ひとでなしの恋






どれだけ君を想い続けたら、この想いは届くというのだろうか。
虚偽ばかりで彩られたこの感情に名前をつけるとしたらそれは紛れも無い、恋愛感情。
噎せ返る様な想いの果てに行き着いたのは、劫火の如き揺らめく灼熱の感情。
吐き捨てた過去の自分が自嘲した。
恋だの愛だの好きだの愛してるだの。
甚だ可笑しい。
似たり寄ったりの言葉は所詮は「繋げられた文字」でしかないというのに。
一糸乱れぬ音程で紡がれるだけの言葉に、一体何を期待しているというか。








「 嫌い。だいっきらい。 」









拗ねた口調で君が言う。
高揚させた頬を膨らませ、桜色の唇をそっと噤んで。
怒りを全面に押し出して、眉間に皺を寄せ、猛烈な勢いで怒る。
手当たり次第に物を投げつけ、ヒステリーに陥ったかのようにそのか細い腕を振り上げた。
脆い硝子は、冷たく硬い床に投げ捨てられてその形状を壊す。
飛散した小さな粒が無残にもばら撒かれて。
姿を変えて粉々に砕け散った欠片達は二度と同じ姿に戻ることは無く。
恋愛感情や愛情が類似しているかの如く、それは同じ。
一度壊してしまったものは、二度と元へは戻らない。












「 触らないで!! 」












甲高い声で君が叫ぶ。
涙を溜めたその瞳を拭う事さえ許されては居なくて。
戸惑った様に苦笑して見せると、現実に帰った様に彼女は顔を上げた。












「 あ…ごめんなさい、私… 」







「 気に病むな。 」







「 でも… 」












うろたえる少女を見たのは実に久しぶりで。
泣き疲れた様な表情で此方の表情を伺う様はまるで小さな子供のように。
伸ばしても届かない遥か彼方で輝く星を掴み取ろうとしている様で、酷く不愉快だ。
同じ場所で、同じ空気を吸い、同じ時間を過ごしている事がそんなにも嫌なものなのだろうか。
酷く、不愉快だ。












「 恋愛感情などという"自己暗示催眠に近い感情”は、多かれ少なかれ終わりを告げる。
 だがな、一つだけ言える事があるとすれば、だ 」












きょとん、とした表情を浮かべたまま、食い入るように話に聞き入る少女。












「 相手を好きだという感情や理由は全て後付でしかない。
 相手に対する感情に名前がついたら初めて、思い返せばいい。
 後付が必要になったら、後から考えればいい 」








「 …どう言う意味ですか? 」










「 恋愛など、所詮は人間の思い込みでしかないという事だ。 」












ふわりと風が舞う。
逆光に照らし出されたスネイプが、ゆっくりとに歩み寄る。
音も立てずに。
何も発せずに。
ただ黙って忍び寄るかの如く足を踏み出していた。
ばさり、という擬音が聞こえそうな程に緩やかに優雅に舞うローブ。
薫る薬品の香り。












それら全てをの脳が認識したとき、はスネイプの腕の中に居た。












「 恋に必要なものが”劇的な出逢い”だとしたら、こんな出逢いは如何かね? 」












自嘲気味に笑うスネイプが、を腕に抱いたとき。
二人の距離は少しだけ縮まった。
欺き続けた自分の想いにけじめをつけるために。
中途半端な間柄では満足し得なかった事に決別するために。












気づいたら好きだった。
それがスネイプにとって全てだった。
後で付ける理由は、これを曇らせるだけに過ぎない。
補強が必要なら後から付け足せばいい。
幸せの定義が定まっていないのならば、作ればいい。
自分だけの定義が、自分の幸せにしたい者への礼儀となる。












「 我輩を好きになれ、と贅沢は言わん。
 だが、が”我輩を愛する”事だけは間違い無いと思え。 」












強気発言に、はようやくその表情に笑みを零した。












ひとでなしの恋。
それは二人にとって単なる序章に過ぎないのだ。









□ あとがき □

スネイプ教授の片思い、ヒロインもスネイプ教授を好きだけど…
というリクエストを元に書きました。
100のお題でリクらしきものを貰ったのは初めてなのですが、面白そうなネタだったので採用させて頂きましたvv
この場をお借りして、ネタを下さった「南 飛鳥」さんにお礼申し上げますvv

…教授、強気な割りに弱気な一面もありですね(笑)
100のお題は短め基本なので、今回も超短編に…(苦笑)




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