「 Together 」






生粋の純血一族、マルフォイ家の主、ルシウス・マルフォイに、素敵な素敵な妻が出来たのは、つい最近のことで。
冷徹冷酷冷血であり、家の家来には、外での彼の応対よりも更に凄まじい程の冷厳振りだというのは、専らの噂で絶えることはない。
冷淡な態度・口ぶりであるにも関わらずに、彼に一瞥された者はすべて、彼の隷属になってしまうほどの、何かを超越した存在である。
世間が、彼に下す評価は、間違いなく冷評で。
それでも、マグル出身の令嬢を嫁に貰ったという噂が流れ始めてから、少しは世間体も良くなったと、皆が胸を撫で下ろす。
それは、マルフォイ家に仕える者以外が口にすることであって。
マルフォイ家の人間は、寧ろ、嫁を貰わなかった方が良いのでは…?と頭を抱えるくらいで。
けれど、勿論、嫁に来た令嬢が悪いわけではなく…
彼女に心を奪われすぎている、ルシウスの所為で。









今日も…マルフォイ家の皆が、頭を悩ませる一日が幕を開ける。














「 ご主人様、本日の予定ですが…
 先ず、9時に…」













ただっぴろいリビングで、同じように広いテーブルに、朝食にしては珍しい位の量の豪華な料理が並べられている。
其処には、ルシウスの一族を初めとした、家の者全てが勢ぞろいし、コックと女中を含む全てのものが朝食を取っている真っ最中だった。
昔は、家来のものとは違う食べ物、違う食事時間、違うテーブルで食べていたが、彼の妻である、が来てからはその様は一変する。
ルシウスは、彼女に弱い。
彼女が「皆で一緒に食べる」といえば、家訓だろうが仕来りだろうが、そんな戯言は其の日から上書きされ、彼女の言うとおりに変わる。
勿論…、
家来の者の反発など許す筈も無く、食べにくいであろう、主を前にしての食事を、家来の皆は、粗相の無いように朝から気を張り詰めたままで食事をする。












その中で、唯一人食べていないのが、この男性。
ルシウスの直属の部下であり、秘書でもある。
彼だけは、食事を早めに取り、ルシウスの一日のスケジュール調節を行い、ルシウスが食事の際にこうして伝えにやって来る。
それだけが、が来る以前と変わらない情景。
ルシウスは、彼が話す本日の予定を面白くなさそうに聞きながら、珈琲を飲んでいる。
唯一つ…ある情景を除いては、それでも普通の朝の風景。













ルシウスは話を聞きながら、珈琲を喉に落として、愛しそうにの髪を撫でる。
ルシウスの座る、絢爛豪華な椅子の上には、抱えられたがちょこんと小さく座っていた。
椅子の足の高さ+ルシウスの背丈の高さのおかげで、は地面に足をつくことが出来す、絶えず浮いている状態になっている。
それを、落ちないようにルシウスは支え、そのままの状況で、二人で食事をする。
誰も、「椅子をお持ちしましょうか?」等とは聞かないし、聞けない、聞く必要が無い。
ルシウス自身が、望んでそうしていることなのだから。











「ルシウス、あの美味しそうな苺取って貰える??」













抱えられたが、控えめにそう告げる。
見れば、の前には、旬の真っ赤に熟れた苺が籠に入って置かれている。
その距離は、ルシウスの手の長さなら届くかもしれないけれど、の腕の長さでは、後一歩というところで届かない。
妻、というより、「幼な妻」というニュアンスのほうが合っているとも取れないは、ルシウスとは比べ物に成らないほど小柄で小さい。
漆黒の瞳は大きく、薄紫の色が添えられて、それを強調するような真っ白な肌に小さな顔。
にっこり微笑む顔は、綺麗というより可愛い、というほうが似合っているくらいに可愛く、微笑まれれば、誰もが心和みそうな美少女。
今年ホグワーツ・スリザリン寮を主席で卒業したばかりの頭脳明晰な少女。
…が、ルシウスの妻である。













「ほら、落とすな」













無言のまま手を伸ばして取ったルシウスは、丁寧に蔕を取り、待ち構えているに食べさせてやる。
”自分食べられるから、大丈夫”
そう言って、自分で食べようとするよりも先に、ルシウスは「許さない」とばかりに、一瞥する。
そして、仕方なしに、は、親鳥に餌を食べさせて貰う雛鳥のような愛情に満ちあふれた食事を行うのである。
こんな情景はまさに日常茶飯事で、家来の者は、誰一人として注意したりする命知らずは居ない。
コックを初めとする男達は可愛い新妻のに目を奪われ、ルシウスが羨ましくて仕方なく、”自分にもあんな可愛い奥さんが居たら…”と思わずには居られない。
対する女中は、を羨ましそうに見た後で、美麗極まりないルシウスのに対する愛情が自分に注がれたら…と有り得ない妄想に胸を躍らせる。
がマルフォイ家に嫁いで以来延々繰り返されるこの非日常は、マルフォイ家では、既に日常と成っていたのである。












「 …以上です。
 それでは、私は運転手に本日の日程を…」













一礼をした秘書の男性は、パタン、と分厚い手帳を閉じる。
今日一日の日程を聞き終えたルシウスは、の為にオレンジジュースをグラスに淹れてやりながら、告げる。













「 …つまらぬ一日だな。
 全ての行動に、を同行させる」













こぽこぽとグラスに注がれるオレンジジュースの音が、静まり返った室内に響く。
ルシウスのこの発言を聞いて、口の中の食べ物をぶっ、と吐き出す輩は此処には居ない。
そんな命知らずなやつは、言い訳をいうチャンスも与えられぬまま、即刻解雇。
つまりは、毎日の仕来りのように繰り返されるこのルシウスの発言に、必死に絶えられる者だけがこの屋敷に家来としておいてもらえるのである。













「 で、ですが、ご主人様…
 今日は魔法省の大事な重役会議が…」













物凄く控えめな秘書の発言に、ルシウスはかたん…と酌み終わったグラスを置く。
それをは”ありがとう”と微笑んで受け取る。
にむける愛情とは比べ物に成らないほどに冷たさを持ったルシウスの言葉は、を初めとしたその場に居る全てのものを凍らせる。













が行かぬならば、今日の予定は全て
 キャンセルだ。」













”あぁ、また始まった…”
その場に居る誰もがそう思うこと。
そして、明日も変わらずに思うこと。
困った様な表情を浮かべる秘書に、誰もが同情する。
なんと言えば、ルシウスは一人で仕事に行ってくれるのか、毎回悩み実行に移すも、それらは全て綺麗に空振りで。
方法は唯ひとつ。













「 ルシウス。
 今日は私は同行できないの。
 今日はね、ハーマイオニーが家に遊びに来てくれることになってるの」













オレンジジュースを飲みながら、は申し訳なさそうに言った。
が同行できるのは、自分が立ち入っても大丈夫そうな小さな仕事だけ。
大きな仕事が入りそうな日は、秘書が前もってに知らせを入れる。
すると、は其の日には必ず何かの用事を入れ、同行できないと、告げるのだ。
まぁ、この画策にルシウスが気づいていないわけでもないのだが。













「ならば、ミス グレンジャーも同行させたらいい」













ルシウスの何気ない一言に、秘書の顔が益々青くなる。
魔法省重役会議に、ルシウスの妻だけならまだしも、部外者(しかも、マグル)を二人も引き入れるなんてことをしたら、どんな騒ぎになることやら。
予想できるがしたくない予想が、頭を一瞬で駆け巡って、一気に心臓が凍りつく。













「 だめよ、ルシウス。
 ハーマイオニーを急性心臓麻痺にする気なの?
 貴方が居たら彼女は卒倒しちゃうよ…」













くるりと振り返り、柔らかい服の袖を掴んで、ルシウスの瞳を見つめながら、はそう告げる。
これには流石のルシウスも弱い。
というか、の頼みごとには弱い。
”仕方ない…”
そう呟いてガタン…と席を立つ。
勿論、愛しいをその腕に抱きかかえたままで。
刹那、食事を終えた家来も食事中の家来も一斉に立ち上がって深く礼をする。
ルシウスが傍を通り過ぎるたびに、家来は口々に
”旦那様、いってらっしゃいませ”
と挨拶をする。













ルシウスが食堂のあるリビングを去った跡で、家来の何人かと秘書もその部屋を後にする。
長い廊下を渡って、玄関で靴を履いたところで、ようやくルシウスは、抱きかかえたを自分とは逆の玄関へと静かに下ろす。
が、”いってらっしゃいvv”と告げる前に、其の唇は、ルシウスによって塞がれる。
逃げようとするような腰を引き寄せ、身長の足りないの為に屈みがちで柔らかく口付ける。
勿論…、ルシウスが遠慮なぞ、するはずが無い。
桃色の唇を優しく包み込んでは、するりと舌を差し入れ、未だ少し怯えたように小さくなる舌を追いかけては優しく撫で上げる。
髪を梳きながら深い口付けを落とし、紅い舌先を歯で甘咬みしてやれば、の細い喉から甘い嬌声がこぼれ始める。
キスだけで快楽に溺れそうなは、知らず知らずのうちに、がくん、と腰の落とす。
それを片腕だけで支えながら、名残惜しそうに唇を離したルシウスはとろん…と甘い瞳で自分を見上げる可愛い妻の耳元でこう甘く囁く。













− 続きは帰ってからだ… −














が、”いってらっしゃい”と、ちゅっと最後にルシウスの頬に口付けると、ルシウスはローブを羽織って仕事へと向かう。
その前に…
毎日繰り返される言葉を言った後で、だが。













「 私以外の男がに触れることは許さない。
 の体に掠り傷でもつけたものは即刻解雇だ。
 判っているだろうが、私のによからぬ事を考える者は、
 ”死より恐ろしい”制裁が下ると思え。」













冷たいアイスブルーの瞳が、更に冷たくなる瞬間。
− では、行ってくる −
優しさに満ちた其の言葉は、言うまでも無く、だけに向けられた言葉で。
ひらひらと手を振りながら”気をつけてねv”というの頭を優しく撫でると、ルシウスは家を出る。
家の者が、ようやく深呼吸できる時間であり、同時に、”転職”の二文字が過ぎる瞬間。
けれど、大抵のものはルシウスの傍に居たさに、の笑顔を見るためだけに、この屋敷に残ることを決意しなおす瞬間でもある。













マルフォイ家の一日は、こうして幕を明ける。
間違ってはいけません。
これは、あくまでも、朝の数時間の出来事なのですから…。











■ あとがき ■


18000hitリクエスト 龍見 青様へ捧げますv
リクエスト内容は…

・ルシウスと新婚ラブラブvv奥様も大変ねぇ・・・

奥様が大変というより、マルフォイ家の家来が大変…のような気が…
申し訳ないです、書き直し、承りますので、仰って下さいませ(汗

私が書く愛妻家のルシウスはどうしてこうなのでしょうか(苦笑
だんだん彼が壊れていくような気がしてならないのですが、書いてて楽しくて仕方ありません(笑
ちょっとシリーズ化しそうな勢いですよ(笑
「愛妻家ルシウスシリーズ」?捻りが無い…(爆

それでは、素敵なリクエスト有難うございましたvv
私の理想の殿下を書かれる青さんに捧げますvv
実は青さんに…密かに愛を伝えたいほど、愛を飛ばしまくってます(おい




++++ この作品は龍見 青様のみお持ち帰り可能です ++++











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