携帯電話
6月某日AM1:30。
ホグワーツ内ではゴーストさえも大人しく寝静まる夜半過ぎ。ヒタヒタと不気味に響く足音も聞えなければ、フィルチの怒鳴り声も届いては来ない。
どの寮の生徒たちも皆寝静まって夢現の世界に入り込んでは、明日のクィディッチの試合の結果が素晴らしいもので在る様にと祈りながら其の眼を閉じる。
何時もは勉強熱心な少女も、不眠症に悩む少年も、今日ばかりは何故か皆魔法でも掛けられた様に柔らかな寝顔の侭。
まるでホグワーツ全体が眠りの魔法にでも掛けられた様な静寂に包まれている矢先、グリフィンドール寮のとある監督生の部屋と、魔法薬学教授の自室に僅かば
かりの灯りが漏れ落ちている。
漆黒の闇夜に包まれた中に朧気に光る灯りの下、彼らの行動を少しばかり覗いて見ることにしよう。
ベットサイドに置かれた燭台の灯りが僅かな灯りを燈してくれる薄暗い室内、ベットに横になりながら読書に勤しんでいたスネイプの小脇でガタン、と小さく音
がする。
読み耽っていた本に栞を挟み胸元に置くと、気だるそうに片腕を伸ばしてサイドテーブルへ。
手手繰る様に何度か物を探す仕草をしては、指先に目的のものと思しき物体を確認すると掌で引っ手繰る様に持上げる。
暗い室内を淡い蒼に染める光りを放つ其れは、マグル式の携帯電話。
先日ホグズミードに行った際に、唯一ホグワーツでも使用できる魔法界仕様版マグル式携帯電話を恋人であるが見付け、一つをスネイプに贈ったのだった。
【 スネイプ教授? まだ起きていらっしゃいますか? 】
受信したメールの内容は唯、其れだけ。
流石にホグワーツの教師と云う立場上、ホグワーツにて堂々とマグル式の携帯電話を使用する事に非常に抵抗を感じたスネイプは其の侭に突っ返そうとも
思ったのだが、童心の様なの微笑みの前では流石に受け取らない訳には行かなかった。
実際、と出逢ってからと云うもの…マグル製品の物品に興味を抱いたスネイプからしてみれば、携帯電話の構造は勿論の事、一体何処が魔法界仕様なのかと
興味を惹かれっぱなし。
一応マニュアルも存在するのだが、携帯電話を持ち始めてから未だ日が浅いと言うに既にメールの送受信は愚か一般人並には使いこなしている。
其れも此れも、が毎日の様にさしたる用事も無いと云うにスネイプ宛てにメールを投げてくるのが原因であり結果なのだが。
【 起きている。 お前は未だ起きているのかね。 明日は試合だろう、早く寝給え。 】
文字を打つスピードも手馴れたもので、のメールを受信したと同時にメールを返信する。
最初の内こそ手間取ったものの、慣れてしまえば同じ動作の繰り返し。極めて時間が掛かるような物でもない。
しかし、スネイプがメールを返信する時間よりも早いスピードではスネイプにメールを返信してくる。
勿論暇だからと云う事由もあるのかもしれないが、其れ以上ににしてみればスネイプからのメールの返信が来た事自体に喜びを感じずには居られない。
筆不精だと云っては手紙の返事を録に書いてくれないスネイプが、メールならば数分単位で返信が返って来る。
しかも都合が良い事に、梟便では無い故に周囲にバレる事も無ければ互いのペットに何往復もの負担をかける事も無い。
【 眠れないんです。 其れに、明日は試合に出ないんで寝不足でも平気です。 教授は寝ないんですか? 】
【 我輩は古書を読み終えたら寝る。 お前も早く寝給え。 眠れずとも横に為っていれば直に眠れる。 】
【 …其れが、彼是二時間位こうしてるんですが、一向に眠気が… 】
【 馬鹿者。 何故早く言わんのかね。 】
【 スネイプ教授、お忙しいと思って。 】
さて、如何し様かと受信メールを見てスネイプの思考が停止する。
確かに忙しい事は忙しいのだが、近日中に終らせなければ為らない作業は今日中で片付け終えて居る。
こうして古書を読む時間が出来たのは今日明日で終らせなければ為らなかった仕事が全て終った故であり、其れに関して言えば、魔法薬学に富むの知識を拝
借しながらレポートの半分の直しを手伝ってくれたからであり。
今日も今日とて、何時もの様に居座るのかと思いきや、仕事が終ったと知るや否や明日のクィディッチの試合を見に行くからと言っては寮に戻って行った。
今から思い返してみれば、スネイプのこの時間を作る為にが手伝い、仕事を終えたと同時に寮に戻って行ったのだと気が付く。
余計な気を利かせずとも良いと思いながらも、からのメールを受信するまではすっかり其の事を抜け落としていた己の惰性に腹が立ち。
胸の上に置いた侭の古書を携帯電話の代わりにサイドテーブルに置くと、スネイプは暫く考え込んだ様に眉間に皺を寄せ。
数文字分の英単語を打ち終わると、ベットの上に携帯を投げ置いて椅子の背凭れに投げ捨てたローブを引っ手繰って部屋を出た。
カツン、カツンと単調な足音だけが静まり返ったホグワーツに響き渡る。
【 待って居給え 】
唯其れだけが書かれたスネイプからのメールを受信したは、ベットの上で頭に疑問符を並べながらも返信を打ち始める。
一体何を待てば良いのか、と。
文字を入力し、送信ボタンを押して携帯を閉じると、大きく伸びをしてはベットに突っ伏す。
如何しても眠りが訪れないのだから、こうなったら極限まで起きていようと妙な気合を入れながら、スネイプからの返信は何時来るのだろうかと期待に胸を膨ら
ませ。
大方スネイプとのメールの遣り取りはスネイプの二つ返事を受信した時点で終了となる。
今は疑問系で返信しただけに、確実にスネイプから返信は届く筈。寝ているのなら未だしも、先のメールで起きて本を読んでいると言った時点でよりは大分
眼も冴えているだろう。
握り締めた携帯が蒼く光るのを待ち遠しく思いながら、はスネイプからの返信を待つ。
一分経ち、二分経ち。十分が過ぎる頃には流石にメールの返信が無い事に疑問を感じて閉じた携帯を開き掛けた矢先、の部屋の扉がニ三回のノック音を立て
て静かに開いた。
「 …スネイプ教授…? 」
「 そんなもの握り締めてて眠れるのかね。 眠れぬのならば特別に仕事を与えてやる。 」
「 仕事って今日片付いたので最後じゃないんですか…? 」
「 黙って付いてくれば判る。 其れとも何かね、我輩とは一緒に寝たく無いとでも? 」
其の言葉に慌ててが起き上がると、掌から開かれた侭の携帯が零れ落ちる。
振り返って拾い上げようとするを制し、腕の中に抱き込む様にを引寄せると、携帯電話はスネイプの魔法によって畳まれてサイドテーブルへ。
二人だけの時間に、携帯電話は必要無い。
そう云う様に置き去りにされた二つの携帯が持ち主によって開かれるのは、翌日の昼過ぎだったと云う。
□ あとがき □
今の時代、携帯無いと超絶不便ですよねぇ(笑)
私はこの間携帯を忘れて友達との待ち合わせに行き、其処に着くまで気付かずかなり苦労を経験しました…
携帯は必ずチェックしましょうね(笑)
+++ ブラウザバックで戻って下さい ++++