いつもいっしょ








いつも一緒に居たかった。
隣で笑って居たかった。
季節はまた 変わるのに…
心だけ立ち止まったまま。












車窓から流れ行く景色を見つめて、彼は小さく溜息を吐いた。
手にした小さなトランクは、無造作に足元に転がって、放り投げられたままの状態になっている。
木枠で作られた狭い窓枠に腕を置き、頬杖を付いて彼はもう一度溜息に似た息を吐く。
心の底から何かを押し出すように言葉を音に出さない吐息に変えて。
握り締めた一枚の羊皮紙は、色褪せてインクの色が変色し掛けている。
ぐしゃりと握った所為で所々切れかけている。
それでもいいか。
もう、二度と…読む事など無いのだから。












「 我輩が、莫迦だったのかもしれぬ。 」












目の前に広がる広大な草原に目を遣ると、太陽の光が草に反射してスネイプを照らし出した。
眩しそうに瞳を歪めると、僅かに開いた窓枠の隙間から、風が滑り込んできた。
ふわりと春の香りを抱き寄せたその風は、スネイプを嘲るかのように一撫でして勢いを増す。
急に強くなった風の所為で、スネイプの握っていた羊皮紙が風の力を直に受けた。
ぐいっと持ち去られるように強い力を持った風は、そのままスネイプの指先から掠め取る様に羊皮紙を奪う。
ふわりと一瞬で風に乗った羊皮紙は、スネイプが気づいた時には既に車外にひらりと舞っていた。












「 …閉まっておけば良かったか。 」












哀を浮かべたその顔が、少しだけ緩んだ。
懐かしそうな表情で飛び去る羊皮紙を見つめては、何故放してしまったのかと言わんばかりに、指先を見続けた。
一度だけ貰った、愛しい者からの手紙。
7年もの月日を一緒に過ごしてきたその少女が、一度だけ自分に充てて書いた手紙。
拙い文章で、拙い字ではあるけれど、一生懸命に書いたであろうことが伺えるその手紙に、スネイプは返事を出していなかった。
恐くて返事が書けなかったのだ。
「ホグワーツの教師」という立場上、仕方の無い処置ではあったけれど、何も言わずに卒業してしまった少女が頭から離れない。
邪魔者のように扱ってきたけれど、自分に懐くその少女に愛情を抱き始めたのは大分前からのことで。
一緒に過ごす時間を楽しいと感じ、
傍で笑った顔を見る事に微かな喜びを感じ、
存在自体を邪魔なものとして捕らえなくなった頃。
寧ろ、このまま時が止まればいいとさえ思った頃。
彼女は卒業してしまった。
この、ホグワーツから。












「 マグルの世界で人探しなど…無意味に近いか。 」












自嘲気味にスネイプはそう苦笑した。
少女が自分の傍から消えてから既に幾日も経過していた。
いつかは自分の元を訪ねて来るかと思われた少女は、卒業の日以来、一度もスネイプの前に現れはしなかった。
業を煮やし、告げられなかった返事に苛まれて、失うはずの無かった時間を取り戻したくて、スネイプはホグワーツ特急に乗っていた。
マグルの世界へと帰って行った…愛しい少女、を探すが為に。












でも、もう無理なのかもしれない、と脳が声を上げた。
手紙も無くしてしまい、当ても無く広いマグルの世界を魔法も使わずに人を探すなど、困難を極めることで。
それを承知でホグワーツから出てきた筈なのに、こんな時に諦めのオーラが漂い始める。
何も連絡を寄越さない等…自分を忘れた証拠ではあるまいか。












「 スネイプ先生。そんな陰気臭い顔してると変質者に間違われますよ。 」












そんな考えが頭を過ぎった矢先、遠くのほうで声がした。
頬杖を付いたままで振り返ってみれば、トランクを持った、が輪微笑みながら立っていた











「 其処で何をしている 」










「 先生こそ、何してらっしゃるんです?
 此処はマグル界ですよ。 」








「 非常に不出来な元生徒を探している途中でな。
 コバンザメの様にしつこく付き纏われては迷惑していたんだが、
 居ないと居ないでどうにも不便でな 」








「 それって、ホグワーツに居た時の私のことですかね、スネイプ先生。 」












以前と同じ表情で笑うの手を手繰り寄せて抱き寄せる。
驚いたようにトランクを落とした音になど目も暮れずに。












「 名誉ある仕事を遣ろう。
 我輩の雑用係だ。 」









「 三食昼寝つきですか? 」












クスクスと笑うには届いていなかった様だ。

− 迎えに来るのが遅いですよ −

我輩の言葉はが継げた言葉と重なり、の言葉のほうが重要だったからで。










ひらりと舞った手紙は、今も何処かで彷徨ったまま。












□ あとがき □

情景描写省きまくりな稀城にはあまり馴染みの無い夢ですが、書いていて楽しかったです(笑)
教授も頬杖とかつくのでしょうか…
きっと教授なら、物凄く絵になると思いますvv
頬杖付きながらの居眠りでもいいなぁ…(笑)






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