洗濯物日和





「 あ゛--------------------っ!!!! 」



梅雨時、久方振りに柔らかく太陽の光りが差し込んでいたスネイプ家の静寂を、突然の叫び声が駆け抜けた。
昨日遅くに帰宅したスネイプは大量の羊皮紙と獲得して休日をゲットしたのか、昼を過ぎても未だ眼を覚ます気配は無く、はスネイプが起きるまで独り家事 をこなしていた。
小さな鼻歌を口ずさみながら、家事に魔法を使うのは厭だとスネイプに常々言っていた事を実証して見せるように、良く晴れた梅雨の空に洗濯物を干していた。

そろそろ昼も回ろうと云う頃合。
昼食は何にしようか、そう考えながら台所に入って季節外れのチラシ寿司なんて作ってみてもいいかも、と独り嬉々としながら調理場に立った矢先。
摘み取った野菜を其の侭庭に置き忘れた事に気付いて庭に戻った。其処で、が絶叫する。其の声に、独り浅い夢を貪っていたスネイプがベットから飛び起き た。


「 如何したのかね、っ… 」


眠たげな瞳。普段から余り眼を大きく開くことの無いスネイプが、部屋着代わりにしているローブを纏った状態で庭に駆けて来た。
余程急いできたのだろう、普段は整っているスネイプの髪が所々重力に逆らう様な形に変形している。
愛しい妻の叫び声。其れにとって替わるものは無いとばかり、スネイプはの無事な姿を発見すると心の中で安堵の溜息を吐いた。

矢先、青白い顔をしたから放たれた言葉。


「 ちょっと眼を離した隙に…パンツが…パンツが取られちゃったの!! 」

「 なんだと…っ!? 」


スネイプの眼の前で耀かしいばかりの純白のシーツが太陽の光りを受けて更に白に光る。
二層式になっている物干し竿の向こう側、シーツの所為で見る事は敵わないものの、其処にも洗濯物が干して有るだろう事は透けるシーツのお陰で見て取れた。


「 昼前にね、此処に干したの。 其の時に野菜を置き忘れて取りに戻ったら…もう… 」

泣き崩れる様に其の場に座り込んだに、スネイプは朝一発目から怒気が身体中を突き抜けた。
よもや、愛しい己の妻の下着を盗むなどと言う有るまじき行為に心の底から相手を憎んだ。

「 安心し給え、我輩が何とか犯人を見付けて遣る。
 お前の下着を盗む等と…我輩への挑戦と取るべきであろうな。 」

自信満々のスネイプを、柔らかい芝に座り込んだが見上げる。そして、

「 違うの、盗まれたのは私のじゃなくてセブルスの下着なの…ほらっ!! 」


細い指が白いシーツを掴んで一気に引き下ろす。
洗い立てのシーツが庭に落とされる様を見詰めながら、スネイプは其の先を見て、息を呑んだ。
洗い立ての洗濯物が庭の土に汚れて二度手間になったとか、そう云う問題以前の問題が其処に在る。
無数のタオルやらハンカチ、靴下やローブといった洗濯物に混じって、スネイプの下着と思わしき品が其処から欠如していた。

「 如何して、如何してよっ…私のパンツはセブルスの可愛らしくも無いトランクスに負けるって言うの!? 」

揺ら揺らと浅い風に吹かれる水色の可愛らしい下着は間違いなくのもので、数箇所に欠ける洗濯バサミに挟まれる様に其処に在り。
以前スネイプに、「下着を外に干すな」と言われた際、如何しても太陽の光りを浴びた物でなくては厭だと言ってのけたが考えた策。
スネイプのトランクスで壁を作り、周囲からは見えないように其の中に自分の下着を干すという、一時的な策。
其れでも一度も盗られる事は無かった下着だが、今日は違っていた。明らかに誰かが盗んだ。其れも、の可愛らしい下着ではなく色気の無さすぎるスネイプ のトランクス全てを。


「 …可愛らしいトランクス等、頼まれても穿かぬ。 」

「 そう云う問題じゃないでしょっ! 私の魅力は貴方に負けるのね、下着一枚を取っても…。
 そりゃあ確かに私は未だ10代の小娘だし?胸は俎板に近いし、チビだし童顔だし?
 でも、其れでも、仏頂面でホルマリンラブで友達なんて独りも居ないと思われているセブルスよりは…っ 」

「 …仏頂面でホルマリンラブで友達なんて独りも居ないと思われている我輩と結婚したのは誰かね、 」

「 確かに、私はそんなセブルスと結婚したわよ?もうじき一年になるわよ?
 でも…セブルスのパンツを全部盗んで私のパンツを一枚も盗らないなんて私に対する冒涜よ!! 」


流石に吐きたくなる溜息を、ゆっくりとスネイプは殺した。
の下着が無事だった事は望ましい。実に素晴らしい。己の妻の下着を盗もう等という甚だしい行為、行使した勇敢な者が居ようものなら、地獄に行くよりも 恐ろしい目に遭わせて遣ると、燻ぶらせるだろう。
己の下着等、そこ等のゴミと同じ位の価値しか持たない。
盗むなら好きなだけ盗めば良い、其れでの下着が無事なら願っても居ないこと。
犯人もスネイプも、色々な意味で其の身が安泰になるのだから。


「 あぁもうっ…! 」

、過ぎてしまった事は仕方ない、其れより… 」

取り敢えず昼飯が食べたいと、項垂れて哀しそうな瞳で自分のパンツを見詰めるに告げようとしたスネイプの言葉に、誰かの言葉が被さった。

「 あの、済みません…此方、お宅の洗濯物ですか? 風に飛ばされて… 」
「 あ゛-------------------! セブルスのパンツ!! 」


現れたのはとスネイプの隣の家の住人。勿論魔法使い等ではなく、普通のマグルのため、スネイプの恰好に少しばかり訝しげな顔をした。
とは時折お茶をするらしい隣の家の妻は、項垂れた侭のを見て吃驚した様に駆け寄ると、其の小さな身体を起こし両の手にスネイプのトランクスを載せ る。
途端に笑顔が戻るに、スネイプは溜息を押し殺せなくなる。


「 それでは、私は此れで失礼しますね。 」
「 ありがとうございました。また、明後日にでもお茶しましょうーっ 」


律儀にスネイプに頭を下げた隣の家の妻とは対照的に、は小さな身体にスネイプのトランクスを抱えて空いた手で手を振っている。
隣の家の妻はスネイプを初めて見たのだろう、元々家になど居ることの出来ない職業のスネイプを再度見ると、やっぱり訝しげな表情を残して、最後にはに 微笑んで手を振り替えして帰っていった。


「 セブルスのパンツ…折角洗ったのに汚れちゃったね。 」
「 良いではないか、今日は洗濯日和だ。 今から洗濯して干しても乾くだろう。 」


スネイプのトランクスを大事そうに抱えているに苦い笑いを零すと、小さな其の身体を抱き上げて家へと向う。
良く晴れた梅雨時の午後、スネイプ家の庭には何故かスネイプのトランクスばかりが風に嬲られて。
明後日には、隣の家の妻が漏らしたのだろう、

ちゃんの旦那さん、如何見ても有名大学の教授よ?だって昼間からローブを着ていたんですもの。

そんな噂が広がって、大学名を聞かれるは何と言ったものか、困ったように笑うことしか出来なかった。










□ あとがき □

自分のパンツと男のパンツを一緒に干して、男のパンツだけ盗られたらショックですね。
スネイプ教授のパンツなら、奪取しそうですが、スネイプ教授は何時パンツを干してるんだろう…。


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