亜麻色の髪の乙女
【亜麻色の髪の乙女】、そんな代名詞をホグワーツで良く耳にする様になったのは極最近の事だった。
ダンブルドアの思い付きで行事等日毎に増えて行く一方の年の暮れ、膨大にこなさなくては為らない手課題の採点から開放された教師陣にとって其れは別段苦に も為らない事。
しかも、教師陣は普通に仕事をこなせばいいだけの行事とも言える、今日ホグワーツで行われる最後の行事は、授業参観。
ダンブルドアが何を思ったか昨夜突然この提案をしたにも変わらず、梟便が朝一番に運んできたのは生徒の父兄からの参加の旨が記載された羊皮紙の束。
其れを一枚一枚丁寧に見ながら、時には【不参加】を知らせる旨か表情を険しくもするが、朝の食事とは思えない程に酷く楽しそうに生徒の瞳には映る。
手元に届いた羊皮紙がもう何十枚目を数えただろうか、其れすらも憶えられなくなった頃、美しい桜色の羊皮紙に書かれた懐かしい文字にダンブルドアが柔らか く表情を崩した。
癖の様に顎鬚を手で撫ぜながら其れを読み終われば、無言の侭サイドテーブルの不機嫌表情を帯びたスネイプに手渡す。
スネイプが不審に思いながら開いた羊皮紙に書かれた内容、食事をする生徒前で、頬杖ついてた手の平で目元隠して笑いそうに為る。
ダンブルドアが、授業参観等という催しを敢えて行おうとした本当の趣旨に触れた気がして、溜息を吐きたくなった。
「 パパ、ママがホグワーツに来るって…!! 」
グリフィンドール席から上がった可愛らしい声が、静まり返った食堂内に響き渡る。
肩下の栗色のストレートを風に揺らせた薄紫の瞳の少女は、先程スネイプが手にしていたものと同じ桜色の羊皮紙を携えて可愛らしい表情を更に際出させる微笑 みを零して視線を投げかけた。
其の瞬間、可愛らしい口から毀れた言葉に、教師も生徒も全ての視線がスープを飲み込もうとしたスネイプに注がれる。
ダンブルドアは合いも変わらず嬉しそうな楽しそうな何とも表現し難い笑みを湛えた侭。
生徒にガヤガヤと騒ぎ出された方が未だマシだとばかりに、スネイプ注がれた視線に一瞥をくれてやる。
無論、隠すほどの事でもないこの少女とスネイプの関係は親子。
スリザリン寮監と幼いながらにグリフィンドール主席の娘…何とも皮肉な運命に晒された二人の光景に周囲は毎回驚愕の眼差しを送っていたが、今回は其処に 【妻】という人物が加わることと為る。
今日ばかりは、避けて通れるものなら金を積んでも惜しくないスネイプの講義、魔法薬学を受講したいと思った生徒は大勢居たことだろう。
苦しくも、今日の魔法薬学講義はスネイプの娘が所属するグリフィンドールとスリザリン寮の合同授業。
勿論、仕組んだのは真っ白い髭を持つ彼しかないない。
抱えたくなる頭と、ハッキリと見え過ぎる数時間後の風景に唯スネイプは深い溜息を零した。
* * *
「 …でだな、この薬草を…って、聞いているのか!! 」
普段は静まり返った魔法薬学教室、今日も例外無くゴポゴポと鉄鍋煮え滾る音だけが木霊している事に変わりは無い。
しかし、普段は黒板に磔付けられた様に刺さる生徒の視線が、今日ばかりは行き場が違った。
スネイプの娘であるは手元にある教科書と黒板を見比べては理解不能の用語に頭を抱えているようであるが、その他の生徒は左眼は黒板、右眼は脇の壁に立 つ女性へと注がれていた。
普段は真面目で黒板から瞳を逸らさない生徒も、眠さに耐え切れず日夜船を漕ぐ生徒も、平平凡凡に授業を受ける生徒も…全てひっくるめて壁際の女性…と言う には随分と若い彼女に釘付け状態。
よりも柔らかい亜麻色の髪を持つ其の女性は、綺麗と言うよりは可愛らしい顔立ちで細身の身体に薄紫の大きな瞳を兼ね備える才色兼備の容姿。
を隣に置けば間違い無く親子だと思う程に瓜二つで、可愛い娘にはやはり可愛らしい母親が居るものである。
身長も生徒と然程変わらぬ位に小柄で、ローブを着ればホグワーツの生徒と間違われても可笑しくない。
と並ばせれば確実に親子だと判る彼女、其れがあのスネイプの奥さんと言う事実に生徒たちは息を呑む。
とスネイプが親子であると初めて知った時も其れは其れは驚いたけれど、如何見てもスネイプ以外に見合う男性は別に居るだろう?と驚嘆の眼差しが全てを 語っていた。
がホグワーツに入学した時も周囲は驚いたが、今回は其れを遥かに上回る程の驚愕振りにスネイプは壮大な溜息を吐いた。
「 本日の講義は此れまで、皆今日の講義概要を羊皮紙一巻きに纏めておくように。 」
授業終了を告げる鐘の音が鳴り響き、講義終了を告げるスネイプの声が響いた直後に教科書を脇に抱えた生徒たちが一斉にの母親を取り囲んだ。
勿論其の中心に立たされたの母親基い、スネイプの愛妻は酷く可愛らしい微笑みを浮べた侭受け答えをする。
生徒に混じって生徒の父兄までもがに話し掛け、気の優しいは申し訳無さそうな表情をとスネイプに向けるけれど、やはり魔法界と云えど近所付き 合いという物が存在する為無視する訳にはいかない。
一瞬にして寮の談話室状態と化した魔法薬学教室を見回しては、壮絶な溜息がスネイプの口から零れ落ちた。
「 …パパ、私もママに
久しぶりに
逢っていっぱい話したかったけど、譲ってあげる。 」
「 …?何を譲るというのかね? 」
「 私はママが来てくれただけで嬉しかったから…其れで充分。 」
流石の血を半分引き継いでいるのか、相変わらず明確な主語を付けない侭に一方的に会話を終えてしまったは手にした教科書と共にの傍に走り寄 る。
直ぐに文字通り零れ落ちそうな笑みを浮かべたの耳元で、何かを話している様子が伺える。
ニコニコと笑んでいたの表情が、が言葉を伝え終わったのか耳から離れた一瞬驚いた表情に変わって、直ぐ様照れたような表情に変わる。
一体何を話しているのかと、苛立ちに似た様で見詰めていれば人だかりで溢れていた生徒たちがに連れられて名残惜しそうに魔法薬学教室を後にし始める。
周りに居た父兄たちはダンブルドアの夕食会の誘いを受けているのだろうか、皆連れ立ってゾロゾロと大広間の方に踵を返して。
一瞬にして静まり返った室内、スネイプとだけが取残されたように居た。
「 如何したのかね、酷く嬉しそうな顔をしている。 」
「 がね、譲ってくれたのよ?
−パパはママがみんなに囲まれて凄く寂しそうだったから、
誰よりもママに逢いたかったのはパパだと思うから譲ってあげる−
って。 」
「 …成る程、其れで譲るという訳か…我が娘ながら余計な事を。 」
「 あら、私はセブルスとこうしてまた此処で二人きりになれて凄く嬉しいのよ? 」
肩から掛けた純白のストールを使い古した木の机上に乗せると、ぐるりと教室内を見渡して懐かしそうには笑んだ。
スネイプとの年の差は驚く程大きく、がを生んだ時はホグワーツを卒業してから一年と経たない時分だった。
教師と生徒という立場から発展したこの夫婦関係、何時も放課後は此処に来てスネイプと同じ時間を過ごしていた。
久しぶりの母校、久しぶりのスネイプの教鞭を取る姿に見惚れて仕舞っていたの心が娘であるに伝わったのだろう。
夕食の場では家族団欒とまでは行かないだろうが、もスネイプも出席しなければならない為、二人きりに為れるのは今を逃しては存在しない。
其れを悟ってか、は魔法薬学教室の扉を閉める際、静かに振り返ると懐から杖を取り出して小さく施錠呪文を施していった。
きっと、こう云う狡猾な部分がスリザリン出身であるセブルスの血を引いているのだろう。
「 …スネイプ教授、私、この先一生貴方に付いて行くと此処で誓います。 」
「 態々手塩に掛けた恋人を我輩が手放すと思うかね?一生手放す気等無い。 」
もう十年以上も前にこの場所で交わされた二人だけの約束の言葉をもう一度口にして、幸せそうにが微笑んだ。
其れに攣られるかの様に表情を和らげたスネイプが、さらりと靡くの亜麻色の髪を柔らかく撫ぜて口付けを落とす。
過去に時間旅行したような嘗ての懐かしい情景に包まれた二人が、仲良く連れ立って大広間に姿を見せるのはもう少し先の話。
* * *
「 ねぇ、…ずっと聞こうと思ってたんだけど、のお母さんって幾つ?未だ若くて凄く綺麗ね。 」
「 ん〜…確か今年で29歳だったと思う。 」
「 …、のお母さんとスネ…お父さんって何年くらい付き合ってたか知ってる? 」
「 確か昔 【確実に5年は付き合った】って…って、其れってもしかして… 」
・スネイプ、グリフィンドール寮所属御歳11歳。触れては為らない親の秘密に直面する。
同様、質問をした友人であるハーマイオニー・ロン・ハリー各々胸中において此れは【聞かなかった・知らなかった・忘れてしまった】で付き通そうと暗黙 心に誓う。
そうでなければ、次の魔法薬学講義、物凄い視線でスネイプを見てしまいそうだと、そうして其の侭物凄い減点を喰らいそうだと眼に見える未来に身震いをし た。
事実、学生時代にスネイプが手を出していたことは間違い無い。
けれど誰一人として、其れをスネイプに咎める棄てた根性の有る者は居なかった。
後書き
亜麻色の髪の乙女…はスネイプの妻ということで(苦笑)
如何にも無理やりな感ヒシヒシなんですが、如何でしょう久々のパパスネ、娘は11歳!
如何にも娘よりもスネイプの方が幼い精神してそうで困ります(笑)。
パパスネって楽しいですねぇ…書きながら別のネタとか浮ぶ時点で私も坂道転げ落ちそうです…!!
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