・多忙な教授が久しぶりの休日。
 ・ヒロインと甘い一日を暮らそうとするがいいところで邪魔(ルーピンさんとか校長とか・・・)が入ってしまう。
 ・教授は怒るがヒロインは意外と冷静。
 ・邪魔が入るが最後は甘く。
 
ヒロインを勝手に奥様にしてしまいましたが宜しかったでしょうか…(汗)??
しかも、リーマスと校長先生、あんまり邪魔していない気が…(笑)
書き直し、リクのし直し等承りますので、お気に召さない場合はお申し付け下さいませ。

今回は帰省後という設定だったんですが、リーマスとアルバスはフルーパウダーを使ってヒロインの家に来てます(笑)
教授…哀れですよね、半年も逢えずに急いで帰ってきたら出迎えたのがリーマス…(笑)
そのまま呪文唱えなかっただけ大人です(笑)!!
それにしても、教授もフルーパウダー使えばよかったのにね…そうさせなかったのは稀城なんですがね(笑)

物凄い個人的な事なのですが、ダージリン・ウヴァ・キームンは世界三大紅茶と言われています。
稀城はアールグレイが一番好きなのですが、皆様はいかがでしょうか(笑)。





++++ この作品は羅雪 様のみお持ち帰り可能です ++++





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