JEALOUS







「……」





我輩は”またか…”と深い溜息をついた。
廊下を曲がった先に向けられた視線の先は二人の生徒の姿。
一方は男でスリザリン生のドラコ・マルフォイ。
もう片方は我輩の愛しい恋人である、グリフィンドール生の
二人は魔法薬学の教科書を片手に持ち、廊下で立ち話をしていた。


我輩がこの光景を見るのは、そう珍しい事でもなくなった。
最初こそ、”何故スリザリン生とグリフィンドール生である が…”と思いはしたが、それが魔法薬学の授業後の当たり前の光景へと変貌すれば、我輩ももはや溜息しか出ない。
今日もか…、と溜息をつきつつ、部屋へ帰ろうとした矢先、二人の傍を通ってを連れ帰らなければならない出来事が目の前で起こる。

こともあろうにマルフォイが…、 の頭を優しく撫でたのだ。





「…あ、スネイプ先生。 僕、シーカーになったんですよ!」





傍を通った我輩にそう、マルフォイが言う。
我輩の気配に気付いたのか、 が嬉しそうに笑う。
それを見ることは、非常に嬉しい事ではあるが…、マルフォイと一緒に居るのはどうも許せない。
しかも、頭を撫でたのだ。
我輩の の身体に触れたのだ。
腸が煮えくり返らない訳が無い。





「そうか。」





高低の変化も何も無い声で短くそう言うと、マルフォイは”明日ある、レイブンクローとの試合、勝ってみせます!”と高らかに言い放つ。
我輩にとって、そんなことはどうでも良い。
早く消えてくれさえすればよいのだ、我輩の眼下から。





「 ところで、ミス 
 先程の課題にミスがあった。 減点されたくなければ、今すぐ書き直しにきたまえ」





そう告げると、我輩はくるりと踵を返して部屋へ向う。
これでマルフォイと は離れ、ようやく我輩の元に る。
そう思ったら、気持ち早足になる。

それでも…、皮肉にも会話が聞こえてしまった。





、明日の試合見に来いよ」
「 えぇ、勿論! 頑張ってね、ドラコ」





その日の気分は最悪だった事は言うまでも無い。





*     *     *





”マルフォイとはどんな関係かね”

そう聞きたかったことは今まで何度と無くあった。
しかし、 を疑っているわけでは無いだけに、そう直接的に聞くことなどできる筈も無く…それでも、気になって仕方が無い。
もしかしたら、我輩の知らないところで…例えばそう夜中、二人で逢っているのではないのだろうか?
大して相手もしない我輩と一緒に居るよりは、マルフォイと一緒に居た方が は楽しいのではないか?
一回りも歳の離れた我輩よりも、同じ歳のマルフォイのほうが何かと都合がいい事もある。





「…バカバカしい」

「…先生?」





声を掛けられて部屋に が居る事をハッと思い出す。
心配そうに首をかしげて我輩を見る を見て、なんだか情け無いような気持ちにすらなる。





「何でもない」





苦笑してのほうをみると、は安心したようにレポート書きを再開する。
この我輩が、たかが13の子供に嫉妬するなど。
まこと、笑える話だ。





*     *     *





翌日、クィディッチの会場に は居た。
我輩が のほうをみれば、視線に気付いた が我輩に向って手を振る。
スリザリン対レイブンクロー。
試合は両者無得点のままで、接戦している。
スリザリンのシーカーとレイブンクローのシーカー同士の争いになる事は誰が見ても判っていた。
早く取って欲しい、そう願っていたのは我輩も同じだ。
がマルフォイを応援するのは腹立たしい。
がマルフォイを見つめるのは酷く憤慨だ。
がマルフォイを応援するなど…!

いっそのこと…負けてしまえばいいのだ、マルフォイなど。
そう思った瞬間、試合終了のホイッスルが晴れた大空に木霊した。



黄色い女性との悲鳴と歓喜に溢れた声が、スリザリンの方から聞こえる。
スニッチを掴み、誇らしげに片手を挙げているマルフォイが見つめているのは、
箒に跨って、スニッチを持ったそのままで、マルフォイは の処へ行き、なにやら話をしている。
嬉しそうに、楽しそうに笑う
あの笑顔は我輩の為にだけあるのだと、思っているのはただの自惚れか。
誰にも見せたくない、触れさせたくない、接点を持たせたくない。
そう思うのはただのエゴなのだろうか。
我輩の前でだけ…笑って欲しいと願う事は…嘲られることだというのだろうか。





「……」





きっとマルフォイは我輩に勝利の報告をしに来るであろう。
と楽しそうに話した後で。
マルフォイの顔など見たくも無くて、我輩はそのまま会場を後にした。
案の定、後ろで我輩を呼ぶマルフォイの声がしたが、この際どうでもよい。
聞こえない振りとやらをしてやろうではないか。
この感情が”嫉妬”ならば尚の事。
今、マルフォイと話したら…笑顔で禁忌の呪文を唱えるくらいなのだから。





*     *     *





「先生、私が手を振ったのに、気付いてくれましたか?」





夕食後、 が我輩に問う。
は我輩に一言も、”明日の試合を見に行く”とは言わなかった。
だから、会場に居た自分を見てびっくりしたでしょう?と嬉しそうに笑う。





「スリザリン、勝ってくれて良かった。」





の発した言葉に我輩の眉と口角が微かに揺らぐ。
それは、マルフォイがシーカーを務めたからか?
マルフォイの初勝利の瞬間に立ち会えたからか?
マルフォイが勝ったことが…そんなに嬉しい事なのか。





「…何故そう思う。
 それに、普段ならスリザリンの試合など見に来ないが… 何故今日は居た?」





出来るだけ、優しく言うように配慮した。
に怒っても仕方ない。
悪いのはマルフォイであって、 ではない。
しかし…、 がマルフォイの為に試合に来ていたのだとしたら、それは許せないものがある。
実際、それ以外の理由で、 が急にスリザリンの試合を見に来る訳などあっただろうか。
マルフォイとの約束を守る為ではないのか?
やはり、マルフォイがいいといいうのか。





「え?嬉しいに決まってるじゃないですか。
 だって、スネイプ先生が寮督を務める寮の勝利ですよ?
 一緒に喜びたいですよ!」





”勿論、対グリフィンドールの場合は別ですが”





笑ってそう言う
我輩の寮の勝利だから喜んだというのか?
じゃあ、急に試合を見に来たのはどうなる?
やはり、マルフォイと約束したからであろう?





「今日の先生恰好良かったですよ。 審判も似合うじゃないですか! その為に見に行ったんですから。」





はにっこり笑ってそう言う。
つまりは…全部我輩のためで?





「お前は、我輩があそこに居たから見に来たというのか?」

「当たり前じゃないですか。 他に何の理由があるんです?」





どうやら自分がバカバカしく思えてきた。
はマルフォイのためなどではなく、我輩を見に試合に来ていたのだ。
なんという勘違いか。
余りの自分の考えの稚拙さに、また腹がたつ。

事実、我輩が審判を務めない日や我輩が試合を見に行かない日のスリザリンの試合を は見に来ない。
何度マルフォイに誘われても、だ。
マルフォイなんぞに嫉妬していた自分が滑稽に思えて。


気づいた事は、二つある。
たかが13の子供に嫉妬するほど、我輩は を愛しているということ。
そしてもう一つは、マルフォイが を好きだということ。


まぁ、誰であろうと、我輩に叶うはずなど永遠に無いから問題等無いが。







後書き

10000HITのリク権を貰って下さった紅屋治瑠様へ捧げますv
リクエスト内容は…

・「相手はスネイプ教授で、ドラコに嫉妬!」


…嫉妬?物凄い微妙のような気がしてなりません(汗
申し訳ありません(泣)気に入らなかったり、イメージと違ってたら教えて下さいませ。
書き直させて頂きます故。

紅屋さん、こんなドリームでも貰って下さいますでしょうか(汗
本当はもっと違う展開にしたかったんですが…駄目です、ドラコが限界でした(汗
ドラコをもっと上手く書ける様になったら、三角関係とかやってみたいですね(オイ
メインテーマは「教授嫉妬」だったんですが、いつの間にか「教授誤解」になっているような…。
教授に嫉妬されたいですよね〜v
でも、ヤリすぎたら本当に禁忌の呪文じゃないですが…なにかしらの手段には出そうですよね(苦笑
それもまた、一興…!でしょうか。


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