「 Memory's Card 」
記憶を保存しておける、カードがあったら…
その記憶をいつでもリロードできるとしたら…
忘れ去った過去も、
思い出したい過去も、
忘れたくない過去も、
取り戻したい過去も…
全て思いのままに、やり直しがきくとしたら、
貴方はそのカードを手に入れたいと思いますか?
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「あれ…なにこれ?」
ルシウスの部屋を掃除していたら、机の奥のほうに、プラスティックの板のようなものが光った。
何かと手をのばして探ってみると、意外に小さく薄いもので。
光の下に晒してみて、初めてそれがどんな形状をしているかが判る。
5cm角位の大きさで、厚さは1cmあるかないか。
下の方には、どこかに差し込むのか、ヘコんでいる。
そう…例えるなら、マグルの世界にある、ゲームに使うメモリーカード。
「あぁ、それは”Memory's Card”だ」
書斎の本を整理していたルシウスが徐に顔を上げて此方を見る。
が手にしたプラスティックの板を見て、即座にそう答える。
どうやら、の感は当たっていたらしい。
「”Memory's Card”??マグルの世界のゲームの??」
言って、はっと気が付いた。
自然と口に出た言葉だったが、ルシウスは『マグル』を毛嫌いしている。
そんな彼の前で、その言葉を口にするなんて…浅はかにも程がある。
「正確には、もうちょっと高度かつ精密なものだが」
”ごめんなさい”
そう言おうとした矢先に、ルシウスから意外な言葉が返ってきた。
沢山の本に囲まれた一角から身を乗り出したルシウスは、休憩とばかりに、ソファーに腰を下ろす。
『おいで』
そう言っているように手招きするルシウスに、仕方なくも手にしていた杖を机の上に置くと、傍に座った。
「これはな、記憶を自由に操れるものだ」
「…操る?」
いまいち意味の判らないは、疑問符だらけでルシウスに聞きかえす。
『お前には難しかったか、』
と苦笑するように笑って、ルシウスはの頭をそっと撫でてやった。
「 保存しておきたい記憶を、このCardの中に入れる。
そして、一回だけ、その場所からリロードできる。
つまりは、人生のやり直し、だな」
「どうして一回、なの?」
「 禁じられている、からだ。
そのCardには魔法が掛かっていて、一回使うと消失してしまう。
上書きは何回できても、リロードは一回限り、というわけだ。
そして、上書きされれば、紅く色づく。」
『判ったか?』
と問われれば、は素直に頷く。
しかし、納得したら、したで、新たな疑問が浮かんでくる。
この、禁じられた魔法の掛かった”Memory's Card”。
ルシウスのものだとしたら、まだ、リロードしては居ないことになる。
しかも、このCardは、綺麗な朱色を帯びている。
…と、いうことは。
ルシウスは、このCardを使ってはいないが、何かを記憶している、ということになる。
一体何が記憶されているのだろうか?
奥さんとの出会いのシーン?
奥さんと結婚した瞬間?
それとも、ドラコが生まれたとき?
それとも、もっと遥か昔の記憶?
知りたいけれど、知りたくない。
聞きたいけれど、聞けない。
気にしないようにしたいけれど、それは無理な話。
気にしないようにすればするほど、どんどん内容は膨れ上がって。
想像したくないことまでもが、簡単に頭の中を掠めていく。
…でも、真実を知る勇気など、なくて。
そんな心の葛藤が、を無口へと変えていく。
顔は困惑の表情を浮かべ、ルシウスの言葉は左耳から右耳へ、状態。
いつもなら飛びつくはずのケーキにも手付かずなままで、紅茶も冷めかけている。
そんなに、ルシウスは喜びをこめた溜息を漏らす。
「…、聞きたいことがあるのだろう?」
ルシウスの言葉は酷くストレートで。
それがかえって、の心に深い棘を残す。
聞いては、いけない。
でも、
聞かなきゃ、気になって仕方ない。
幼い心で一生懸命に考えては見るけれど、自分が傷つかずに居る方法はなくて。
だからといって、現実を受け止めるほど、は大人ではない。
を抱き締めてくれている、この人が、自分だけのものではないことなど、とうの昔に知っていた事実。
以外の誰かを愛した過去も、
以外を必要としていた過去も、
という存在を知りもしなかった過去も、
全てがこの、たった一枚のCardに詰まっている。
自分とは、違う世代を生きてきたルシウス。
知らない人と沢山出会って、沢山の恋を経験したであろう。
掛け替えのない思い出や、出来事。
それら全てが詰まった思い出のCard。
…ルシウスは…
いつかこのCardを、使う日が…来るのだろうか?
そんな考えに行き着いたら、涙が溢れそうになった。
自分の元からルシウスが居なくなる。
この幸せな日々が、たった一枚のCardの所為で白紙へと戻ってしまう。
自分とは、全く違う世代を生きて、
自分を忘れてしまうのだろう。
もしかした、もう二度と出会うことなど、ないのかもしれない。
…こんなCard…必要ないのに…
「…………」
そう思った瞬間。
耳元で、ルシウスが低く小さく何かの呪文を詠唱する。
それは、たがだがホグワーツに2年在籍しただけのが判るほど稚拙なものではなくて。
瞳を閉じたルシウスが、詠唱を終えて、再び瞳を開けた、時。
ぱぁぁぁぁぁぁっ、と煌く閃光を放ちながら、一瞬で、Cardは存在を消した。
机の上にあった忌々しい存在だったCardは跡形も…まるで、最初から存在などしていないかのように消えうせる。
「…ルシ…ウス?」
何をしたのかが、いまいち掴みきれて居ない。
そんなを他所に、ルシウスは淹れたての暖かい珈琲に口をつける。
「 の居なかった過去など、私には必要ないからな。
だから、”Memory's Card”な必要ない」
「 そして…、
これから以外愛する気など無いのだから、必要ないものは
消してしまえばいい」
そう言って、ルシウスは微かに微笑んだ。
その直後、瞳にうっすら涙を浮かべたが、ルシウスの首に腕を回して、抱きつき離れなかったという。
今後…、
ルシウスが、この”Memory's Card”を手に入れることは無かったという…。
記憶を閉じ込めておける、メモリーカード。
やり直しが聞く、魔法のカード。
もし、それを手に入れたとしたら、貴方は使いたいと思いますか?
それとも、彼のように…。
□ あとがき □
…微妙。
ゲームをやっていて、思いついただけという…(笑
みなさんはやり直したい過去、ありますか?
私は、未来が見えるCardがあったら…欲しいですね(苦笑
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