恋愛って、凄い【素敵】だと思うよ?ハーマイオニー...
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恋愛は人を変える。其れは完全なる自己陶酔だと、あの日までは確かに思っていた。
素敵だね
吹き荒ぶ雪の華の勢いが日に日に増して、氷点下を下る日々に溜息を吐く事すらも億劫に なった頃合、ホグワーツ魔法学校では猛烈な高熱を伴う風邪が大流行していた。
最も、例年風邪は例外無く流行し体力の有る者も無い者も、生徒教師関係なく身体を蝕む様に浸透し蔓延する。
今年ホグワーツで大流行するに至った風邪は、酷く性質が悪く三日は高熱に魘され食事も碌に口にする事が出来なくなる程の倦怠感に襲われるという。
クリスマス休暇を明けた翌週から、風邪に侵された生徒がポツリポツリと目立ち始め、其の波及は教師陣にまで及び有ろう事かマダム・ポンフリーまでにも及ん だ。
お陰で魔法薬学に長けたスリザリン寮監は、講義の最中も講義終了後も風邪薬を作製する事に一日の大半を費やされ、日に日に増加する薬の依頼に眉間の皺は限 界までに増えて行った。
「 、私はずっと此処に居るから、用事が有ったら呼んでね? 」
空が澱んで居る為に、日の光の当たらない室内は僅かに燈された蝋燭の明かりが幻想的に揺らめいている。
机の上には酷く濁った発色のゴブレットが鎮座し、傍らのベットには額に魔法保冷効果を施したタオルを乗せたが静かに横たわっていた。
元々白いの肌は風邪が齎す熱によって淡い紅に染め上げられ、苦しそうに肺で息をする為にブランケットの掛けられた胸が小さく上下している様が見られ る。
の表情を伺うように身を屈めて問うたハーマイオニーは、重い瞼がゆっくりと開き薄白紫の瞳が和らぎながら頷いたのを確認すると、安心したように笑っ た。
がホグワーツに流行している風邪に掛かったのはほんの数時間前で有った。今日一日の講義も無事にこなし、部屋に帰ってきた瞬間、堪えていたモノが大爆 発するように顔面を蒼白させてベットに崩れ落ちた。
其の時初めてに熱が有った事を知ったハーマイオニーは、生まれて初めて今日の講義に魔法薬学が無い事を痛烈に悔んた。
普段の様に明るく振舞い食事も普段通りで何一つ変わった様子を見せなかった、同室でもあり親友でも有ったハーマイオニーの眼を欺けても、恋人であるあ のセブルス・スネイプの瞳は誤魔化せないだろう。
大方、皆に心配を掛けぬ様【明日明後日は休日だからせめて今日は】という魂胆から倒れそうな身体を引き摺って講義を受けていたに違いない。
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スネイプ教授、が風邪を引いてしまって、風邪薬を…
倒れて動けないの為、ハーマイオニーはを着替えさせて部屋を暖めると、其の足で魔法薬学研究室に向かった。
とスネイプが恋人同士であると知っているのはホグワーツを探してもハーマイオニーだけであり、其れはスネイプも熟知している事実だった。
しかし、如何もスネイプが苦手で仕方無いハーマイオニーは、今までスネイプを避ける様必要最低限のコンタクトしか取って居なかった。
故に、廊下を急ぎ足で掛けている最中もあのスネイプを前に【恋人が風邪を引いて…】と怯まずに伝えられるかが酷く不安であった。
事実、連日連夜増えつづける風邪引きの為に薬を調合するスネイプの機嫌は頗る悪く、普段でさえ氷撤を極める視線と態度は氷点下の空より遥かに低下してい た。
案の定、スネイプに言葉を吐いた瞬間、彼は恋人の容態一つ尋ねず、視線も上げる事無く机の上のゴブレットを投げて遣した。
本当に恋人同士なのかと疑いさえ持つ程、其の態度はハーマイオニーの常軌を大幅に逸脱していた。
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…恋人の心配もしないあんな陰険根暗厭味教授が、の恋人だなんて可笑しいわよ。
其れは常々の疑問、決して言葉にしてに問うたりスネイプに吐いたりしないけれど、其の疑問はがスネイプと付き合いだして以来増幅の一途を辿ってい た。
実際問題、の口からスネイプと付き合っていると断言された際、一瞬以上時が凍り何の罰ゲームをは背負っているのだろうかと本気で心配した程。
スネイプの講義を受ける際もスネイプは一貫した態度をグリフィンドール寮に取り減点は減るどころか増える一方で、何が増えたのかと思えば、部屋に居る事が 少なく為ったとハーマイオニーとの時間であろうか。
なんにしても、が幸せそうにスネイプの話をする事も滅多に無く、勿論その逆は想像しなくとも有り得る筈が無い。
第一に、あのスネイプが誰かに恋心を抱き誰かを愛していると云う時点で、ハーマイオニーにとっては奇想天外な話なのである。
一体如何云う経緯でこの二人が恋愛関係に発展したのだろうか、とハーマイオニーが思考を巡らせていた矢先、背後に急激な温度の変化を感じて何気無しに振り 返った。
刹那、眼が有ったのは如何にも不機嫌憤慨一歩手前、仁王立ちで眉間の皺を一層深く刻んだセブルス・スネイプ其の人。
「 スネイっ……っ 」
「 静かにし給え。が起きる。 」
心臓が口から飛び出る位に驚いたハーマイオニーは、表情を引き攣らせた侭、突然現れたスネイプを認めて叫び声を挙げそうに為る。
其れを制する様に、後ろから投げられた声と言の葉を消し止める為に口に当てられた掌。
仮に教師とは言え、一介の女子生徒の室内に無断で侵入すれば、スネイプの立場にも関係してくる。否、そんな事態に為れば先ずスネイプの身の上よりも泣き顔 のが脳内を駆け抜けたハーマイオニーは、小さく頷き其れを確認したスネイプが漸く掌を退けた。
「 の容態は如何かね。 」
「 さ、さっき薬飲んで漸く眠りました。…熱は未だ高いみたいです。 」
そうか。
唯其の一言だけを吐いたスネイプは、ハーマイオニーの隣を擦り抜けるとベットの淵に静かに腰を落とした。
スネイプの体重を受けて僅かに沈んだだけのベットは、先程と何等変わり無い侭に位置し、目立った音も立たずが閉じた瞳を擡げる事は無かった。
苦しそうに吐息を吐くは額に幾分かの汗を掻き、柔らかな薄漆黒の前髪が張り付いてしまっている。其れを視界に認めたスネイプは、極めて自然に伸ばした 指先で優しくかき上げてやる。
一言も発しないが、不機嫌の其れでは無い別の表情を其の酷薄な瞳に浮かべていると、ハーマイオニーは背に冷たいものが流れ落ちる錯覚を帯びた。
如何にも、自分が此処に居るのは思いっきり場違いではないのだろうかと。
の傍に腰を落としたスネイプは、一言も言葉を発する事無く唯其処に居た。
時折冷却魔法を施したタオルを持ち上げて、熱が引いたかを確かめる行為を行ったが、一度もスネイプはハーマイオニーの方には振り返らない。
己の部屋で有る筈のこの空間が、一瞬にして他人の部屋に転がり込んだ錯覚を帯びて居た堪れない。驚く程の静寂がゆっくりと流れ、一分一秒が物凄く長い時間 に感じられる。
そんな折、ふと脳裏に浮んだのは一つの疑問。先刻は顔色一つ変えなかったスネイプが、如何して突然に部屋に乗り込んできたのかと愚問し、考えれば如何して も解答を聞いて見たくなる。
意を決し、スネイプの視界に捕らえて貰える位置まで移動して問い掛ける。素晴らしいことに、度胸は人の5倍は有る。
「 セブ…ルス… 」
移動したは良いものの、拍子抜けさせられるようなうわ言がの唇から漏れ毀れた。
見れば、魘される様熱から来る苦痛に表情を歪めたが助けを乞う様に細い腕を空に伸ばし、指先がスネイプの其れを求めていた。
慌てての元に駆け寄ろうとしたハーマイオニーであるが、その努力も空しく其の侭その場に立ち尽くしてしまう。
間髪居れずにの指先に指を絡めたのは間違い無く其処にいたスネイプであり、キツク握り締めると片方の手も添えてベットの上に柔らかく落とした。
直ぐ様に指を離すのかと思いきや、スネイプは其の侭大切そうにの掌を握り、そして.....
ハーマイオニーは見てしまった。
あのセブルス・スネイプが酷く愛しそうに表情を和らげての髪を撫ぜた瞬間を。
「 あ、あの、スネイプ教授…! 私図書館に用事を思い出したので行って来ます!
多分…いえ、絶対就寝時間10分前まで此処には戻らないのでをよろしくお願いします 」
居た堪れない等と云う甘い言葉では表現出来ない程、ハーマイオニーは其の場に居続けることを全面的に拒否する。
如何して己の部屋である筈がスネイプなどに気を使わなくては為らないのかと思いつつも、此処に居たら間違い無く自分の精神が崩壊すると悟った。
現に、今現在の心境でもスネイプへのイメージが大方変わってきてしまっている。あの引見根暗厭味教授が、確かにの手を握り締めて愛しそうに表情を和ら げたのだ。
口の端を釣上げてさぁ減点してくれようかと目論むあの自嘲軽薄な面構えは忘却した様、あんなにも自然に微笑える人間だと言う事を知らなかった。否、断言す るなら知らないほうが幸せだった。
明後日からの魔法薬学の講義、果たして不審な眼で見ず笑いを堪えた平常心を保てるか、触れてはいけない刹那の条理に触れた気がする。
「 確かに貴女の恋愛は【素敵】だと思うわ、。 あのスネイプをあんな腑抜けにしたんですもの。」
私も貴女みたいな【素敵】な恋でもしてみようかしら?
氷徹する廊下を急ぎ足で図書館に向かって駆けるハーマイオニーの言葉はに届くことは無かった。其れでも、図書室に向かうハーマイオニーの表情が何時に 無く策謀めいていた事は事実。
予測するまでも無く、スネイプは消灯時間ギリギリまでの傍で看病をし、ハーマイオニーは図書館内で今までは眼もくれなかった様な純恋愛文学を読み耽っ ていた。
ハーマイオニーがに【好きな人が出来た】と打ち明け、が綻んだ華の様に微笑う日はもう少し先の話。
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恋愛は人を変える。其れは完全なる自己陶酔だと、あの日までは確かに思っていた。
後書き
…これって、ハーマイオニー夢じゃないだろうかと本気で悩むんですが、如何でしょう(苦笑)
個人的に、ヒロインとスネイプの絡みも用意したかったのですが、物凄く長くなりそうなので省略…したら完璧にハーマイオニー夢になった気がします(汗)。
スネイプ教授、ヒロインが風邪引いたと判った瞬間きっと居ても立っても居られずに侵入したんでしょうねぇ…。
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