君がくれたもの







「ヤバイ、寝坊した!!」





日曜日、朝も早い時間から、彼女はけたたましく鳴り響く3個目の目覚し時計でようやく目を覚ます。
午前7時。
本来ならば日曜日な為に、寝ていてもいい時間なのだが、今日は特別な用事がある。





「あ”〜〜〜、寝癖が凄いよぉ〜〜」





とりあえず、酷い寝癖の髪は後でシャワーを浴びるからいいとして…、と は自分に言い聞かせながらエプロンを腰に巻き、てきぱきと冷蔵庫から食材を出す。


ことの発端は昨日に遡る。
昨日、降りしきる雨の中 が大事そうに一枚の手紙を咥えて来た。
薄い紫色の紫陽花のような綺麗な模様の封筒の宛名には、酷く綺麗な筆記体で『Dearest 
とイギリス英語で書かれている。
差出人の名前は一切表記されていないが、 には、それが誰からの手紙かは一目で判る。
大好きな、大好きな人からの手紙。
逢える日の前日にはこうして愛しい人が手紙を送ってくれる。
毎回薄紫の封筒で…顔に似た綺麗な字で、丁寧な文体で送られてくる手紙。
それを受け取るのが楽しみで。
なにより彼に会えるのが嬉しくて。





「ヤバイ!こんな時間だ〜! 急がなきゃ!!」





程なくして、 は大きな籐で造られたバスケットを抱えて、ローブを羽織ると、少々行儀が悪いが窓から箒を呼び寄せて飛び移るように跨ると、一気に上昇 する。
ここで誰かに見つかったりしたら、寮に引き戻されてしまう。
折角の愛しい人との逢瀬を邪魔される訳にはいかない。





「ルシウス、怒ってるかな〜?」





は速度をあげる。
抱えたバスケットの中のものが冷めないように、一分でも早く彼の場所に届くように。
待ち合わせの時間よりも15分以上は早く来て、先に を待ってる律儀なルシウス。
どんなに急いで仕度をしても、朝に弱い は時間ギリギリになってルシウスの元に到着し、”ごめんなさい”と言うと、何時も柔らかく笑って、頭を撫でてくれる。
それでも、今回はそうも行かないかもしれない。
なにせ、ホグワーツを出た時間が…
待ち合わせ時刻だったのだから。





「ルシウス〜!! ごめんなさーい!!」





小高い丘の山頂の木陰に座って本を読んでいるルシウスを発見すると、 は空から彼を呼んだ。
その声に気付いたルシウスは本を閉じ、それをしまうと立ち上がって が降りてくるのを待つ。





「大丈夫か? 何かあったのか?」





30分近く遅れてようやく現れた恋人に心配そうにルシウスは問う。
は箒を木に立てかけて、バスケットを下に下ろしながら、ふるふると首を横に振る。
遅れてしまった言訳が”寝坊”だなんていえる筈もなく、言って怒られるのなら言わずに怒られたほうがマシ、と口を紡ぐ。
怒っているであろう、ルシウスの顔が直視できなくて、俯いてしまう。





「何も無いなら、それでいい。
 それより、先ほどからいい匂いが漂ってて気になって仕方ない」





ルシウスは無表情ではあったが、そう言って の頭を撫でてやる。
それはどこか、安心したような笑を含んでいて。





「あ、私お弁当作ったんです! 一緒に食べましょう!」





優しいルシウスの言葉に、 は嬉しくなって顔を上げる。
そしてにっこり笑うと、置いてあったバスケットの中から敷物を取り出して広げ、そこにルシウスを座らせると、朝必死で作ったお弁当を広げた。
重箱の数にして三段あるお弁当は、男二人が食べるのにも十分すぎる量で、それぞれ、『様々な味のおにぎり』『ルシウスの好きなおかず』『今回チャレンジし たおかず』の三段になっている。
嬉しそうに一品ずつ説明している の話に耳を傾け、 は気付かなかったが…ルシウスは幸せそうに微笑んだ。





「ちゃんとお箸使えるようになりました?」

「あぁ。
  の国の料理を食べる上では欠かすことが出来ないからな」





ルシウスは、器用に箸を持ち、薄黄色の厚焼き玉子をいとも容易く掴んでは、口へ運ぶ。
それを見て”さっすがマルフォイ家…”と感心しながら、 も箸をのばす。
ルシウスは、見たことが無いような食べ物でも、 に”これは何か?”と聞くことは無い。
食べた事の無いものでも、無言のまま、口へ運んでは、次を選んでを繰り返す。
淡々と箸を進めるルシウスに苦笑しながらも、 は時折空になりかけるルシウスのコップにお茶を注ぎ、ルシウスの食べた種類のものから食べ始める。





「…本当、 の料理はおいしいな」





おにぎりを食べつつ、ルシウスは本音からそう言う。
自分の息子と同い年の少女が、自分の為に毎回お弁当を作ってきてくれる。
それは毎回同じ内容のものばかりではなく、毎回要所要所に工夫が凝らしてあって、決して同じ味に飽きる事が無い。
しかも、 はルシウスが好んで食べるものを把握し、それをよりルシウスの好みに近づけてくる。
毎回、それを味わうのが楽しみで、3段あるお弁当は何時も空になって の部屋に帰ることとなる。





「本当? ルシウスに喜んでもらえて嬉しい!」





は酷く嬉しそうに笑う。
”自分は料理を誉めたのだが…”とルシウスは自問するが、それは考えるまでも無く、簡単な結果が導き出されると知った。





、お前が私に教えてくれたものはたくさんある」





急に箸を止め、いつになく真剣な表情でそういったルシウスに はビックリして箸で持っていたたこさんウインナ―を思わず落としそうになる。





「え…?」





何?とも素直に聞けずに はたこさんウインナ―を箸で掴んだまま固まる。
その姿に、ルシウスは笑みを漏らして、”教えてやらん”と言うとそのままお弁当の残りに手をつける。





「気になる〜!!」





叫んだ を無視して、ルシウスは自分の為に早起きして作ってくれた のお弁当を堪能する。
君が教えてくれたこと。
大好きな人が笑ってくれるように自分が努力すること。
大好きな人を喜ばせるために、自分を犠牲にさえすること。

君がくれたもの。
安らぎと憩いと癒しと安心感。

そして、大きな幸せ。


君を愛して初めて知った、愛しい人が笑ってくれることがどれだけ嬉しいか。
君が傍で笑ってくれることが、どんなに幸せなことか。
君が幸せでいることが、私に幸せをもたらす。
君が幸せであって欲しいと願わずにはいられない。
私は君を愛して初めて知った。


遅くは無いだろう?
これからも君だけを愛していくのだから。







後書き

10000HITのリク権を貰って下さった凛様へ捧げますv
リクエスト内容は…

・「相手はルシウスで、主人公はドラコと同い年」


ただ、二人で弁当食べてるだけのような気が…
申し訳ありません(泣)気に入らなかったり、イメージと違ってたら教えて下さいませ。
書き直させて頂きます故。

凛さん、こんなドリームでも貰って下さいますでしょうか(汗
殿下のイメージとか違ったら、言って下さいね??速攻で直します!
せっかく殿下リクを頂いたので、『ルシウス殿下で甘々!!』をやりたかったんですが、どうやら失敗に終わったみたいです(苦笑
精進します、絶対に素敵なルシウスドリームが書ける様になりたいと、抱負新たに頑張りマス。
悲恋じゃなくて、ワッフルに少しだけ蜂蜜垂らしたようなそんなドリが書ける様に頑張りますv
 

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