恋愛考察






引見根暗贔屓万年土気色性格極最悪と謳われた、魔法薬学たる彼が何処か可笑しいの は、何も彼自身の所為ではない。
最近彼は…言動行動共に、ホグワーツ魔法学校に就任以来前代未聞とも言える程に他者に対して関心を持たなくなった。
厭、仮にもホグワーツの教授という地位そしてスリザリン寮の寮監と云う職務を遂行しているのは間違い無い。
授業中に失敗を犯せば平気で減点はするし、週末に科せられるレポートの山の量も変わる事は無く、況して採点を甘んじる訳も無い。
仏頂面は相も変らず、朝の挨拶をした処で返って来るのは地の底から這い出して来た様な戦慄の重低音に怪訝鋭利な其の瞳。
挙げれば挙げただけキリの無いこの状況下、では一体何が変ったのかと疑問に思う人も少なくないであろう。

そう、例えば…





「 スネイプ教授、今日はあったかいですから外でお昼ご飯、食べませんか? 」





重い地下室の扉が開き、自分の顔よりも大きな籐籠を携えた独りの少女が嬉しそうな声色でそう告げた。
重く気だるい雰囲気で満たされた地下室に入り込む光りは殆ど無く、湿気を好む植物が生き生きと育ちそうな空気の中、相も変らず羊皮紙にペンを走らせている 部屋の主が顔を上げる。
ね?と微笑まれれば、スネイプ仕方無しとばかり書き掛けの羊皮紙の上に文鎮を載せて徐に椅子から立ち上がった。
そうして其の侭扉の前に立つの腕から籐籠を引っ手繰る様に持上げると、後ろ手に扉を閉めて、二人は陰気臭い地下室から光り当たる世界へと足を進めた。





「 この間はありがとうございました。 」
「 …この間?一体何の事かね。 」
「 魔法史の辞書の事です。 私独りだったら絶対に動く階段で全て下に落してましたから。 」





この間…、そうあれは魔法薬学の講義を終えて図書館に溜まった資料を返却しに行こうとした時の事であった。
量は冊子が3つほど、辞書が4つ程度と大した量ではなかったのだが、部屋に置いておけば溜まる一途を辿るだけなので取り敢えずは返却しておこうと部屋を出 た。
他の授業の講義中という事も有ってか、大広間を筆頭とした廊下という廊下には生徒の姿どころかゴーストの影すらも無い。
混沌とした静寂に包み込まれたホグワーツの其の中を進み、図書館に辿り着いて本を返却するまでにそう時間は掛からなかった。
先を急ぐ仕事を控えていた訳でもないが、目当てにしていた図書が未だ入荷していない旨を告げられ、其の際に纏めて資料を取りに来れば良いだろうとスネイプ は手ぶらの侭図書館を後にした。


暫く廊下を歩いて階段を降りたところで、高く積み上げられた本が小さく左右に揺れながら覚束無い足取りで此方に向って来るのが見えた。
スネイプは一瞬目を見開いたが、直ぐに険しい表情を浮かべて歩みを速めた。
其の侭階段を直下で降りても良かったのだが、其の途中でドサッ、と、鈍い音と共に本の山が一瞬で崩れ落ちた様を見て懐から杖を取り出した。
崩れ落ちた本の丁度真ん中、グリフィンドールのタイをした小さな少女が小さく溜息を吐いて一つひとつ拾い上げようとしている。
一振りすると、拡散した本は緩やかな弧を描いてスネイプの手に積み上げられる。





「 居眠りをしていた罰…其れとも、また籤で当たりを引いたのかね、。 」
「 グリフィンドールの子が如何しても次に抜けられない講義があるらしいんで、私が其の代わりです。 」





拾って下さって有難う御座います、そう言ってスネイプの腕から本を取ろうとするを制してスネイプは来た道をまた戻り始めた。
独りで図書館まで登って来た時の早さの半分の速度で、ゆっくりと歩いてやる。手にした本が重かった訳ではない。
唯でさえ男と女…大人と子どもの足の長さは開けていると云うに、は其処に付け加えて標準身長よりも大分背丈が小さかった。
魔法史の担当教授は、まさかが其の本を図書館に返却するとは思って無かっただろう。若しくは、思っていても全てを一度に運ぶとは思わなかったに違いな い。
が代わりを買って出た人物が誰かは判らぬけれども、手にした本を全て上に積み重ねれば、の視界は完全にシャットアウトされる。
一般の生徒が其れを積み上げて運ぶのならばさして問題は無いであろうが、はそうはいかない。
実際先程見たのは、積み上げられた本に小さな足が二つ生えた奇妙な物体が左右に揺れながら此方に歩いてくる様なのだから。





「 気に留めることは無い。 其れより…いい加減自分の背丈に見合った行動をしたら如何かね。 」
「 例えば大きな籐籠を持ってくるな、とかですか? 」
「 其れも有るが…時折思うのだよ。 お前がまた何処かで大きなものを抱えながら派手に転んで居ないかと。 」
「 大丈夫です、そう云う時は何故かタイミング良くスネイプ教授が来て下さいますから。 」





小さな顔に良く映える大きな薄紫の瞳が微笑みを作り上げる。
ホグワーツ入学当初から何かに付けては視界を遮られ、派手に転ぶの姿を目撃していた。其れも、度々起こるのだから同情混じりに普段は遣らぬ情を掛け た。
最初は…そう、呆れ溜息を零しながら近寄って、倒れこんだに手を差し出してやったときだった。
艶めいた漆黒の髪、長い睫の奥に隠された薄紫の瞳に、まず惹かれた。今でも、視線がぶつかった瞬間、心臓がどきりと高鳴ったのを覚えている。
未だ14の子どもに。恋慕等遠い彼方に棄て去った筈だったと云うに、気付けば其の姿を眼で追っていた。


…恋に堕ちたとでも云うか、莫迦莫迦しい。

誰かに言い訳でもするかのように、心の中で呟く。
けれど其れは直ぐ様確信に変わって、抑え切れない衝動を殺し切れずに我がものにした。
今は恋人同士だなどと気付く人間が、果たしてどれ位居るのだろうか。





「 此れは珍しい組み合わせの二人じゃな。 」





角を曲がった先で、大きな白い髭をゆっくりと掌で撫でながら歩くダンブルドアと、柔らかく笑ったリーマスに出合った。
如何やら二人はこの先のリーマスの研究室に向かうらしく、手には闇の魔術に対する防衛術関連の冊子が持たれている。
驚いたのはダンブルドアとの方で、は慌てて小さく会釈をする。
ダンブルドアはと云えば、スネイプが手にしている大きな籐籠と言い、スリザリンの寮監とグリフィンドールの生徒という珍しすぎる組み合わせに驚きの声を挙 げる。

其れも、其の筈。
とスネイプの関係は絶対的に公衆に公になっては為らぬ事であった。公私混同をしないスネイプは、を連れ立ってホグワーツの外に行く事も無かった し、二人が逢うのは何時も皆が寝静まった深夜だけ。
其れもスネイプの研修室兼自室な為、気付く要素すら見当たらない。
周囲にひた隠しにしている関係、まさかこの様な場所で校長に合うとは予想もしていなかった。
今日とて、生徒や教師殆どがホグズミードに出払っている為、の誘いに乗った。
其れがよもや、ダンブルドアとリーマスに出合ってしまうとは----------





「 先日、スネイプ教授に本を運ぶのを手伝って頂いたんです。
 今日は其のお礼に無理矢理スネイプ教授をお昼に誘ったんです。 宜しければ、ご一緒に如何ですか? 」

「 折角の誘いなんじゃがのぉ…わし等は急ぎの用事があるのじゃよ。
 また誘って遣ってくれんかの。 」
「 私も楽しみにしているよ。 」





丁寧に断りの言葉を述べたダンブルドアとリーマスにもう一度会釈をして、とスネイプは目的地に向かって歩き出す。
スネイプは終始言葉を言わなかったが、普段も仏頂面なのでさして問題ではない。
ダンブルドアもリーマスも、スネイプには何も用事は無いとばかりにニ三言葉を投げては其の返答を聞いて開放してやる。
共に連れ立って歩きながら、がスネイプに話し掛ける声が遠退きながらでは有るが、聞えてくる。
勿論、スネイプは「あぁ」とか「そうか」と言った類の相槌しか打たない為に到底会話が成立しているとは思えない。
寧ろ、一方的にが喋り続けスネイプは仕方なしに其れに付き合っているていると云った情景に映る。
誰が恋人だ等と勘ぐるだろうか。生徒なら先ず間違いなく哀れみ同情の視線をに投げるだろう。





「 私たちも行きましょう。 」
「 そうじゃのぉ。 次に誘われた時、如何するんじゃ… 」
「 行ける訳が無いでしょう…。セブルスも、もう少し行動を改めれば良いのに 」
「 なに、セブルスが気をつけても無駄な事じゃ。
 ホグワーツで秘密ということは、皆が知っていると言う事じゃからのぉ。 」





其の言葉に、リーマスが苦い笑いを浮かべた。
一緒に如何ですか、と誘ったの言葉の直ぐ後に、スネイプの表情が険しくなったのを二人は見逃しては居なかった。
威嚇する様な眼差しを向けられて、如何して二人の間に割って入れようか。
入れる兵が居るのならば、今直ぐ此処に連れてきて姿を拝ませて欲しい位だ。
そして、其の後のスネイプの行動で二人の関係が決定的なものであるとリーマスもダンブルドアも気付く事と為る。
初めのうちこそ、意外な組み合わせだと驚愕の眼差しで見入っていたが、とスネイプが二人の元を離れ歩き出した後姿を見送った際。
小さな背丈のを気遣う様に歩幅を合わせてゆっくりと歩いてやるスネイ プに気付いた。

目聡い二人は其の瞬間に確信する。
他者に合わせると言うことを極端に毛嫌いし、共に連れ立って歩いても独り先に歩いていく筈のあのスネイプが、極自然にの歩幅に合わせゆっくりと歩いて いた。





--------- 贔屓の対象が増えたって訳か。 昔に比べて…随分君も変わったね。




リーマスが心の中で呟いた台詞、其れは一生スネイプの耳に入る事は無い。
バランスの取れない二つの影が中庭に消えるのを見送って、ダンブルドアとリーマスも踵を返した。
其れから先、とスネイプの姿を見た人間は、誰も居ない。
二人だけの甘い時間を味わっている事を知る人間は、後にも先にもリーマスとダンブルドアだけである。












後書き

370000hitリクエストドリーム、よーこ 様へ捧げますv
リクエスト内容は…
 ・ 付き合っている2人。2人は周りに秘密にしていて、ばれてないと思ってます。
 ・ もう、2人の時は甘甘です。 しかし、ダンブルドア曰く「ホグワーツで秘密ということは、皆が知っていると言う事じゃ。」 というわけで、実は皆はあたたかい目で見守ってる毎日なのでした。

背の低いヒロインで!という要望を承っていたのですが…すみません如何もなーなーで終ってしまった気がします(汗)
そして甘々の時間も省いてしまったという有り得なさ…スネイプ教授がヒロイン助けて籠持つだけでも充分甘いと思っている私です(笑)
ヒロインとスネイプの甘々シーンを書いたら其れこそ半端なく長くなりそうなので、後はご想像にお任せしますということで宜しくお願いします…!

受け取って頂けるのでした、是非にお持ち帰り下さいませ。
勿論、書き直し等24時間承りますのでお気軽にどうぞv

++++ この作品は よーこ 様のみお持ち帰り可能です ++++


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