----------- スリザリンの幼姫が、婚姻を前提に郷里で見合いを行う。
ホグワーツ内を師走の疾風の如く駆け抜けた愚報は、瞬く間に教師陣生徒陣を問わずに猛烈な勢いで浸透していた。
あの、スリザリン寮の幼姫と皆に呼ばれている東洋出身の少女、・が若干15歳にして郷里にて見合いを行うと言う。
実際問題、の口から聞かれた訳では無いらしいけれども如何やら例の双子が決定的な証拠を知ってしまったらしい。
号外だと言って配布されたホグワーツ内報によれば、幼い頃より由緒正しき家柄に生まれたは出生直後にフィアンセが居たらしい。
両親はホグワーツ卒業までの見合いは控えていたのだが、先方の起っての申し出により今回この婚姻を前提とした見合いが勧められる。
遅くとも、今週末には郷里に戻り正式な見合いを執り行うと言う。
「 我等が幼姫の婚姻を、何としてでも阻止せねばならない…! 」
ラストにデカデカと書かれていたその文字に自然と眉間に皺が寄るのが己でも厭なほどに理解出来る。
最近、妙に生徒やリーマスの動向が可笑しいと感じていたのはこの為であったとは。
我等が幼姫、だと…?
は我輩だけのモノ。例え許婚が居ようともあれは我輩だけのモノ。
感情をそのままぶつける様にして、手に持ったホグワーツ内報をぐしゃりと握り潰す様に力を込めた。
由無しのココロ
「 スネイプ教授、今日は何時に無く不機嫌ですね…。 」
昼過ぎ、決まって我輩の部屋の扉を壊れるのでは無いのかと思う位の勢いで押し開く者が居る。
歳相応の満面の笑みを湛えて、此方の都合等知りもしないでヘラヘラとおどけながら敵寮の監督であり誰もが皆一歩後ずさりするこの我輩に純真無垢な笑顔を向けて。
普段通りに蹴り破らん程の音を立てて室内に入ったは、普段の数倍は怒りを全面に湛える我輩の表情と雰囲気を一瞬で悟って小さく言葉を吐いた。
如何やら今日は出直した方が良さそうだと客観的に悟ったは、引き攣った笑みを浮かべたまま寮に引き返そうとする。
飛んで火に居る夏の虫。其れを逃がしてなるものか、と我輩は懐から杖を取り出し強引に扉に魔法を施して逃げ道を断つ。
「 あ、あの…私昨日ちゃんと課題出しましたし…
そりゃあ少し遅れました…字は雑だった…スペル間違いもきっとある…
でも其れは毎度毎度の事で今更そんな激怒する程の事では無いかと… 」
「 言い訳は其れで終りかね。 」
「 ちょっとだけハーマイオニーに手伝ってもらいまして…
後、家の魔法薬学辞書からちょっと引用なんかもしちゃったりして…
でも其れもコレも普段どおりであって… 」
「 …では今後は我輩の見ている目の前で課題を書いて貰うとしよう。
態々見過ごしておいてやったものを自ら公言するとは誠愚かな。 」
「 そうですよね、見逃してくれてたんですよね……、…?
って、其れが怒っていた理由じゃなかったんですか…!? 」
「 …我輩が何時、お前の課題について述べたかね。
勝手にベラベラと喋り出したのは紛れも無いお前だろう。 」
其の言葉に、漸く己が墓穴を掘れるだけ掘りまくったと言うことに気付いたは顔面を蒼白させる前にがっくりと肩を落とした。
そうして普段そうする様に、我輩の机の眼前のソファーに腰を落して己の掘った墓穴の深さに溜息を吐く。
強ち、この先の課題提出を如何しようとでも思案しているのだろう。
我輩が今朝方胸を鋭利な刃物で引裂かれんばかりの痛みで切り付けられたと言うに、その様な事態等知りもしないでは己の今後の事ばかりを考えているのだろう。
さも、課題の事以外では確実に己がこの我輩の逆鱗に触れる事など無いのだろう、と。
事実、に対して此れ程迄に憤慨…と言うよりは一方的な嫉視に値するのだろうがそんな事は如何でもよい。
兎に角、何故にが我輩に「許婚が居る」という事実を簸た隠しにしてきたかと言う事実が問題である事だけは間違い無い。
教師と生徒と言う間柄なら未だしも、仮にも「恋人同士」等と言うカテゴリに属する位置に身を置いているこの我輩に隠し事をするとは何たる事態。
普通の女であれば、速攻この場で双方の共有時間に終止符を打たれても文句は言えまい。
「 因みに…、如何して其処まで不機嫌か聞いてもいいです…か? 」
「 如何と言うことは無い。
唯、近い将来この世界から一人の哀れな男が人生にピリオドを打つだけの話だ。
まぁ、我輩の逆鱗に触れたのだ、自業自得とでも言うべきか。 」
間違ってもをこの手中から手離すと思うか、莫迦莫迦しい。
許婚が居るのであれば、其の命を惜しまぬ輩をこの世界から抹殺すれば良いだけの事。
何、この魔法薬学に熟知している我輩であれば証拠も残さずと簡単に葬り去ることが可能である事は、誰よりもこのセブルス・スネイプが知っている。
酔生夢死する位ならば己が愛する女を手中にせんが為に、人の一人程度殺傷しても華を添える人生に為るのでは無いかと間違った人生価値観を脳裏に描く。
其れも此れも眼下に居る唯独りの女とは到底呼べぬ幼女の為だと自覚すればする程己が滑稽で。
されど、どれ程己が惨めな存在に為ろうともを手離す位ならば死笑顔で修羅の道ですら歩ける覚悟。
…と言うのにだ。
何を如何間違ったのかこの幼姫は、ターゲットが未だ何処の誰かの何とも気付かぬ侭で自分の分と我輩の分の紅茶を淹べている。
我輩が激怒していようと普段と何等変わり無く接する、そう云う天真爛漫な態度が我輩の歯車を乱す。
「 私もお悔やみしなくてはいけませんかね。
教授の怒りを買ったなんて…一体何をされたんだか。 」
「 否、お前自ら悔やまずとも身内から葬儀の通達が来るであろうから案ずる事は無い。
最初で最後の情け、通夜位への出席は認めてやらん事も無い。 」
「 …身内…ですか?
弟が遂にダームストラング校で教授の悪口でも公言したんですかね。 」
「 …如何やらそれも初耳らしいがまぁ、如何と言う事は無い。
忌々しい貴様の婚約者とやらがこの世から抹消するのだ。
通夜と言うよりは最早我輩にすれば宴の間違いとも取れん事は無い。 」
「 へぇ、そうですか…私の婚約者が抹消…
……婚約者…?誰の婚約者ですか…? 」
「 何度も言わせるな、腹立たしい。郷里に残してきた貴様の婚約者だ!
精々最終通達で”飲み物にはご用心”とでも伝えておく事だな。 」
「 …郷里の…婚約者… 」
眉間と血管から勢い良く血が吹き零れそうな程戦慄く。
”許婚”と己の口が単語を紡げば紡ぐ程に憤慨宛らの感情が一気に脳天を付き、今にも口汚い言葉と共にに罵声を吐きそうな己を必死に押し殺す。
さて、はこの言葉に漸く気付き如何反応を返してくるのだろうかと心待ちにしていれば、何が如何転んだのかは一瞬示唆した後大きな声で其れは其れは酷く楽しそうに笑い出した。
客観的に見れば如何にも我輩一人がに小莫迦にされている様にしか取れず、いい加減の前では穏便な我輩の我慢にも限界が来ると言うもの。
かと言って怒鳴る訳にも行かずに一人沸々と沸き上がる憤慨感情を言葉にして表現するしか術は無い。
さて如何言ってやろうかと息を呑んだ刹那、一頻り哂い終えたのかが急に真面目な顔になり、黒曜石の瞳が真っ直ぐに我輩の瞳を視た。
「 何か誤解してらっしゃるみたいですけど…私、婚約者なんて居ませんよ?
寧ろ、由緒正しき家とは言っても家は分家ですし…
戦国時代からの末裔ってだけで、許婚の存在どころか内の両親ですら恋愛結婚ですから。 」
「 ………何だと? 」
「 ですから…、何処からそんな馬鹿馬鹿しい三流ゴシップ拾ってきたのか知りませんが、
私にはセブルスと言う恋人が居ますし、セブルスと別れる気なんて更々無いですし、
生まれてこの15年間、一度も許婚が居るなんて聞いた事有りませんよ。 」
「 では、お前は今週末何故に郷里に戻ると言うのだ? 」
「 週末…あぁ、従妹のお姉さんが許婚と結婚するんで出席するんですよ。
………
教授、もしかして私がその許婚と結婚すると思ったんですか…!!? 」
…完膚なきまでにやられた。
よく良く考えてみれば、記事を書いたあの双子がの郷里の言葉を理解出来るほど頭が良い訳が無い。
リーマスは大方その裏の事実を知っての上で態々我輩にホグワーツ内報を届けに来たのであろう。
己が思った通り我輩が憤慨しアレヤコレやと悩む姿を想像しては、話の種にと笑い転げていたのであろう。
事実、リーマスの思う通り勘違いしたのは我輩自身で余りの事実の大きさに双子が書いた内報を信じ込んでしまっていた。
では何故は我輩にその事実を隠していた…?疾しい事が一ミリでも存在していたからではないのか?
「 、では何故今までその事実を黙っていた?
何も疾しい事が無ければその通達を受けた際に我輩に言うべきであろう? 」
「 あれ、スネイプ教授聞いていなかったんですか?
ダンブルドア校長に外泊届を貰いに行った時に
”心配じゃから寮督であるセブルスに同行して貰うとしようかのぉ”
って言ってダンブルドア校長からスネイプ教授に言って頂けると仰っていたので、
私はてっきり教授は既に知っているものだと思ってましたが…? 」
「 そんな話は未だ嘗て聞いた事等一度も無い!!
アルバス…よもや其処まで巨大なスケールのゴシップで我輩を躍らせるとは…ッ
こうなれば無駄に過ごしたこの数時間の憤りを全て… 」
アルバス諸共我輩を騙していたと知ればその憤慨も最早頂点を極める事と相成る。
大方今日の夜か明日にはアルバスの口から新事実と共に休暇と称したの郷里への付き添いが命じられるのであろうが、それでもこの数時間を無駄に過ごしたと思えば酷く腹立たしい。
勘違い独り祭りを繰り広げたのは紛れも無い我輩で有るが、それにしても其処までする事は無いのでは無かろうかと本気で毒薬を調合する意気さえ起こる。
手にしたカップの細い柄がパキリと音を立てて砕けんばかりに指先が力が入り、意を宿したその瞳には最早どの毒薬にするかしか映っていない。
故に…、突然薫ってきた独特の柔らかくて仄かな柑橘系の薫りが鼻を付いた時に初めて後ろから腕を回されたと気付いた。
「 無駄ですか?少なくとも、私は嬉しかったですよ。
セブルスに此処まで想っていて貰えたと判ったんですから。 」
「 …勝手に勘違いをした我輩を叱咤せぬのか? 」
「 しませんから一つだけお願い、聞いて下さい。 」
「 願い…?課題の再提出なら別に我輩は求めたりせんが… 」
後ろから抱き締められる様に腕を回された我輩は、の細い腰を腕で支えて無理やりその膝上に落す様に身体を持ち上げた。
軽々と浮き上がった其の身体を落さぬ様に腕で支えてやりながら、膝上に落してやればは普段通りに嬉しそうに微笑む。
その可愛らしい唇から紡がれた”願い”と云う単語を繰り返すように問うてやれば、少しばかり頬を紅葉させながらもは首を横に二三回振る。
疑問符が脳裏から離れぬ様に様々な案が浮かぶもドレも此れもの願う其れとは異なるらしい。
何事かと考えるも、如何にも思い浮かぶ事は無い。
そんな折、余計な考え事に没頭すれば聞き逃してしまいそうな程のか細い声ではゆっくりと其れを告げる。
「 結婚式が終ったら…一日、デートして下さい。 」
「 断る理由が何処に有る?無論、其のつもりでアルバスに外泊願いを出したのであろう? 」
「 え…まぁ…そうだったりするんですが… 」
「 為らば公然デートを楽しむとしよう。 」
其の言葉に嬉しそうに笑んだの頬に、柔らかく一つの口付けを。
少しばかり腑に落ちない気もするが、結果的にとの一日デートの許可が下りたのだと思えば容易い事。
楽しそうに週末何処へ一緒に行こうかと話すを見ながら、密かに双子にだけは何かしらの報復を受けてもらわぬば為るまいと思案していたのはには黙っておく事にしようか。
少なくとも、天災は忘れた頃にやってくる。
諺通りに週末が明けてからじっくりと考えれば良いだけの事。
何やら週末明けは良い余興が楽しめそうだと、我輩は独り自嘲した。
■ あとがき ■
240000hitリクエストドリーム、ミワコ 様へ捧げますv
リクエスト内容は…
・従姉のお姉さんの結婚式に出ることを隠していたヒロイン。
・その話に尾ひれが付いて、ヒロインが結婚を前提としたお見合いに出るという噂が広まる。
・その噂に慌てた教授が取った行動。
・最後は甘〜い二人vv
スネイプ教授が大分独りで爆走しちゃってますが…(笑)
微妙にギャグチックなのはリクエストを頂いた時にもっと有り得ない位のギャグが浮かんでしまったからであって…(汗)
やはり、あの後双子はスネイプ教授にしっかりと制裁を下されたんだと思って下されば幸い(笑)。
それにしても、教授が慌てて取った行動…
が如何も思いつかなくてこんな公言殺人犯みたいになってしまったり(苦笑)
きっと教授なら、相手を抹殺しかねない!と勝手に思ってしまったのdどうぞお許しを…!
最後も無理やり甘くしたようになってしまって申し訳有りません。
受け取って頂けるのでしたらお持ち帰り下さいませ。
勿論、書き直し等24時間承りますのでお気軽にどうぞv
++++ この作品は ミワコ 様のみお持ち帰り可能です ++++
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