血の通わないその冷たい腕で、最初で最後、ルシウスは を強く抱きしめた。
叶う事の無かった の願いは、小さく虚空に消え去って。
大きな鎌を振り上げ人の命を一瞬で奪い去ることを目的とするその存在に、貴方は疑問すら抱かなかった。
皆とは明らかに違うその存在意義の果てで、貴方は小さく嘲いながら魂で汚れたその鎌を振り落とす。
一瞬で済むその行為。
叫びを上げる暇も無い程の刹那の時間。
煩わせる事すら皆無のその仕事の中で、貴方はどうして私の命を見捨てたの?
冷たい腕で強く抱きしめて、耐え忍ぶかのように震える頭を撫でて、同じ様に消えた貴方。
貴方の存在なんて、初めから気付いていた私を、どうして貴方は生かしておくの?
自由になれると思った。
失わなくて済むと思った。
貴方の傍にずっとずっと居られると思った。
貴方の傍に居れるなら、例え天使でなくなっても構わないと思った。






全てを失って、全てを忘れても、貴方さえ居てくれたら、それでいい。
そう…
だから私は自ら望んで堕天の道を歩く。







片翼の天使







「 ずっと…こうして欲しかったのだろう? 」






乾いた低い声が地下室に響いた。
無機質な部屋に、机と椅子が一脚ずつ。
書類を載せるべきであろうその机のは既に使用意味を成してはいなかった。
無造作に散らばった書類には、至る所に血が滲み、赤褐色の染みを作っている。
書類の姿を見せないその机の上には、翼を折られた天使が一人、空ろ気な瞳を晒したまま。
折れた翼からはもう、血は滲まない。
変わりに巻かれた包帯が、その白色を真紅に染め上げるだけ。






「…ひっ…っ…」


「 その為に、自ら此れほどまでに美しい翼を折ったのだろう? 」






桜色の唇から、小さく嗚咽が洩れた。
ルシウスが柔らかく折れた翼の傷口に触れれば、天使は痛みから身を竦め。
傍から見ているだけでも痛哭したであろうその痛々しいまでに腫れ上がった翼。
元は美しかったであろうその純白の翼の美しさに心を奪われたルシウスは、心の底から痛惜した。
折られてから数時間、既に背の根元から漆黒の色に染まり始めているその翼を、ルシウスはその血通わぬ指先で撫で上げる。
ビクリと身体を竦ませる天使に細く笑い、触れるようなキスをその唇に落とした。
手に入れたくても出来なかった純白の天使が、ルシウスの瞳前に素肌を晒したまま、押さえつけられている。






「 私は…お前とこうしたかったのだよ…、


「ぁっ…んっ…っ…」






触れる様なキスが続き、それは次第に深い口付けへと変わる。
両手を拘束された嘆きの天使は、漆黒の髪を揺らしながら、ルシウスの口付けを受け入れる。
ルシウスの舌が、 の口内に滑り込み、逃げる の舌を吸い上げた。
角度を何度も変え、激しく求めるようなキスが続き、 は苦しさの余りに瞳に涙を落とす。
2人の飲みきれない唾液が、 の月夜に輝く白い喉元に垂れ流れる。
漏れる吐息をそのままに、ルシウスは貪るように を塞いだ。






「 自ら翼を折って堕天になる等…馬鹿げた真似を 」


「 ひゃっ…んっ…っ…」






乾く蔑んだ笑い。
冷たく凍りついた表情に不釣合いなほどに優しい口付けを落とし続ける、黒を背負った死神。
絹の如き美しい肌に所有の印が、一つ、一つと刻み込まれていく。
その度に、反応する の身体。
それを面白そうに一瞥するルシウスは、そのまま冷たい指先を胸元に忍ばせ、決して豊富と言えない膨らみを揉下す。
時折思い出したように指の腹で胸の頂を愛撫され、舌で転がされる。
下腹部にじんと感じるものが流れると同時に、自然に腰が揺らめく。






「 ずっと…こうして欲しかったのだろう? 」


「 ひゃっ…ぁん…」






再び聞いた台詞を吐く耳元を掠めた甘く低い声に、拒否の声を上げようとすれば、其れよりも先に喘ぎが口を割る。
脇腹に指を這わせ、台詞を吐いた唇はそのまま胸元に、内腿を割ってくる長い脚を邪魔する手立ては最早、無い。
満足そうに口角を上げたルシウスは、遮る物の何も無い其処へと指を忍ばせた。
途端に長い指先に、熱い蜜が絡み付く。
ちゅぷん、と聞きたくも無い水音が響き、奥まで指を飲み込もうと腰が揺れる。






「 こうして欲しかったのだろうが 」


「…やっあぁん…っ…ぁぁっ…」






言葉と同時に、ルシウスの指が奥まで挿し入れられる。
中に易々と進入した指が、ぐちゅりと音を立てながら容赦無く掻き回す。
卑猥な水音に、洩れる嬌声。
羞恥で紅くなる全身に、走る快楽。
内腿を伝う蜜の熱さに、もっとと強請るように動く腰。
耳を愛撫するルシウスの冷たい唇にさえ、快楽が走り抜ける様な状況が、次から次へと押し寄せて。
中で折り曲げられた指が、重点的に一箇所を攻め上げた。






「 や…っぁ……ぁぁぁんっ…」






切ない声を上げ続ける を他所に、ルシウスは の上半身を抱き起こす。
ヒクヒクと収縮を繰り返す其処から指先を一気に抜き去ると、そのまま猛る自身をあてがって。
余りの大きさに、恐怖に身を引く は瞳を見開いてルシウスを仰ぎ見た。
その恐怖に涙した の表情を満足そうに一瞥したルシウスは、そのまま の細い腰を掴む。
先に訪れる快楽に歓喜する の其処は、だらしなくタラリと蜜をルシウスに零す。
ククッと喉奥で嘲ったルシウスは、そのまま の狭い膣内に楔を刺す。
の指先がキツクルシウスの背中に絡みついた瞬間、 はそのまま果てそうになる。
ぎゅっと締まる独特の感覚を堪能しながら、ルシウスは手の先から長い鎌を取り出した。






「 やっ…やぁっ……っ…やぁぁぁぁっ… 」






グイっと最奥まで突き上げてやれば、 が快楽をマトモに受けて果てる。
ヒクヒクと収縮を繰り返す内壁を楽しみながら、ルシウスは一気に鎌を振り下ろす。
ザシュッと乾いた空気に血の響き。
切り落とされた折れ掛けの翼は、静かに地面へと落ちた。
溢れ出す筈の血は、もう出ない。
落ちた真っ白な翼。
それを満足そうに見たルシウスは、そのまま腰を動かす。
片手で体重を支え、もう片方で の腰を支え、ルシウスは涙を溜める に口付けを落とす。






「 堕ちた天使の行き着く先なら…誰よりも私が知っている 」






聞いたその声は、遠ざかる意識の狭間で聞いた。






という一人の綺麗な天使が天界から姿を消したのは、瞬く間に噂となって広がった。
けれども、その消息を知るものは誰一人としていない。
天使は悪魔と契約を交す際、自分の羽を手折って差し出すのだという。
自らの手で翼を折った天使は、堕天の称号を受け、もう一方の翼は根元から漆黒に染め上げられる。
手折った方の真っ白い翼はやがて腐敗し、命を脅かす故となり。
堕天の称号を得た天使は、天界から追放され、行き着く先は死。
其れほどマデの代価を得てまでも手に入れたいものなど、この世の中には腐るほど有る。






、イイ子にしていたか? 」






声響く地下室。
ひっそりと静まり返る室内に、綺麗な乾いた声が木霊した。
ルシウスが視線を投げた先には、ゆっくりと顔を上げる片翼の天使。
ふわりと微笑むその天使は、ルシウスの元に走り寄る。
漆黒に染まったその翼を愛しそうに撫でたルシウスは、ゆっくりとその天使に口付けを落とした。








■ あとがき ■


17000hitリクエスト 紅屋 治瑠 様へ捧げますv
リクエスト内容は…

ルシウス殿下が死神で裏。

死神…だったんですが、どうにもこうにもネタが…(笑)
天使が悪魔と契約する時に翼を手折るという話は某Sさんからお聞きした実話です。
すみません、勝手に使ってしまいました…。
ヒロインが悪魔と契約してまで手に入れたかったのは一体何だったのでしょうか。
それでも、ルシウスをヒロインが拾ったのは間違いない事実です。
最近はエロを書いていないので、腕が非常に鈍って(爆)


…ルシウスになら…寵われても寧ろ、本望!!だと思いません(笑)?


紅屋さん、書き直し承りますので、お気軽にお申し付けくださいませv
こんな夢でも宜しければ進呈させてくださいませ。

それでは、リクエスト有難うございましたvv



++++ この作品は紅屋 治瑠様のみお持ち帰り可能です ++++






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