肩越し
私には特別好きな場所がある。
其処から見る周りの世界は、いつも見ている世界とは然程変わりは無いのだけれど、何処と無く普段見ている景色とは異なって瞳に映る気がした。
少しばかり背伸びをした位では到底気づかない様なほんの些細な変化も直ぐに気づくことの出来るこの場所は、私のお気に入りになっていた。
自分独りでは決して見ることの出来ないその視線の高さは、どう抗っても纏わり付く影法師の様に揺らめいて。
手を伸ばせば簡単に届く虚空を見つめながら、私はその高さと世界観の相違と彼の温もりとに安堵の溜息を漏らす。
毎日のように続くその繰り返しも、慣れる事は無い。
「 、寝るなら寝室で寝たまえ 」
朦朧としかけた意識の奥でスネイプの低い声が耳を掠めた。
閉じ堕ちそうな重い瞼をゆらりと開けば、そこには怪訝様な表情を浮かべたスネイプが束ねた羊皮紙を机の上に置いているのが伺える。
時計の時刻も既に深夜を知らせ、夜の闇が一層深まり物静かな空気が流れる閉ざされた世界が幕を開ける。
ぼんやりとした意識の中で、スネイプが掛けてくれたのであろうブランケットを手繰り寄せながら、はそっと仰ぎ見る。
「 先生、連れて行って下さい 」
「 …………… 」
自然と漏れる甘えたような幼い声。
求めるように両手をスネイプのほうに差し出してそう呟くは、睡魔に襲われ覚醒していない瞳を朧気に開けたままで。
首を少し傾けて尋ねる様なその仕草は意識していないだけあってか酷く可愛らしい。
問われたスネイプは言葉を発することも無く、微笑を湛えたに小さく溜息を漏らす。
それでもやはり、自然と足は少女の方へと歩み寄って行く。
冷笑を浮かべたスネイプは、少女に引き寄せられるかのようにその歩みを速めた。
「 いつからそんな幼子になったのかね? 」
「 生まれた時からですよ、多分 」
苦笑したように嘲ったスネイプは、の細い腕を手繰るように抱え込むと、ブランケットごと抱き上げた。
さらりと流れるの髪から柔らかな薫りが伝わって。
その重さを感じないほどに軽いをその腕の中でしかと抱き込むと、スネイプは何時もの台詞を吐く。
「 落ちても拾いに等行かぬからな 」
微妙に優しさを含んだような声色でスネイプはそう促した。
何時もの台詞。
この台詞を聞いた後にはいつも、スネイプと向き合うように身体を起こして首に両腕を巻きつける。
優しく抱きかかえてくれるスネイプに身体を手向けて、ぽすんと音がたちそうな位に頭を肩に埋めて。
ふわりと薫るスネイプの薫りに酔い痴れる様にその温もりを全身で味わう。
「 私、大好きなんですよ。 」
「 何が、かね? 」
「 スネイプ先生の肩越しから見る景色。
同じ風景が全く別のものに見えて… 」
「 それは別段我輩の肩でなくても良いのではないのかね? 」
その言葉には堕ち掛けていた眠りの淵から覚醒したかのようにスネイプのほうに向き直った。
急激に体重移動を起こしたの身体は大きく前のめりになってスネイプの腰にずしりと圧し掛かる。
けれども揺らぐことも無くスネイプはそのままの背に腕を添えただけで、寝室への扉を意図も簡単に開けてしまった。
抱きかかえられたままスネイプの瞳を直視したは、不満げな表情を浮かべる。
「 違います!
先生と同じ目線になれるから大好きなんです!! 」
小さな子供が無機になる様に口を尖らせ怒るにスネイプは苦笑せずには居られない。
幼子の考えつく思考そのものを見ているようで何とも奥床しい。
抱きかかえる代物をブランケットから布団に変えたは、柔らかく沈むベットの中央でスネイプが着替え終えるのを待っていた。
もう半分以上閉じかけた瞳を擦りながら己を待つその姿にスネイプは三度苦笑することとなる。
「 目線は違えど、我輩は何時もお前と同じ位置に居ることを忘れるな 」
その台詞を最後に、幸せそうに瞳を閉じたは、スネイプの腕の中で静かに眠りに付いた。
そのの微笑に笑みを漏らしたスネイプは、閉じた瞳に柔らかく口付けを落とす。
普段は違う目線の二人。
翌朝二人は同じ目線で朝を迎えることとなる。
□ あとがき □
身長差がかなりある場合は結構目線が違うのでは?という安易な発想から生まれた夢であります(笑)
教授に抱きかかえられて見える視線の先にはどんな景色が映るのでしょうか。
最も、教授に抱きしめられたりしたらそれこそ周りの景色を見る余裕なんてなさそうですが(爆)
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