大空と雲と君と
その日は、冬にしては珍しいほどの、酷く晴れた日だった。
休日とはいえ、レポートの採点やら、明日の授業の準備などで、何時もと変わらぬ忙しい時間を過ごすのは、「闇の魔術に対する防衛術」教師である、ルーピン。
淹れたばかりのチャコレートセーキに手をつける暇も無いくらいに忙しい。
積み重ねられた羊皮紙の山を見れば見ただけ溜息が自然と零れる位にまで達していた。
「少し、休憩しようか」
誰もいない筈の部屋で、一人呟いた彼は、既に冷たくなったチョコレートセーキに口をつける。
背を伸ばすために、立ち上がると、直ぐ傍に窓がある。
強い日光と温かい気温の為に開け放たれたその窓からは、階下に広がる青い景色が垣間見える。
何人かの生徒達が、そこで、楽しそうに会話をしているのが伺える。
女の子の笑い声や、クィディッチの練習に励む生徒も多い。
「おや、また彼女か…」
大きな木の傍で、木陰に隠れるようにして一人本を広げる少女。
そよぐ風に髪の毛を遊ばれるように、さらさらと黒髪が靡く。
それを気にも留めずに、少女は気に凭れ掛かるようにして読書に没頭しているようだ。
グリフィンドール寮2年、・。
最近、ようやく彼女の名前を知った。
授業で初めて彼女を見たときは、「綺麗な子」という印象しかなかったけれど、晴れた日には、彼女は毎回のように本を持って、あの木の傍に腰を下ろして本を読んでいる。
最初は友達がいないのか、と心配もしたけれど、廊下ですれ違う彼女は驚くほど明るくて、そんな心配は刹那に消えうせた。
いつの間にか…
部屋から空を眺めるとき、
自然と彼女の存在を探すような習慣が身についていた。
「本当、晴れた空が良く似合う」
誰かに対して言った訳でもなければ、彼女に対して言ったわけでもない。
けれど、この晴れた大空に、の存在は非常に良く似合う。
溶け込むように、けれど、澄み切った大空以上に澄み切った存在で。
何時まで見ていても飽きることの無いその存在は、何時しか心のよりどころになっていた。
チョコレートセーキに三度口をつけ、そろそろ仕事に戻ろうか、ともう一回空を見上げたとき…
誰かの視線に気が付いた。
ふっと下を見下ろすと、木陰に居た少女が、膝に乗せた本をそのままに、此方を見ている。
薄紫の大きな瞳が、まっすぐに此方を見ていて…
視線を合せてやれば、小さくふわりと微笑んだ。
それは間違いなく、自分に微笑んでいる様子で。
「……」
窓際にチョコレートセーキを乗せると、傍にあった羊皮紙の一枚を引きちぎる。
(多分、誰かのレポート)
其処に、小さく走り書きで、急いで文章を認める。
それを小さな紙飛行機の形に折ると、小さく魔法を唱えて、彼女に向かって飛ばす。
それはひらりひらりと風に乗って、広げた本の上に小さな音も立てずに着陸する。
何か、と困惑の表情を浮かべながらも、少女がその紙飛行機を広げる様子を、ルーピンは凝視する。
折りたたんだ一箇所一箇所を彼女が開くまで。
自分の書いた文章を読んでくれるまで。
「…教師らしくないよね、僕も」
自嘲気味にそう言った時、が開いていた本を閉じて立ち上がった。
ルーピンから送られた紙飛行機を丁寧に折りたたんで、胸のポケットにしまいこんで。
本を持って歩き出すその前に、もう一度…
はルーピンに向かって優しく微笑んだ。
「…また、仕事が遅れちゃうなぁ…」
嬉しそうにそう言って微笑んだルーピンは、冷たくなったチョコレートセーキを持って、静かに窓を閉めた。
もう、窓から彼女を見つめる必要は無い。
もうじき…
晴天の似合う少女、は、自分の部屋へやって来るのだから。
- もし良かったら、僕の部屋でお茶をしない?
OKだったら、その紙飛行機を胸のポケットに閉まって、
NOだったら、捨ててしまって構わないから −
のポケットの中の紙飛行機には、そう小さく書かれてあった。
□ あとがき □
やってしまいました!!!!!!!!
管理人初の、初のルーピン夢!!!!!
真っ黒ルーピン先生が大好きなのに、今回は真っ白です(爆
あわわ、ルーピンFanの方々、文句苦情は一向に受付可能です(汗
好きなんです…最近黒ルーピン先生に嵌ってるんです…
最初から黒いのもあれなんで、今回は白ルーピン先生です(爆
よろしければ、今後の参考にでも、意見をお聞かせくださいませ。
稀城のジャンルに新たなる人が加わるか、否か…(汗
スリザリンで埋め尽くそうとしたこのサイト…駄目でしたね。
稀城はスリザリンぽいのも好きなんですが、「優しさかもし出してて、もう一方では鬼畜並!!」というのが大好きでして…(爆
Back
