煙
一筋の煙が、澄み切った蒼い空に垂直に立ち上る。
ドォォォンッ…と鈍い音を大地に響かせて放たれた弾丸。
Colt Python .357Magnumから発せられたマグナム弾は凛とした空気の中を只真っ直ぐに直進する。
瞳に涙を溜めた幼い少女の持つ、そのMagnumの口径から発せられた弾丸は、遥か前方の目標物に当たって砕ける。
止めさせようと伸ばした腕は、空しく空を掴んだに過ぎない。
「 …こうするしか…無かったの… 」
酷く不快な音を喉の奥から上げた標的は、鮮血を吹き上げて土色の地面に赤い絨毯を敷いた。
喉元を掻き切る様にモガクその標的を少女は只、涙を溜めた瞳に映しただけで。
条件反射の様に、懐にある杖に手を伸ばす。
冷たい感覚が走ると同時に、その杖は再び懐に仕舞われる。
我輩が、魔法を使って、何の意味を齎す?
「 、此方に来なさい 」
出逢って初めてファーストネームを呼んだ。
ホグワーツ生であろう少女の事は、誰よりも良く知っていた。
皆に羨まれるほどに優秀で欠陥の無い人間。
唯一、マグルだと言うことを除いては、彼女は正に完璧だった。
その、完璧な彼女にとって、標的は邪魔な存在でしかない。
脅され、妬まれ、弱みを握られ、屈辱を強いられる。
ホグワーツの教師ならば誰でもが知っていたその事実を、敢えて公表せず、誰も彼女を助けようとはしなかった。
それが、今回の結果を招く事になろうとは。
誰が予想しただろう。
「 スネイプ先生…私、私… 」
トン、と乾いた音を立ててMagnumが地に落ちる。
その上から静かに静かに慰めの雨が降り注ぐ。
それを一瞥し、我輩は今度こそ懐から杖を出し、詠唱する。
ぴしゃん、と弾けた様な音を立てて、それが壊れた。
そして、彼女が崩れ落ちる。
「 案ずるな、我輩が守ってやる 」
雨に濡れ、毀れた涙と混ざり合ったその幼い顔が、悲しそうに笑った。
抱き留めた少女は、想像よりも軽く、弱々しい。
掴み凭れるその腕には未だに微かな震えが走り、指先は青く染まっている。
声を殺して無くを、我輩は只、抱きしめ続けた。
「 お前は悪くない 」
髪を撫でながら、慰めにすらならない言葉を言ってやる。
濡れて重積を増した髪が、頬に張り付いて離れない。
嗚咽を殺して泣くの傍で、我輩は小さな笑みを漏らす。
抱き抱えた少女の調度真後ろで、標的は我輩の瞳を認めて腕を伸ばす。
縋り付く様に。
助けを求める様に。
「 お前は、我輩が守ってみせる 」
偽善に満ちた言葉を吐き、手にした杖を標的へ。
虫の息を捻り潰す。
筋書きはもう、要らない。
こうして手に入れたかった少女は我輩の手中にあるのだから。
出会いから結末までを綺麗に演じてくれた標的は差し詰め捨て駒同然で。
必要の無い存在を態々此処まで使ってやったのだから、不必要になったら存在等知ったことではない。
「 スネイプ先生、どうしてそんなに優しいんですか? 」
「 判らないかね?
恋愛感情という戯けた感情をお前に持つからであろう? 」
腕の中、少女が嬉しそうに笑い。
その微笑に我輩も表情を緩める。
立ち上り、やがては消えるその煙が、全ての終わりだった。
普通に出逢っては、こうも必要とされ、守られることの喜びを知ることは出来ない。
故に。
少々強引ではあるが、素敵なシナリオを書いたまでのこと。
我輩のこの行為、神への冒涜とされるか。
少女を愛しているのは確かな事。
けれど、この気持ちが純粋な恋愛感情かと聞かれればそれはまた別次元の話。
なぜなら、既に我輩は、捨てられた子犬の様な瞳でしか我輩を映さないを愛しているのだから。
□ あとがき □
初めて書いた狂気愛。
本当、狂気と言えるのかどうか疑わしいものですが、一度書いてみたかったので書いてみたのです。
実際問題、かなり難しくて途中で挫折しそうに…(汗)
某管理人様の狂気愛が好きな私。
某管理人様の偉大さが改めて実感できました。
因みに、ヒロインが殺した相手を唆してヒロインに心の傷を付けさせたのは他でも無いスネイプ教授です。
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