Repose







「 セブルス、ちょっといい? 」










夕暮れ時。
湿っぽい地下室に、綺麗で透明な少女の声が木霊する。
何時にも増して闇に包まれつつある自室に、仄かに柔らかくて美味そうな匂いが立ち込めて。
ぐつぐつと聞こえてきそうな音を小さく立てながら火に掛けられている鍋は、明らかに魔法薬学に使うものではない。
切り刻まれた緑色の野菜が真っ白な俎板の上で鍋に入れられるのを静かに待っていた。
そしてその傍ら。
グリフィンドールの制服に身を包み、真っ白なエプロンを緩く締めた少女が忙しない様子で行ったり来たりしていた。










「 どうしたのかね? 」










安息の時間。
それは、料理をする愛しい恋人の姿を眺めながらレポートに採点を付けている時間。
レポートの採点等つまらなさこの上ない作業ではあるけれど、それを愛しい恋人を見つめながら…となると話は全く別のものへと摩り替わる。
さらさらと静かな音を立て滑らせていた羽ペンを置くと、端正な顔でスネイプは見上げた。










「 初めて作ってみた料理なんだけど…味見をして貰えないかな? 」










遠慮がちに微笑みながら、はスネイプに問う。
陽だまりの様なその微笑は、スネイプの心に直に届き、自分までもが微笑まずには居られないようなそんな感情が湧き上る。
採点途中のレポートもそのままに、スネイプはゆるりと立ち上がると僅かな距離を歩く。
の問いに一切返事などしては居ないけれども、の傍らに静かに立つと、柔らかな瞳でを見返す。
そう、それはまるで恋人同士の甘い時間の始まりを告げるような瞬間。










「 酷く旨そうだな 」






「 見た目と中身は違うんだから 」










微かな音を立てて煮える白湯の中には、色彩豊かな野菜と肉が程好い形に切り揃えられていた。
火加減や調味料、煮込み時間等事細かに計算されたであろうその鍋の中は見事なまでに蕩けて食をそそう。
見ているだけでもその味が想像出来そうな程、の料理の腕は一流を極めている。
初めてその料理を口にした瞬間に咥内に広がった味は、今まで味わったことの無い程美味なもので。
その事実を知っているからこそ、スネイプはの作る料理の味見をするのが楽しみなのである。










サクリと繊細な音を立てて割れた野菜の上に白湯を掛け、皿に盛ったは、それをスネイプに差し出した。
ふわりと薫る美味しそうな匂いに思わずスネイプの瞳が細められる。
けれども、スネイプは瞳を細めただけで差し出された料理に口を付ける気配は無い。
それどころかに目配せをし、口角を歪める。










、我輩に食べろ、と? 」










意地の悪い微笑を浮かべたままそう問い直すスネイプ。
拒絶するようなその態度に、は小さく苦笑を浮かべた。
けれどそれは直ぐに柔らかい微笑に変わり、添えられた箸を手に持つと更に小さく切り分け始める。
形を壊さない様に優しく掴み上げると、足りない分の身長を庇う様に背伸びしてスネイプに差し出す。
屈み込むように腰を落としたスネイプが、それを受け取る。










味わう様にサクリと食したスネイプの表情をは一心に見つめ続ける。
スネイプが最初に発する言葉や表情を逃すまいとしている様なその眼差しを、スネイプは心の中でほくそ笑む。
咥内に残る旨味を逃さぬ様に気を使いながら、スネイプは一歩の側に歩み寄る。










「 どう?美味しい?? 」










全く反応を示さないスネイプにの表情に陰りが見える。
どうしていいのか判らない様子のに、スネイプは小さく苦笑すると小さなその身体を引き寄せた。
抱き込むように頭を抱えると有無も言わさずにその小さな唇に唇を寄せる。
驚いた様に身を引きかけたの身体を強引に引き寄せたまま、僅かに開いた唇から、そっと中に滑り込ませた。
移し終えると同時に、の未熟な舌を追いかける様に己の舌を絡め、柔らかく撫でる。
崩れ落ちそうな腰を抱き、支えるように手を添えるけれどもその行為を止めようとはしないスネイプは、本来の目的から当に離れてしまっていた。
自分が満足するまでは決してを離そうとはしないスネイプが、の身体をようやく離したのはそれから暫くしてからで。










「 セブルス、私の話聞いてないでしょ!! 」






「 …美味であっただろう? 」










ニヤリと微笑ったスネイプは、の手から皿を取り上げると、テーブルに静かに置いた。
顔を赤く染めたままのの脇からその腕を伸ばし、コンロに掛けられた鍋の火を消し去る。
コトン、と小さく音を立てて泡を割った料理は静止をする。
甘い瞳で見上げたままのを、更に甘い瞳でスネイプが見つめ返す。










「 何か不服かね? 」










問うたスネイプの言葉に、は顔を赤らめたまま首を横に振る。
二人の甘い一時は、これから始まることなるのは言うまでも無い。













■ あとがき ■


サイト開設のお祝いに、 凛 様へ捧げますv
リクエスト内容は…

 ・スネイプ教授で甘々。
 
…甘々というよりは微エロに近いような気がしてなりません(笑)
甘々を目指したつもりなのですが、頭に浮かんだ内容がコレというのもまた笑えます(汗)
教授が味見を素直にするわけが無い!絶対にヒロインに食べさせてもらうに決まってる!
と勝手なる妄想の中から産んでしまった夢なので、かなり凄い方向にいってますが…。
料理を作っているときに限らず二人は終始LOVE2ということで解釈されて下さいませ(笑)
教授…この後大人しく夕飯食べたのでしょうか(笑)




++++ この作品は凛 様のみお持ち帰り可能です ++++











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