「Dark Game」







周りは真っ暗な洞窟の中のような、黴臭さの充満した空間だった。

何故、こんなことになったのか…
もう一回、整理して考えてみようではないか。







今日は不運にも当直の日で、我輩は冷え切った夜のホグワーツ内の巡回をしていた。
長い廊下を渡って、あの角を曲がれば、巡回は終わる。
何事もなく、部屋に帰って研究が出来る…と安堵の溜息を付きながら、角を曲がった瞬間に、それは脱帽の溜息へと変わることとなった。






「 …ミス 
 そこで何をしている」



「ス…スネイプ先生…!」





角を曲がった先に居たのは女子生徒。
それも、面倒なことに、我輩に何かと文句や言いがかりをつけるグリフィンドールの一年生。
成績優秀な癖に、我輩が気に入らないのか、授業では何時も決まって何かをやらかす。
人を覚える、ということを苦手とする我輩が、この女子生徒の顔と名前を覚えるのに一日掛からなかったようにも思う。


我輩に覚えられた栄えある女子生徒である、が、角を曲がった先で何かを探るように座り込んでいた。
暗がりの中で、手先だけを使って。






「 もう一度聞く。
 そこで何をしている」






早く咎めて、減点して、寮に戻して研究に専念したいが為に、少々苛立ちが走る。
つかつかと歩み寄って、そう告げると、は立ち上がってローブの埃を払う。






「 昼間、ネックレスをこの辺で落としたんで、それを探していたんです」




「 ならば明日にしたまえ。
 就寝時間はとうに過ぎている。
 減点される前に寮へ戻りたまえ…
 …ミス !!」






づらづらと小言を並べながら説教じみたことを告げると、は面白く無さそうに我輩を一瞥すると、にっこり微笑んで、先へ進んでいく。
我輩が来た方向とは真逆のその先に、グリフィンドールはおろか、生徒寮すらない。
人の話を聞いていないのか、と問えば、
大事なものだから探すんです、と手をひらひら振りながら返してくる始末。




こんな場面、誰かに見つかったら、咎められるのは間違いなく我輩だ。







「戻れと言ってるだろう!!」






歩み寄って、腕を掴んで振り向かせる。
ビックリしたような表情で振り返ったに、我輩も驚きはしたが、直にそれは理解出来た。




「なんだ、此処にあったv」






我輩が振り向かせた方向に、丁度月の光が差し込んで、角の一角を淡く照らし出していた。
其処に輝くのは、紅い石の輝くシルバーの細工のネックレス。
どうやらこれが”探し物”らしい。






「 もう帰りますから。
 ご迷惑をお掛けしました」






そう言って、ぺこりと頭を下げる
その礼儀正しさに免じて、寮まで送ってやろうか…と歩きながら考えた瞬間、我輩は後悔する事となった。






「 あれ?
 何コレ?」






不思議そうに問うに、何事かと振り返ってみれば、廊下の壁に光るアヤシイ四角い箱。
廊下の壁よりも多少飛びてた形状のそれを、迷わずはぐいっと壁に向って押し始めた。



何か、厭な…厭過ぎる予感が脳裏を掠めた。
そしてその瞬間、予想は的中してくれた。
全くめでたくない事に。





「きゃぁぁぁぁぁ!!!」





ぐらりと床が揺れて、我輩との居た廊下がぐにゃりと左右に割れる。
物凄い速さで二つに割れた床になすすべもなく、我輩とは二人揃って仲良く底へ落下した。
余り深くは無いらしく、落ちる、というよりは、降りるという表現が正しいであろう。
すとん、と地面に降り立つと、其処は我輩がホグワーツに入って以来、一度も見たことのない景色が広がっていた。






「…スネイプ先生…此処は何処ですか??」





疑問符を一杯つけて聞いてくるに、我輩は溜息を漏らさずにはいられない。
一体誰の所為でこうなったと思っているのか。
咎めようにも、早くこの場所から抜け出そうとする本能のほうが勝って、言葉が出ない。







ふつふつと考え事をしていると、何かが我輩のローブを掴む。
何事かと振り返ってみれば、がしっかりとその裾を握って、きょろきょろと周りを見渡していた。








「 …ミス 
 何をしているのかね」






「 いえ…あの…
 私、暗闇苦手なんです」





「 だったら魔法を使えばいいだろう。
 この程度の魔法、幼児でも使えるがね。」





厭味をふんだんに入れてやってから、
”ルーモス、光よ”
そう告げる。
一瞬だけ放った閃光は、同じ様に一瞬で目の前から消え去ると、また元のように静寂しきった暗闇が広がる。






「…対魔空間か…面白い」






自己への挑戦とばかりに、自嘲気味に笑ったスネイプはつかつかと歩みを進めた。
周りは、暗闇ではあっても、暫くすれば人間とは不思議なもので、目がその環境に適応し始める。
薄らと見え始めた空間は、どうやら一方通行のようで、遠くの方にまで小さな道が続いているのが見て取れる。






「…スネイプ先生、一つ、素晴らしい提案が…」






「何かね、ミス 






我輩は止まってやる事等考えない。
唯でさえ、時間を無駄に費やしたというのだ。
これ以上、立ち止まって、の下らな過ぎる話に付き合っている暇など無い。
話したいことが有るならば、そのまま話せ。






「………手、繋ぎませんか?」







「…頭でも、打ったのかね」






この台詞に、我輩の思考は止まる。
手を繋ぎたい、だと?
この状況で、この我輩と?
橘の眼差しが真剣であれば真剣な程、薄気味悪い。







「 い…いえ、ほら…その…
 先生も私にローブをつかまれたままだと困るし…生地伸びるし…
 でも、私は恐いし……だから……」





早足で歩く我輩に必死で着いて来ながら、そう告げる。
要するに、恐いわけだな、我輩と逸れる事とこの暗闇空間が。






「 …さっさと離したまえ」






なんと切り出したらよいか判らずに、我輩は手を差し出してそう告げた。
刹那、嬉しそうに笑ったが、ぎゅっと我輩の手を握る。
…意外と温かい。
誰かと手を繋ぐなど…どのくらい忘れていた事だっただろうか。






「スネイプ先生って、意外と優しいんですね」





「意外とは失敬だな。」






「 だって、普段贔屓とか厭味とかばっかり言うから…
 ………
 先生、コレなんですかね?」






会話の途中でそう言ったの言葉に厭な予感を感じながら振り返れば、が何かを押そうとしているのが見て取れる。
マズイ…
きっと、また何かが起こる…
そんな予感は的中するものだ。






「寄せ、押すな!!」






「え?」







”ぷちっ”
と音が我輩の頭の中で木霊する。
が振り替えリ気味に我輩を見た瞬間……






!!!!
 いいか、金輪際、この空間から出るまでは一切何にも触れるな!
 今回は何も起こらなかったから良かったものの……」






堪忍袋の緒が音を立ててブ千切れそうな我輩は叱咤する。
その会話の途中で、ゴゴゴゴゴゴ…と奇妙な音がした。







「 せ、先生!!!
 でっかい岩が走ってきますよ!!」






壮絶な音と共にあわられたのは言葉には表せ無い程の巨大な石。
凄まじいほどの勢いで坂を転がるように此方へ向ってくる。
しかも、ご丁寧な事に空間のサイズと縦幅が一緒で、ガリガリと左右の壁を削っていた。






…今日は厄日か?







「潰されたくなければ捕まってる事だ」






抱えたくなる頭を何とかこらえて、未だボケボケしてるを抱えあげると、走り出す。
トロイと一緒に走ったのでは間に合わない。
二人仲良くヒモノになるなど御免だ。
我輩には大事な研究が残っている。






「先生、早いですね〜」





のんきなものである。
抱えられた瞬間は可愛らしく小さく叫び声を上げもしたが、今となっては我輩の首にしがみ付いている小猿のよう。
することも無くて暇なのか、後ろを向いて迫り来る岩を眺めている。






「 前方50m!!
 大岩は更にスピードをあげて迫ってきます!
 走るスネイプ先生、追い駆ける岩!!
 それはまるで鬼から逃げる子どものよう…
 あ、鬼は先生か…」







「 ナレーションなど要らぬ!!大人しくしていろ!」






「 つまんな〜い…」







「…(怒)」







もうどのくらい走っただろうか。
流石に、小娘とはいえ、人を抱えて走る事にも限界というものがある。
腕が痺れ、息も切れ切れになってきた。
それでも、先はまだまだ長い。
…もう、駄目かもしれぬ。
そんな考えが頭を過ぎり始めた。







「 あv
 綺麗なお花みーっけvvv」






「…よせ!!」






ぐいっと手を伸ばしたを制止しようにももうとき既に遅い。
ぶちっと花を手折ったは嬉しそうに微笑む。
その瞬間。





再び地面が割れた。







「きゃぁぁぁぁぁっ!!」






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「 うっそ〜?
 此処、さっきの廊下じゃん!!」






落ちた先は、先ほど我輩がを見つけた場所。
何事も無かったかのように静まり返ったその場所は、まるで今までのことが嘘のようで。
けれど、が握り締めている花は相変わらず存在したままで。
つまりは、夢ではないという事だ。







「 …ミス、今回のこの件…
 なんとしてでもグリフィンドールから点を引かねばなるまい…
 そうだな…、ひゃく……」







「 何をしているのです?
 ミスタースネイプ」





突然後ろで声がした。
酷く通った声は、顔を見なくても誰のものか判る。
再度我輩は頭を抱えた。





「 マクゴナガル先生v
 道に迷ってしまって…
 スネイプ先生に聞こうと思ったんですけど、教えてくれないんです」






橘はそう言ってミス マクゴナガルの後ろにそそくさと隠れる。
隠れた後で、我輩に向って”べ〜”とやって見せた。
覚えていたまえ、ミス 






「…では、私が寮まで案内しましょう」






我輩を一瞥して、二人は歩き出す。
一体、何だったというのだ。
あの空間にせよ、今回のトラップだらけの空間にせよ。
大体ホグワーツには謎が多すぎる!
考えたら考えただけ、苛立ちが増す。
しかし、こうして考えている時間も勿体無い。







「…バカバカしい」





くるりと踵を返すと自室へ向う。
思い返せば、何故我輩は『手を繋ぎたい』というの提案に賛同したのか。
考える事が下らな過ぎる。
こう云うことは、早く忘れるに限る。







それでも…、
今でも握っていた右手が酷く温かい感じがした。







この日を境に、また少し、我輩ととの距離が短くなる。










■ あとがき ■



12000HITのリク権を貰って下さったみさきち様へ捧げますv
リクエスト内容は…

・スネイプと主人公が暗闇のホグワーツを彷徨う


…甘さの欠片も無いどころか…微妙にホグワーツ内じゃない気も…
申し訳ありません(泣)気に入らなかったり、イメージと違ってたら教えて下さいませ。
書き直させて頂きます故。

あぁぁぁぁぁぁぁ(大泣
すみません…これ以上は無理でした(汗
教授ヘタレだし、付き合ってないし、片思いかどうかも判ってないし!!
微妙すぎるドリーム、申し訳無いです。





++++ このドリームはみさきち様のみお持ち帰り可能です ++++



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