恋に堕ちたら






握り締めた手の中には、一枚の写真。
雪が降り始めた去年の冬に、無理矢理撮られたセピア色にくすみかけた情景。
記念だから、と無理矢理渡されたその写真には、相変わらず何処を見ているとも取れない我輩と…雪の中、静かに微笑む彼女が居た。



懐かしさに打ちひしがれても、もう彼女は居ない。
写真を見れば、いつでも其処には笑った彼女がいる。
あの時は誰に向って微笑んでいたのか。
何時も我輩の為に笑ってくれていた彼女は、今、誰の為に笑っているのだろうか。



手を伸ばせばいつでも其処に彼女が居たのに、それに気付こうとしなかったのは他でもない自分自身。
触れる事が恐くて、
触れたら彼女を傷つけてしまいそうで、
触れたら彼女を離したくなくなってしまいそうで、
そんな自分が恐くて。



傍に居る事が当たり前だった日常に慣れすぎていて。
離れてから判るもの、だったなんて初めから判っていた。
だからこそ、”手に入れたい”と切望したのは事実から。
それでも、出来なかったのは、我輩に自信が無かったから。



我輩だけに向けてくれていた笑顔がそうではなかったと知ったら、
あの天使のような微笑で我輩を拒絶する言葉を聞いたら、
もう…生きて、など行けないと思った。






だったら、初めから望まなければ良かったのだ、彼女など。





「私、この紅茶すごく好きなんですよv」




紅茶を淹れながら彼女が笑う。
それは、我輩に対する”好き”ではないと知りながらも、その言葉を彼女から聞けると嬉しく思う自分がいた。
そして、これは彼女に対する恋なんだ、と気付かされる。



気付けば気付くほど、イヤになる。
彼女に対する独占欲が脳内を支配する。
離れる日が来る事など、信じられない未来のように感じられて。
それが延々繰り返されて結局此処まで着た。



我輩の為にだけ微笑んでくれた彼女を、もう離したりはしたくない。
あの場で別れることが運命だと言うのならば、もう一度出会うための通過点だと自負したい。
そして、そのときこそ、我輩の気持ちを伝えようと思う。





「…校長、我輩に迎えに行かせてください。
 マグル学新任教師・ を」




気付いたら、校長に直談判していた。
彼女が来る、と聞いてから直に。




細く笑った校長を後にして、我輩はその足でセピア色の写真を雪の中に埋めた。
もう2度と、あんな事など無いように。
写真なぞ、これからいくらでも撮ればいい。
昔の彼女に想いを馳せていたのは昨日までで…、明日からは、明日の彼女を愛していく。



恐れる事など、何がある?
彼女を手放してしまった事、それが1番恐ろしい事ではなかったのか。
彼女が我輩を拒絶するならば…無理矢理にでも手に入れればいい。
たとえそれが、彼女の望んだ事でなかったとしても。
いつかは、それが”望んだ事”になるように仕向ければいい。



それは思いのほか、簡単だった。
我輩が彼女に恋に落ちたように。
我輩が彼女を愛してやればいいだけのこと。
ホグワーツに居ただけの時間を掛けずとも、よい。



既に、我輩が…恋に堕ちているのだから。









後書き

3000HITのリク権を貰って下さったしゅうや様へ捧げますv
リクエスト内容は…

・「恋じゃなくなる日」をスネイプ教授視点で見たら。
・実は教授がベタ惚れだった&其処にスリザリン的策略あり。


…最後がどうも出来てませんね(笑
申し訳ありません(泣)気に入らなかったり、イメージと違ってたら教えて下さいませ。
書き直させて頂きます故。

スネイプ視点、ということで、頑張ってみたんですが、会話文無し・情景描写無しの文章ってキツイですね(汗
今だから、明かせます…稀城は挫折寸前でした(笑)
しかも、ドリームじゃないような気にもなってきましたし…(オイ)
それでも、大好きなしゅうやさんがリクエストして下さったので、一回死んだ気になって頑張りました。
努力不足は勘弁して下さい…山に修行してから改めさせて頂きます故!!




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