名前
「 」
愛しいあの人が、私をそう呼ぶ。
だから私は何の疑いも持たずに、私は「」なんだ、と自覚する。
生まれてから今まで、色んな人に色んな呼び方で呼ばれてきたけれど、此処まで綺麗に私の音を発音したのは貴方がはじめてで。
低くて透き通るようなその旋律は、私の心を落ち着かせてくれる。
短い短い名前だけれど、それを紡いでくれる時の貴方の言葉は、それ以上の価値を持っていて。
有り触れた名前だけど、貴方が紡いでくれる言葉だから、私の中では何よりも高い存在になってしまっていて。
珍しい名前で人に覚えて貰うより、
他の誰かに呼んで貰うより、
有り触れた名前でも貴方に呼んで貰ったほうが何十倍も嬉しい。
「 どうしたのかね、。 」
返事をしない私に苛立って、スネイプ先生が一瞥する。
静まり返った教室の中。
私を見つめる他の生徒達の視線は既に視界には入らない。
ただ真っ直ぐに私を見つめて、溜息を付き、眉間の皺を寄せて、苛立ちを全面に押し出して、今にも血管から血が噴出しそうな位に青筋が浮き立たせて、もう一度、スネイプ先生は私を呼んだ。
「 ・、返事をしなさい。 」
ようやく呼んでくれた、私の名前。
スネイプ先生だけに呼んで貰いたい私の名前。
他の誰でも無い、貴方の口から発せられる貴方の言葉で聞きたい単語。
貴方にとって、例えそれが生徒の在籍を確認する為だけに読み上げる名簿の一節だったとしても。
私はスネイプ先生に"名前"で呼ばれたい。
「 何でしょうか、スネイプ教授。 」
傲慢な態度。
見縊った様な表情。
ふざけている様な悪意を込めた発音。
苛立ちを更に増やすような要素をたっぷりと織り込んで私はそう返事を返す。
ばたん、と重い音を立てて閉じられたその出席簿は、スネイプの手を離れて机の上で広がっている。
腰を机に寄り掛からせて、腕組みをしながら蔑む様に失意を浮かべた表情で私を睨む。
貴方のその表情が、私は好き。
その厭味な程に整った表情と侮蔑を噛み砕いた態度からは想像できない位に綺麗な音が紡がれるのだから、世の中は不思議で。
貴方にもっと呼んで欲しくて、私は私を認めない。
「 放課後、我輩の部屋に来るように。 」
後ろで同情の声が上がる。
同じ寮の生徒には、恨まれるような視線でさえ見られた。
でも、私には関係無い。
やっと、
やっと此処までこじつけた。
スネイプ先生、聞いてください。
どうして私が一度で返事をしないのか。
何故、何度も同じ事を繰り返すのか。
答えは簡単です。
スネイプ先生、貴方に私の名前を一回でも多く呼んで欲しいから。
その綺麗な声で、発音で、単音で。
私の名前を呼んで欲しいから。
スネイプ先生…それって、やっぱり贅沢ですか?
□ あとがき □
名前…
一番名前を呼ばれたいのはやはり大好きな人からでしょうか。
スネイプ教授に名前を呼んで貰いたいですよね〜vあの素敵Voiceで呼ばれたら腰が砕けます!!
そして、教授だけに飽き足らず、殿下にも呼んで欲しい今日この頃…(笑)
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