Destiny







出逢った瞬間、恋に落ちた。
なんて言葉で表せば酷く馬鹿馬鹿しいものに過ぎないけれど、実際存在するのだから仕方ない。
瞳を交わした瞬間に、心の中に芽生える恋愛感情なる情。
一瞬の紛い事の様なその刹那的感情に身を委ねてみるつもりも、沈めてみる覚悟も無かったけれど。
けれど、出逢った瞬間、恋をした。
そして、忘れられない人に変わった。










「 あっ…すみません、スネイプ教授 」










肩に感じる鈍痛と共に、聞き覚えの無い透明な悲鳴声。
怪訝そうに眉を寄せ、減点してやろうかと少女の瞳を直視する。
驚いたように身を竦めた少女が、慌てた素振りで詫びの言葉を口にした。
ばらばらと乱雑に落ちる絹の如き髪を揺らし、丁寧にお辞儀までした少女は震えた様に我輩を見据えた。
口から吐き出される”減点”の単語を待つかの様に。










「 以後、気を付け給え 」






「 は、はい。失礼します。 」










深々と礼をし、我輩の横を通り過ぎようと少女は歩み出る。
元々細い裏地のような小路を通っている所為か、二人いっぺんにすれ違う事は困難を極める。
唯でさえ薄暗いその場所は、用事がなければ決して出向くことなど無い場所だと、ホグワーツ内でも有名を記する場所で。
すっと避けた我輩の行動に、少女は焦ったのだろう。
早くこの場所を退けて、我輩を先に行かせなければ、という感情が競りあがってでも居たのだろうか。
足早に駆け出した少女は、飛び出たような形状の石畳の間に綺麗に足を掬われた。










「 きゃっ…っ… 」










小さな悲鳴と共に、小さな身体が揺らめく。
スローモーションの様にゆっくりと前方に倒れ込む少女は、塞がっている両手を有効に使うことは出来ない。
このまま行けば、誰が見ても石畳に頭を打ち付ける事が予想出来る。
瞬間、自然と身体が動いた。










「 何をやっているのかね。 」




「 す、すみません!! 」




「 足元を良く見たまえ 」










倒れ込む少女の腕を掴み上げようと腕を伸ばしたけれど、それでは間に合わなかった。
手に持って居た空薬瓶を地放り去ると、一歩前へ歩み出て少女の身体をその腕に抱きとめる。
ガシャン、という空瓶が砕ける音が、空気の篭った地下に響く。
乾いた石畳に、無数に散らばる破片が痛々しげな表情を見せた。
驚いたような表情を先に浮かべたのは少女の方で、狼狽するように柔らかな瞳を右往左往に寄せている。










「 すみません、私の所為ですね、今片付けます!! 」





「 止せ、触るなっ… 」










頬を赤く染めた少女は、我輩の手中から逃げ出すようにするりとその場から逃げ出すと、腰を落として割れたガラスの破片に手を伸ばす。
決して形状を留めている訳ではないガラス達は、様々な表情を見せながら石畳の上に散らばっている。
一つ一つを丁寧に掬う様に集める少女を止めようと、声を投げた時。
少女は酷く小さな欠片で、その繊細で白い指先を紅に染めた。










少女の声にならない小さな叫び。
痛みを堪えるように眉を寄せて、溢れ出す紅を見つめるその瞳。
じわりじわりと湧き上るその紅は、次第に少女の指全体を侵食し始めた。
留まる所を知らずに溢れ出すその紅に、そっと我輩は口付けた。
そう、しなければならなかったかの様に、極自然と体がそう動いていた。










「 スネイプ教授…っ… 」





「 大人しくして居給え 」










労わるように舌先で柔らかく包み込んで、少女の細い指を食む。
ぴくりと震える幼い指が、我輩の言葉に素直に従い。
独特の味を含む紅が、我輩の咥内に広がり始めた頃、少女は顔を真っ赤に染め上げた。










「 あ、あの… 」










指先を離した瞬間、少女は赤い顔をより一掃赤く染め、俯き加減で我輩に問う。
懐から取り出した杖で後始末をし、少女の落とした教科書を拾い上げる。
少しばかり埃を被ったその教科書を、未だ赤みを帯びた少女に差し出せば、震える指先でそれを掴む。
触れるか触れないか、ギリギリのラインで交わした教科書を抱えた少女は、もう一度深く頭を下げる。
顔を上げた瞬間、我輩の目に映ったのは、紛れも無い少女そのものだった。










「 名は何と言う? 」





「 え?あ…、です。グリフィンドール1年、です。 」





「 覚えておこう。 」










ふわりとローブを翻し。
去り際にもう一度少女を仰ぎ見れば。
惚とした表情を浮かべながら指先を見つめる少女。
その頬は、確かに紅い。
そして同様に、我輩も撫ぜる様に乾いた唇に指先を当てた。
何故、あの様な行動が出来たものか。
それは、後々に惚れてしまったという笑えない結末が、我輩を待っていることに他ならない。














■ あとがき ■


サイト開設のお祝いに、 榊 一葉 様へ捧げますv
リクエスト内容は…

 ・ヒロインと教授が恋に落ちる。
・↑少女漫画チックにお願いしますvv
 
稀城は余り少女漫画を読まない人間なので、”少女漫画の様な恋”がどのようなものか物凄く微妙なんですが(汗)
こんな夢で宜しければ受け取ってやって下さいませ。
今回のシチュエーション、実は稀城が好きなシーンの一つでもあります(笑)
いいですよね〜、抱きとめられるなんて!!
そして、お約束の傷舐め。
「細菌が〜」とか「黴菌が〜」とかは言ってはいけませんよ(爆)!!
この後、二人が恋に落ちるのもお約束です(笑)





++++ この作品は榊 一葉 様のみお持ち帰り可能です ++++











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