Summer's Aphrodite








「 …一体此れは何ですか… 」













今日もホグワーツには、彼の呆れたような声が響いていた。
暑さで更に痛くなる頭を抑えつつ、スネイプは真夏でも変わらぬその真っ黒いローブで地を這う様に歩く。
只広いホグワーツの中庭に突如出現した巨大な石の建物は、周囲の長さを測れないほどに大きい。
高さは訳1.7m程度あり、身長の高いスネイプが少し目線を上げてやれば満面の水を湛えた様が映り込む。
ゆらりゆらりと揺らめく水面に映る灼熱の太陽が、辺りをお構いなしに照らし出し。
きゃあきゃあと聞こえる耳障りな生徒たちの嬉しそうな声に混じって、聞こえるのは「プール」という聞きなれないマグルの言葉。
男子生徒も女子生徒も、マグル学の授業の一環、ということで特別に与えられた水着に着替え、有意義に水に浸かっている。
色取り取りの水着にはそれぞれ個性が出ており、彩色豊かで見ている者の瞳も喜ばせる。














がのぉ…日本のプールが恋しいと言ってワシに頼みに来たのじゃよ 」













真っ白い髭を片手で撫でながら、視線の先に居る橘を見た。
その笑顔にスネイプは絶句した。
友人に囲まれ、様々な寮の生徒たちでごった返すそのプールの周辺に、バスローブを着た彼女は居た。
グリフィンドール寮所属、
マグル出身で、ホグワーツでは非常に珍しい東洋の魔女を母親にもつ。
さらりと流れる様に美しい絹の如き髪に、漆黒の瞳。
整った顔立ちに、切れ長の睫。
ふわりと微笑むその微笑は、絶賛される程の可愛らしさを持ち。
見るもの全てを魅了するかの様なその大きな瞳と、相反する小さな顔に小柄な身体。
誰が見ても「美しい」と評されるほどの彼女は、スネイプと視線を違わせると微かに微笑んだ。


そう。


この少女、は、スネイプが唯一溺愛する愛しい恋人なのである。













「 いいですねぇ、プールは。
 わたしも生徒に混じって泳ぎたいものです。 」





「 遠慮は要らん、何なら我輩が投げ入れてくれようか。 」




「 やだなぁ、セブルス。
 相変わらず人が悪いよ 」













くつくつと笑いながら、リーマスのその視線の先には、が居た。
愛しい人を見守るようなその視線に少なからず腹が立つ。
「闇の魔術に対する防衛術」教授、リーマス・J・ルーピンは、スネイプの恋人、をいたく気に入っている。
それは、連日繰り広げられる自室へのお茶会への誘いを見ていれば、誰でもが見当付くところで。
ポケットに手を入れ、柔らかく微笑んだままのリーマスは、スネイプの忠告等右から左へ。
折角のチャンスとばかりに、を見つめている。
それを不快そうに仰ぎ見るスネイプだけれど、公共の授業の一環であるこのプール遊びに口を出す訳には行かない。
ポッターやマルフォイ共と楽しそうに喋りながら階段を登り、手すりにタオルを掛ける様を見れば、直にプールに入ることは誰でもが予想できた。
そうこうしている間に、は先に脱ぎ始めたミス グレンジャーに一歩遅れる形でバスローブを脱ぎ去った。













「 ………ッツ!!! 」





「 へぇ…、って小柄なのにスタイルいいんだねぇ… 」













スネイプが再び絶句する。
そして、リーマスやアルバス、ポッターやマルフォイまでが、まるで時間が止まってしまったかのように静止した。
ざわめいていたプールが一瞬で静まり返る。
真っ白いバスローブを脱ぎ去ったは、同じく雪の様に白いパイルの下地に、綺麗な華の絵の描かれた水着を着ていた。
多くの者が着ているのと同じ様にビキニタイプのその水着は、のスタイルの良さを鏡像の様に映し出す。
制服の上からでは決して判ることが無く、また、あどけないその表情からは想像も出来ないほどに整った体型。
すらりと伸びた手足に、綺麗に括れた細い腰、決して大きいとは言えないけれどふくよかな胸。
透けるように白い肌には傷一つ無く、日焼けの痕すら見当たらない。
小柄ながらにバランスの取れたそのスタイルは、同世代若しくはそれより上層学年の女子生徒の誰にも引けを取らない。
普段はヴェールに隠されているかの様なその抜群のプロポーションに、スネイプを初めとした面々は息を呑み、生徒達は賛美の声を次々に上げる。













「 あの可愛いがこんなにスタイルが良かったとはね… 」













感嘆の溜息とも取れる言葉をリーマスが発した。
が、それよりも先にスネイプは心の中でリーマスの言葉を言い放つ。
そして、外されることの無い熱い視線の中に居る愛しい恋人を見つめ続ける。
幾ら授業の一環とは言え、賛美の声が上がるほどに素晴らしいスタイルを持つの水着姿を晒させる事は許せない、と。
照れた様に微笑むが、ちらりとスネイプの表情を仰ぎ見た。
申し訳無い様な、そんな微笑み。
男子生徒に次々にプールの中へと誘いを受けるの、必死に断っている様がスネイプの怒りに火を放つ。
ぐらりとの身体が不意に揺れたのを見て、すかさず駆け寄るようにプールサイドへと飛び乗った。













「 ミス 、具合が悪いなら無理をしないことだ。
 プールに入るのは諦めたまえ 」






「 えっ…スネイプ先生っ… 」






「 何、礼には及ばん 」













呆気に取られる生徒を綺麗に無視したスネイプは、ポールに描け置いてあったのバスローブを引っ手繰るように取り去ると、無理やりに着せる。
そうしてそのまま、この状況では無意味ともいえる一人芝居を繰り広げ。
困惑するを横抱きに抱えると、皆に背を向けるようにしてプールを後に。
普段よりも早足で歩くスネイプの表情は何時に無く険しい。
怒っているようなその表情に、はバスローブの袖を握り締める。













「 そんなにプールが恋しいのならば、今から我輩が連れて行ってやる 」






「 え…?で、でも先生”誰がプールなぞ…!”って… 」





「 お前が一緒ならば、プールだろうが海だろうが
 底なし沼だろうが何処でも行ってやる 」





「 スネイプ先生…有難うっ!! 」





「 ば、馬鹿者!!抱き付くな! 」













嬉しそうに微笑んだは、そのままスネイプの首元に抱きついた。
公衆の面前であった事を一瞬で思い出したは、そのままスネイプの首から離れようと身体をよじる。
けれど、更に強く抱きしめたスネイプの腕によってそれは静止される。
疑問に思ったが首を傾げたように問うと、更に意外な答えが上から降ってくる。













「 …もう誰にも見られることは無いからそうして居給え 」













意外すぎるその言葉に、は三度微笑んで。
柔らかいその紅い唇をそっスネイプの頬に口付け、幸せそうに笑った。









誰も見ている筈の無かったその情景。
プール際には、全てを悟った様に柔らかい表情を浮かべたダンブルドア校長と、優し気な面持ちで微笑むリーマスの姿が有った。















■ あとがき ■


160000hitリクエストドリーム、 ミワコ 様へ捧げますv
リクエスト内容は…

 ・ヒロインは日本人で、グリフィンドールの3年生。
 ・相手はもちろんスネイプ教授で、季節は夏ぐらいですかね
 ・日本のプールが恋しいヒロインは、ダンブルドア校長にプールを造ってもらいます。
 ・ヒロインの水着姿にホグワーツの生徒&教師、特にルーピン先生はびっくり
 ・愛しい恋人のそんな姿を見せたくない教授のとった行動は…
 ・最後は砂糖たっぷりの甘さで
 
最後、無理やり台詞だけで甘々にしたのですが…砂糖たっぷりにはならなくて済みませんでした(汗)
書き直し、リクのし直し等承りますので、お気に召さない場合はお申し付け下さいませ。

久しぶりに書いた、「人目を大いに気にする教授」(笑)
きっとリーマスを隣に置いて、本当にプールに突き落とす勢いだったんでしょうねぇ…。
まぁ、書くのが私という時点で、その案は却下なのですが(爆)
個人的には、スネイプ教授にもプールに入って欲しかったですねぇ…
きっと素晴らしく細い腰が堪能できることでしょう…!!!!!!!

…にしても、浴衣といい、水着と言い、稀城の持っているもの参考で申し訳ないです(汗)
こんな作品になってしまいましたが、貰って頂けたら幸いです。





++++ この作品はミワコ 様のみお持ち帰り可能です ++++











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