子馬






「 …貴様等、一体何しに来た… 」

「 何って、の出産祝いだよ? 間違ってもセブルスの為に来た訳じゃないから気にしなくて良いよ。 」





久方振りの休日、晴れ渡る空も蒼く澄み渡っている最中、一年間分の厄を一気に蒙った様な声に知らず知らずの内に米神に痛みが走る。
けたたましく鳴ったチャイムの音に億劫に身体を動かし玄関の扉を開けば、其処に居たのは満面の笑みで馬鹿でかい荷物を抱えて微笑むルーピンとブラック両 者、そしてポッター、グレンジャー、ウィズリー。
間違いたくも無い面子が一同に玄関に介し、昨夜盛大に泣き喚いた我が子のお陰で寝不足に陥った脳内から鈍痛が再び身体中を駆け抜けた。
終始魔法を使いたくないと言っていたを諭し、安眠魔法を施して子どもを寝かし付けたのが今朝方五時過ぎ。
連日の疲労と出産からの疲れが祟ったのか、の寝不足も日増しに強くなり、漸く連休が取得できたからと家に帰り着いたのが昨夜。
今日は昼過ぎまで共に寝ていようと言い合った矢先の突然の訪問。温かく迎えて遣る義理等有る筈も無い。





「 …帰れ。 」

「 だから言ったろ? コイツが素直にに逢わせてくれる訳は無いってな。 」

「 …人の妻を呼び捨てにするな、ブラック。
 其れ以上余計な口を叩くと、ディメンターを呼び寄せるぞ。 」





脇からしゃしゃり出る様に口を挟んで来た長身の男を一瞥し、これ以上無駄な時間を過して堪るか、と早々に玄関の戸を閉め置こうとした其の瞬間。
先程から一言も口を開かなかったグリフィンドールの三人が嬉々とした表情で妻であるの名を呼んだ。
先程漸く眠りに堕ちたばかりだと云うに、まさか目覚める筈は無いと振り返れば、何時の間に寝着から着替えたのか、普段着を着込んだが真後ろに立って五 人に手を振っていた。





「 いらっしゃい。 こんな辺境地に来るの、大変だったでしょう? 」

「 そんな事無いよ、。 僕達はルーピン先生やシリウスに連れてきて貰ったから楽だったよ? 」
「 そうそう。 それに、スネイプ教授の家だから相当凄い場所に有るって想像していたから平気… 」


「 …辺境地で悪かったな。 に逢いに来たのだろう、もう用事は済んだ筈だ。 さっさと帰れ。 」


「 そんな言い方はあんまりよ、セブルス。 折角来てくれたんだもの、上がって? 」





学生時代から余計な一言が多いと思ってはいたが、其の癖が今になっても治らぬ侭で居た事を心底後悔する。
早朝から突然何の連絡も無しに新居に訪ねて来たと思えば、厚かましくも上がり込もう等とが赦しても我輩は許さん。
況して、この状況下漸く眠りに付いた幼子を見たいだ等と抜かそうモノならば即刻魔法でホグワーツに送り返して遣らん勢い。
今にも無断で上がりこもうとする笑顔のルーピンに威嚇の冷眼差を送れば、其の中心に丁度良く被るウィズリーの顔面が蒼白し、絶え間無くを見詰るブラッ クに杖を向けんばかりに一瞥してやれば、其の端に隠れる様に位置するポッターが怯む。
グリフィンドール等が帰ると言い張ればルーピン達もおとなしく引き下がるだろうと鷹を括ってグレンジャーを見れば、既にと何か話して居た事に全く気付 かないで居た。





「 折角ですが…今日は此処でお暇します。 」

「 あら如何して? 折角此処まで来てくれたんだもの、せめて上がるくらい… 」

先生の顔色も余り良くないので、今日はもうお休みになって下さい。
 今度はきちんと連絡を入れてお邪魔します。 」





流石はグレンジャー。
女だけ有ってか、の体調が良くない事を良くも悪くも悟ってくれたらしい。
離れ難そうなブラック、ルーピンがを見詰るけれど、其れに鋭い視線を投げてやれば大人しく引き下がろうと云う勢い。
此処は一つ、置き土産とばかりにさっさと帰そうと言葉を選んでいれば、耳奥に聞き慣れた鳴き声が聞えてきた。
大方、話し声で睡眠から覚醒したのか腹が減ったのか、兎に角けたたましく泣く子どもの欲求を満たしてやらん事には泣き止む事が無いと此処数時間で悟った我 輩は、零したくなる溜息を殺して寝室へと踵を返す。





「 へぇ…意外。 まさかセブルスが子どもを愛子に行くなんて。 」

「 あれでも良いお父さん遣ってるのよ? 学生時代や今の魔法薬学教授からは想像も付かないでしょう? 」

「 …スネイプが子どもをあやす… 」





呆然とした音程でそう呟いたウィズリーとポッターの声、そしての小さく笑った声を聞きながら、寝室の扉を閉めた。
中に入ると確かに数時間前までは大人しく睡眠を貪っていた子どもが身体全体で何かを欲し泣き叫んでいる。
未だ座ることの無い首の後に腕を添えて抱き起こすと、が来るまでの僅かな時間に泣き止んではくれぬだろうかと浅はかな願いを籠めながら抱いてやる。
我輩とて、己がこの様な行為を進んで行うとは夢にも思わず。





「 子どもの名前、って云うんだってね。 」

「 そう、セブルスが付けてくれたのよ。 如何しても此れが良いって譲らないの。 」

「 じゃあこれ、が大きくなったら乗せてあげて。 僕等からのプレゼント。 」





リーマスの抱えた大きな箱の中から出てきたのは、小さな子供が乗るに最適の木製の子馬。
可愛らしい花冠を頭に付けた子馬は、何処と無く鹿に似ている気がするとは直感的に悟るが、敢えて口には出さずに居た。
先日生まれたばかりの子どもがこの子馬に乗るのは相当先の未来の話だが、其の頃にはスネイプが少しでも寛大に為っていてくれるだろう事を思いながら、 は有り難く受け取る。



リーマスがプレゼントを渡す其の瞬間、耳元で





「 如何して子馬か判るかい?
 に似た勝気な娘が、パパを馬代わりにして四つん這いで歩かせるのは流石に見た目に苦しいからね。
 盛大な配慮だろう? 僕等全員一致で此れに決めたんだ。 」





そう囁いた事実をスネイプに告げれば、折角泣き止んだ我が子を再び起さん勢いで





「 下世話だ。 二度と来るな、家に決して入れるな、は何が有っても奴等には見せん。 」





と怒鳴った事は言うまでも無い。
鹿に似た子馬に乗ったが、リーマス・シリウス・ハリー・ロン・ハーマイオニーの前に現れるのはそう遠い未来の話ではない。
勿論、に似て勝気に育ったにシリウスが【本当に似ている。大きくなったら母親譲りの容姿端麗・頭脳明晰に為って男が言い寄ってくるぞ】と言え ば、今にもディメンターを呼び寄せんばかりの勢いでスネイプが激怒し、リーマスが其れを宥めている光景も変わらず。










□ あとがき □

…スネイプが娘に馬代わりにされて部屋中を練り歩く姿…ちょっと見てみたいと思ったのは私だけでしょうか(笑)。


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