Last Rain







「 最後の一雨が降ると、梅雨が開けて本格的な夏が来るんです。 」










ニコリと微笑んだが、口に含んだ紅茶をコクンと細い音を漏らして飲み落とした。
窓際の椅子に凭れ掛かり、しとどに降り注ぐ雨を見ては、懐かしそうにそう漏らす。
此処はイギリス、ホグワーツ。
梅雨等という概念が存在しない。
の生まれた日本という国では、この時期に、湿度を伴った雨が長期間に渡って降り注ぐのだと言う。
偶然にも降った雨を懐かしそうに眺めていたと思ったら、寂しそうに瞳を和らげて落ち行くだけの雨粒を見つめる。
豪雨とは決して言えないほど弱弱しい音を立てて降る雨は、の言う「梅雨」とは大分かけ離れていて。










「 懐かしいか、郷里が。 」





「 そんなこと… 」










無い、とでも言うつもりだったのだろう。
けれどその先の言葉を聞く事は出来ずにいた。
緩やかなスロープに沿って緩やかに落ちる雨粒をは、酷く懐かし気に眺め、小さな溜息を漏らす。
トントン、と軽やかなリズムを奏でて木枠に落ちるその雨が、いっそう強まる。










「 帰っても、いいのだがな 」










そう言えば、雨に見惚れていたが悲しそうな表情のまま、此方を仰ぎ見た。
捨てられた子犬の様な、そんな悲しそうな瞳。
降り頻る雨に降れているかの様な濡れた瞳は涙の所為か。
強まるだけの雨音に、耳を傾けながら、静かな空気がその場に立ち込めて。
机の上に置いたままになっている葉巻から、一筋の煙だけが静かに立ち上り。
僅かな距離のあると私の間を埋めるように、私はゆっくりと歩き出す。










「 何故、その様な顔をする 」





「 だって、それって… 」










言わせない。
が思考した悲しい結末の解答等、聞く気すらも無い。
言葉を紡ぎかけたその桜色の唇を指先でそっとなぞり、上を向かせる。
さらりと肩を滑る髪が、
濡れた瞳が、
淡く色づいた頬が、
酷く愛しかった。










「 無論、私も同行するが。 」





「 え?でも、ルシウス…マグルが… 」





の言う、”梅雨”とやらを一度見てみたくてな 」










鋭利な淡蒼の瞳を柔らかく緩めて、私はに口付けた。
引き掛けた腰を引き戻す様に強く抱いて。
音と激しさを増した雨が、静かに外で効果音を奏でていた。










もうじき、最後の一雨が降る。
そうしたら、本格的な夏の到来。
梅雨が明けたばかりの空は、本当に綺麗なんですよ。




そんな言葉に騙されて、私がの郷里に降り立った。
梅雨の時期にの郷里など、二度とは行かぬと心に誓った事は、言うまでも無く。












■ あとがき ■


111111hitリクエスト ゆりえ 様へ捧げますv
リクエスト内容は…

 ・ルシウス夢
 
何も指定が無かったので、此方で勝手に書かせて頂きました(笑)
こんな夢しかかけなくて申し訳ないのですが、返品・書き直し大歓迎ですので、お気軽にお申し付け下さいませ。

梅雨が終わる間際には、「最後の一雨が降る」とよく耳にします。
…が、梅雨の時期はかなりの量と頻度で雨が降るので、どれが「最後の一雨」なのかが判りません(笑)
そして、イギリスに梅雨があるのか無いのかも判りません(汗)←馬鹿。
窓からしきりに流れる雨を見ながら思いついた突発夢なので…勘弁してやってくださいませ。




++++ この作品は ゆりえ 様 のみお持ち帰り可能です ++++











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