シャム双生児
自分でも気付かない内に、私は彼を愛してしまっていたのかもしれない。
Tom Marvoro Riddle。
ホグワーツ魔法学校の歴史史上忘れる事は出来ず、また未だ記憶に新しい「秘密の部屋」の事件から数ヶ月が経っていた。
クラスメートで友人でもあるハリーが、グリフィンドールの剣でリドルの宿った日記を貫いたと聞かされた時は想像上の物語を聞かされているかの様に実感が無かった。
実際問題ジニーに、リドルに乗移られた頃の話を聞かされたところで所詮は他人事。
私には関係ないし、撒き沿いも食らってなければ、事件に率先して関わるほうでもない。
寧ろ、その様な面倒事には極力関わりたくないと言うスリザリン気質が在るような気さえ自分でする。
安穏とした学生生活を送って平穏無事な日々が過ごせればそれでいいと思う様なそんな生徒が私。
今までも、そしてこれからも私は何一つ変る事無く日々を過ごしていくのだと、そう思っていた。
「 …日記帳…?…まさか、ね 」
それはある日の午後。
ダンブルドア校長に呼び出された私は普段は通らない校舎を抜けて、ひっそりと静まり返る裏通りを通りながら寮に戻る途中だった。
普段は通らないとは言え一度も通ったことが無い訳でもない故に、陽が沈み掛けて薄暗くなった状態でも気にする事無く静かに歩いていた。
その矢先。
草叢に埋もれるようにして隠れるように投げ置かれたボロボロの黒い本らしきものが横たわっているのが偶然見て取れた。
まるで自分に拾ってくれ、と言っている様に偶々目に付きそして眼を離す事が出来なくなった私は近くまで寄り、恐る恐るそれを拾い上げる。
水分を含んだ様に重いそれは明らかに白紙の日記帳。
ジニーの話していたそれが頭の中にフラッシュバックして、思わず振り落としそうに為るけれども何故か身体がそのまま動かない。
そして、澄んだ声が脳裏に響き渡った。
− 拾ってくれて有難う。頼めるならこのまま僕を連れて帰ってくれないかな? −
「 …貴方…まさか… 」
− ごめんね、ゆっくり話が出来る程体力が回復している訳じゃない…んだ… −
そのまま透明な声は消え入る様に消滅した。
脳裏に確かに響いた其の声がジニーの話したTom Marvoro Riddleだとすぐさまに気付く。
声が消えると同時に力の戻った身体には気を留めずに、ゆっくりと視線だけを黒い日記帳に移す。
気味の悪い呪われた日記帳。
ジニーの体力を奪いつくそうとしただけではなく、ジニーとハリーの命を奪おうと目論んだVoldmortの嘗ての姿。
その事実は脳裏に在るのだけれど、聞こえた酷く透明で澄んだ声に心を惹かれてしまったのかも知れない。
己も同じ道を辿る事になるのかも知れないと承知していながら、私はその日記帳を人目につかない様に教科書と教科書の間に挟み込んでその場を後にした。
どうしても…リドルの意識の入った日記を捨て置く事が出来なかった。
「 ねぇ、リドル。ここの問題の解答って如何だと思う? 」
- これは…教科書の此処の部分が当て嵌まるんじゃないかな? -
「 え?!私絶対に違うと思ってたのに…。
リドルってやっぱり頭良いんだね。 」
- 僕にも不得意なものはあるよ。 魔法薬学は偶々得意だったんだ。 -
「 じゃあ学生時代も主席だったんだ…? 」
言った瞬間息を呑んだ。
決して触れては為らない、寧ろ自分からは触れない様にしようと心に留めていたリドルの過去に若干でも触れてしまうとは。
広げた魔法薬学のレポートの余りの酷さに疲労が溜まっていたとは言え、配慮が無いというかデリカシーが無いというか思い立ったら速攻で口に出してしまう己の性格を恨む。
これが切っ掛けとなって、リドルは自分の元から離れて誰か他の人を頼るのかもしれない。
そんな不安が一気に脳裏を駆け巡り、羽ペンが指先から転げ落ちた。
カラカラと回る音がして、そのまま机の先から落ちてしまった為に先端が折れる音がする。
絨毯に滲む黒インクに目も暮れずに如何したら良いのかと思い悩む私に、耳元を優しい彼の声が掠めた。
- …、余計な事は考えなくてもいいよ? -
「 え…? 」
- が僕を選んだ訳じゃない。僕がを選んだんだよ -
脳裏に微笑んだリドルの表情が過る。
力が完全に蘇った訳ではないので、未だ決して姿が見れるわけではないのだけれど、一度だけ垣間見たリドルのその姿が脳裏に浮かぶ。
紅蓮の瞳を携えて、酷く戦々恐々な迄に柔らかく微笑むリドルの姿。
初めで見たその瞬間に、恋に堕ちた。
決して良い人ではなく…寧ろ自分の友人達を殺そうとまでした人物。
完全に復活する為の生贄の為だけの自分であっても…それでもリドルのこの微笑の前では敵わない。
「 ねぇ、リドル…貴方が復活するまでは私の中に居てくれる? 」
- 手離す筈ないよ。
…僕と君は一心同体なんだから…ね? -
優しいリドルの声。
それは私の中のヒトである部分を否応無しに崩壊させて行く。
リドルが私を必要とするのは、ヴォルデモートとして復活する為に仕方の無いこと。
それでも、其れまでは私を必要としてくれるなら私はリドルをこの体内から追い出すことは決して無いだろう。
身体の一部で結合している一卵性双生児であるシャム双生児の様に…私とリドルは心の一部で結合している。
今切り離したら、私もリドルも壊れてしまう。
掠れた白靄の様にゆらりとした蜃気楼でしか実体化出来ないリドルが、ふわりと抱き締めるように私を包み込んだ。
感じない筈のその温もり。
抱かれて抱き返そうにも通り抜けてしまう。
柔らかく笑んだリドルは包み込むようにしてそのまま静かに瞳を閉じた。
- 僕はずっと…ずっとの傍に居るよ -
耳奥で響いたその声は、痛いほど心に突き刺さる。
知らず知らずの内に彼を愛してしまっていた。
甘美なその言葉は、己を利用する為だけのモノであったとしても、それでもリドルを消す事は出来ない。
この心が崩壊するまで、私はリドルの傍に居続けるのだろう。
「完全な人生か、死か」 身体が繋がっているシャム双生児はそう決断を迫られる。
心が繋がっている私とリドルにしても、それは同じ事だといえる。
愛しいモノはこれ以上なく、 捨てれるモノなら全てを捨てて、貴方に捧げよう。
抱きしめて全てが手に入れば良いのに。
この体と心が一緒になれたら良いのに。
せめて…、二人が本当に繋がっているのは心であるとそう信じたい。
□ あとがき □
ごめんなさい…っ(泣)!!!
どうしても書きたくて、一度書いてみたくて…手を出したら止まらなくなりました、リドル夢。
やっぱり蛇寮はいいねぇ(笑)!
ヴォルデモート卿も大好きだけど、リドルもやっぱり捨て難い。
今までは読む専門で書こうという気は一切起きなかったけれどもついにやらかしてしまいました(苦笑)
未だ掴みきれてなくて口調とか可笑しいと思いますが、これから一生懸命精進いたします…!
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