学園天国
週末ともなれば、宿題という課題こそ出るけれど、生徒たちには一時の心の休息を齎す休日がやってくる。
最近は夏も終わりに近づき、気温も然程高くはない理由も有ってか、日曜日のお昼は各自自由に取る者が増えてきている。
勿論、大本の発案者はダンブルドア校長先生ではあるけれど、教師陣を初めとした誰もが否定の声を上げる者は居ない。
ホグワーツ内であれば何処でお昼を取っても構わない、と言う秋まで日曜昼限定のものではあるけれど、生徒は各々に有意義に過ごしていた。
ホグワーツの教室を借り、生徒同士でお昼を取るものも居れば、面倒な生徒は食堂での変わらぬ食事を行う。
皆がそれぞれ食堂に一旦は集まるものの、食堂に食事を持ったまま残る生徒は少なく、対外がホグワーツの構内でゆったりとした時間を満喫しながらとる。
現在グリフィンドール3年生である彼女、・も例外ではなかった。
急ぎ足で食堂に入った彼女は、列に混じって本日の昼食をバスケットで受け取ると、いそいそと列を抜け、食堂を後にしようとする。
決して走る訳ではないけれど、早足気味でバスケットを腕に携え、長い絹の如き黒髪を揺らめかせながら歩くその後姿を見つめる者は意外と多い。
日本人特有の漆黒の瞳に髪を携え、切れ長では有るけれど美麗なその瞳を持つ。
話す言葉は勿論イギリス英語で、日本人とは思えぬ程に綺麗な発音を零す。
そんなが、早足がちにグリフィンドール寮のテーブルを抜けようとした際、横から声を掛けられる。
「 、お昼僕たちと一緒にどう? 」
「 そうよ、たまには一緒にお昼を食べましょう!
まぁ…普段大食堂で食べていると言えばそうなんだけどね 」
の歩みを止めたのはグリフィンドール寮3年、友人であるハリーとハーマイオニーである。
普段、ハリー、ハーマイオニー、ロン、の4人で行動している故、食事の際のテーブルも一緒ではあるけれど、彼らがと日曜日に一緒に食事をしたことは今までに一度もない。
毎回誘ってみるも、は困った様な表情を浮かべて断ってしまう。
ハリーとハーマイオニーはその理由を突っ込んだところまで聞こうとした事が過去数回有るけれど、は口を噤んで一切其のことを公言しなかった。
今回も前回と同じように、次回も使う良い訳を言葉にした。
「 せっかく誘ってくれたのに、ごめんね。先約があるんだ 」
そう申し訳無さそうに言い、”また、明日ね”と微笑みながら告げたはそのままグリフィンドール寮テーブルを後にする。
困った様に微笑むを見ているのが辛いのか、ハリーとハーマイオニーも毎回素直に聞き入れ、この三人は三人だけで食事を行う。
食堂から出るの優美な後姿を見送った三人は、そのままグリフィンドール寮で食事をすべく、踵を返した。
それを見計らって、今度はスリザリンから三名の男子がバスケットを持ってに話しかける。
最も…、バスケットを持つのは両端の男だけでは有るが。
「 、今日だけは特別にお前と食事をしてやってもいい 」
その声にが振り返ると、スリザリンの制服に身を包んだ三人が、の真後ろに立っていた。
バスケットを持った二人の男は言葉を発することは無かったけれど、真ん中の銀糸の少年がを真っ直ぐに見据えている。
不敵な笑みを浮かべながら、命令口調でそう話した男は、のNoの返事を聞きたくないのか、が言葉を発する前にもう一言付け加えた。
それにはただ、苦笑するしかない。
「 昨日父上から美味しい紅茶が届いた。お前、好きだっただろう? 」
「 有難う、ドラコ。
でもごめんなさい、今日は約束があるの。また明日、授業でね 」
悲しそうにそう言ったにドラコは返す言葉が見つからない。
また、明日授業でね。
そう言ったは先程の悲しげな表情とは一新して、思わず微笑み返してしまいそうな程に可愛らしい微笑を浮かべて言葉を紡いだ。
約束したとも言える其の言葉は、所詮は授業で逢うのは必須事項だということが頭の片隅にあるのだけれど、それでも言葉を投げられた本人の頭には鐘の様に響いて止まない。
言われたのはドラコだけだというのに、隣のグラップ、ゴイルまでが香鬱とした表情を浮かべる。
それに気付いたドラコが、行くぞと言葉を吐き捨て、三人はスリザリン寮へと戻って行った。
少しばかり重いバスケットを左手に持ち替えたは、ホグワーツの構内に抜けるべく大広間からの長い廊下を只歩く。
左に曲がればもうじき…という頃合、またしてもの足止めをすべく声が横から聞こえてきた。
「 姫、もし宜しければ我々と昼食等如何でしょう? 」
「 フレッド、ジョージ…ごめんなさい、先約があるの。 」
良く似た同じ顔が丁寧な口調でそう呼びかける。
貴族の紳士が社交界の場で令嬢の娘を誘うかの如きその振る舞いに、は表情を和らげた。
二人同時に台詞を述べて、令嬢に敬意を表する男爵の様に跪いたフレッドとジョージは嬉々とした表情でを見つめる。
けれども、寸分の隙も入れずに断りの言葉を述べたに悲しそうに表情を歪めるも、断ったの表情のほうが切な気で。
もう一度会釈をしたフレッドとジョージは、笑顔で”姫、明日、食堂で”と述べるとそのまま中庭の方へとかけて行った。
その姿を見届けたは、ふぅ…と溜息を吐く。
これから最後の難関が待っている。
気合を入れ直すようにバスケットを抱えなおしたは、ホグワーツの講堂に掛かっている時計に瞳をやる。
もう既に10分も時間を経過している事実が伺え、早くしないと焼き立てのパンが冷めてしまう…と視線を前方に移した時、微笑む彼と瞳が合う。
「 やぁ、。今日もあの根暗男と一緒に食事かい? 」
「 ル、ルーピン先生… 」
「 厭味を言われながらの食事はも辛いだけだろう?
どうだい?わたしと一緒に美味しいケーキでも食べながら有意義な日曜の午後を過ごすというのは? 」
「 …いえ、あの… 」
相手が先生とあれば、流石のも言葉に詰まってしまう。
闇の魔術に対する防衛術教授、リーマス・J・ルーピンは腕組みをしながら軽く木に凭れ掛かってに柔らかな瞳を投げる。
何時もその顔情に湛えている柔らかい笑みは反則ともいえるべき最大の武器になる。
穏やかな表情を浮かべながら物凄い台詞を言うリーマスの表情は、笑っているようで笑っていない様子。
この木を越えて、湖のある畔までたどり着ければ其処がゴール地点。
入れ直した気合に更なる気合を織り交ぜて、はリーマスに言う。
「 今日はスネイプ教授とお昼を食べるので、申し訳有りませんが… 」
「 セブルス、ねぇ…。あんな男の何処がいいのか、わたしに教えて欲しい位だよ。
セブルスと過ごすよりも価値のある時間を提供してあげるよ、…決まりだね? 」
にっこり微笑んだリーマスを目の前に凍り付くしか術の無くなったは苦笑を浮かべる。
何か言い返さなくては、とが頭の中で試行錯誤をするも普段からあまり成績のいい方ではないは言葉に詰まる。
浮かんでは消え逝く文字を追っ掛けていくうちに、次第にリーマスのペースに乗せられ、攣られてしまう。
どうしようかと辺りを見回した矢先、リーマスの後ろから聞きなれた声がに助け舟を差し出す。
…否、正しくは最終勧告であろうが…。
「 それを決めるのは貴様では無くであろう、リーマス。
大人気無い行為は慎むべきではないかね 」
「 セブ…、スネイプ教授… 」
後ろから現れた声の主は、漆黒のローブに身を纏い、怪訝そうに眉間の皺を深く寄せたスネイプその人。
は思わずファーストネームを叫びそうになるも、慌てて言葉を噤んだ。
不機嫌そうにリーマスを一瞥しつつ、スネイプはの手から二人用のバスケットを受け取るとその背に手を当てリーマスの脇を通す。
それを面白そうな表情で見ているリーマスが、無償でを引渡す筈が無い。
とスネイプがリーマスの真横を通過しようとした瞬間、直ぐ真隣のスネイプにリーマスが反論の言葉を投げる。
「 大人気ないのは君じゃない、セブルス。
週に一日位わたしにを譲ってくれても罰は当たらないと思うよ 」
「 貴様に譲り与えるモノ等ある筈が無い。
貴様に渡すくらいならアルバスと三人で食したほうが未だマシだ。行くぞ、 」
手に負えない、と両手を傾げて見せたリーマスは二人の背を見送るとそのまま木の木陰で昼食を取る。
礼儀正しく一礼したの表情が余りにも嬉しそうで、リーマスはそのまま見送るしかなかった。
バスケットを広げたリーマスの傍に小鳥が舞い降り、リーマスの姿を見つけた女生徒が駆け寄ってくる中、リーマスは一人苦笑した。
何故にセブルスなのか、という疑問は、セブルスでなければ駄目なのだ、という確信に変わり。
けれども、他の者同様諦める様子の更々無いリーマスは、勝ち誇った笑みを見せたスネイプに負ける気等無いと言わんばかりの表情で見送る結果になった。
「 ねぇ、セブルス…校長先生と三人で食事ってなに? 」
「 気にすることは無い、例えばの話だ。
我輩はこの日曜の昼食をと二人で取る以外の策等考えぬ。 」
コポコポと注がれる紅茶が、芳しい香りを辺りに蔓延させる。
季節柄、アイスティーとなった紅茶を一口口に含みながら、昼食のパンを口にする。
笑みを零しながら懸命に話をするの話を聞いてやりながら、スネイプは空の雲を眺めた。
麗らかな夏の終わりのほんの一時。
出来ることならば、このままずっとセブルスと二人で食事がしたい、
そう言って微笑むの頭をそっと撫でてやる。
自然に絡み付くように柔らかい絹黒糸を指先で梳いてやりながら、スネイプは言う筈の無かった言葉を自然に零した。
「 将来まで待ち給え。
二人きりで食事等、厭と言うほど味遭わせてやる 」
嬉しそうに微笑んだを膝に抱きながら、スネイプはそのまま青空を見上げた。
何年先になるやも判らぬ未来では有るけれど、確かに訪れさせて見せるその未来に想いを馳せて。
何年後かに同じように二人日曜の午後に空を眺めて、こう言える様に。
− あの頃の約束はこの青空の下に叶った −と。
■ あとがき ■
140000hitリクエストドリーム、 天魔様へ捧げますv
リクエスト内容は…
・「逆ハー・スネイプ落ち(激甘)」
・もち、グリフィンドール生で!黒髪の女の子でvv
逆ハーってかなりの勢いで苦手です…(笑)!
今回も逆ハー…!?と自問自答してしまうくらいになってしまったんですが…許して貰えるでしょうか(汗)
書き直し、リクのし直し等承りますので、お気に召さない場合はお申し付け下さいませ。
今回は「ヒロインの日曜の隣の席をゲットせよ!」という名の下に題名が「学園天国」なのです(笑)
古い…古すぎるネタで申し訳ないのですが、ご勘弁を(苦笑)
本当はみんなで食事、ヒロインの取り合い、にしようと思ったのですが…
どうしても教授と二人きりで青空の下食事をさせたかったのです(笑)個人的願望ですみません。
リーマスが何故二人の関係を知っているのか、とかアルバスとの食事って!?とかいうツッコミはご勘弁(笑)
天魔様、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
++++ この作品は天魔 様のみお持ち帰り可能です ++++
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