階段
ホグワーツに存在する自由気ままな動く階段とは異なって、私の家の階段は動く事等絶対に無い。
行く手を遮る様に邪魔を企てる動く階段等煩わしい以外の何物でもなく。
ホグワーツに在籍していた頃こそ仕方なく階段を利用していたものの、卒業し家を持った今となっては懐かしいとさえ思わないほどに私はあの階段を嫌悪していた。
有る朝、所用で出かけたホグワーツで偶然にもその階段を上らなくてはならない事態に陥り、苛立ちを全面に出しながら私は動く階段を上る。
昔と変わる事無く動き出すその憎らしい階段と格闘しながら、家に帰ったのが悪かったのかも知れぬ。
自宅では確実に動く筈の無い階段を動くかも知れぬと、心の何処かで思案していたのだろうか。
夕食を終えて寝室で一休みしようとと共に階段を上った時に、それは起こる。
「 、如何した。 」
気付けば、私はよりも先に階段を上りきってしまったらしく、私が二階へ足を落とした時にはは未だ中二階に上り掛けたまま。
一緒に上ってきたはずが、何時の間にかの歩幅も考えずに一人上りきってしまったことは安易に想像が付く。
大方、昼間味わった動く階段での一件が脳内から消滅されずに残っていた為に起きた無意識の上での行動であろうが。
けれど、普段であればすぐ様に走りあがってくるが今日は、その場に立ち尽くしたまま悲しそうに笑った。
その表情に、私は降りて行こうと踵を返すも、の言葉が足枷となってその場に留まる事を余儀なくされる。
「 私、昔考えたの。ルシウスと私の年齢差は階段みたいだって。
私よりもルシウスが先に生まれて階段を上ってしまったから、私は絶対にルシウスに追いつけない。
年齢の差は、階段を駆け上がる様に簡単には埋められないものだ、って。
それを今思い出しちゃった。 」
悲しそうにが笑う。
私との年齢差は一回り以上は余裕で有る。
婚姻の際も大分周囲に反対されたが、私は紫苑を手放す気などなど更々無く、もそうだと自負していた。
年齢と言う超えられない差に関しての私の個人的見解など、埋められない時間に意見を述べても仕方の無いことだと思えるけれど、其処に至るまでにはやはり年の功という物が存在して。
若干20歳にも満たないにしてみれば、私の考えに至まで大人に成れるほど成熟してはいないのだ。
傍に居すぎて忘れ掛けていたそんな当たり前の事実にふと気付かされ、考えさせられる。
年齢の差と言うのは、此処まで少女を追い詰め、傷つけるものなのかと。
「 年齢と階段を重ねるなど馬鹿馬鹿しい。
階段は単なるモノに過ぎない。 」
「 ルシウスならそう言うと思った 」
「 私が先に階段を上がってしまったのは仕方ない。お前が後から上がってきたのも避けられぬ事実だ。 」
私のその言葉を聴きながら、が一歩階段へと足を掛けた。
「 だが、私は此処でお前を待つ。意味が判るか、 」
その言葉に、は漸く顔を挙げ、私を見た。
判らない、といった表情を浮かべる子供のような瞳で見据えられ、私は思わず苦笑する。
それでも、は歩みを止める事無く私の元へと近づいて来るように一歩ずつ階段を踏みしめ。
大した段数も無い階段が、無情なほどに長いものに感じられるのは、私との距離が離れている所為であろうか。
そんなふざけた感情を心に宿しつつ、私はスロープに凭れ掛りの到着を待つ。
軋む事さえない階段は、無音の中で生きているような感じさえ起きて。
「 上った階段、距離は違えど、此処から二人歩けばいいだろう? 」
「 え…? 」
「 私が先に上ってしまったのならば、こうしてお前を待っていればいいだけの話 」
そう言ってやれば、いつものようにが微笑んだ。
何時も上る階段は、これから先延々二人が上るものに成り果てて。
始めに上った階段が異なって、距離も何もかも違う二人ではあるが、終わりが一緒ならばいいではないか。
「 ねぇ、ルシウス…明日、やっぱりロンドンに買い物に行こう! 」
「 明日は庭の手入れをすると言っていた筈だが? 」
「 折角の休日、ルシウスとマグルの世界に出かけられるチャンスなんて滅多に無いじゃない 」
微笑んだは、私の手にそっと手を重ねてきた。
握り返してやれば温かさが掌を伝わって心に届く。
久しぶりに二人で一緒に上る階段は、これからと共に歩む象徴の様で。
未来と言う階段を二人で上れれば、それでいいではないか。
過去など言う過ぎ去ったものよりも、今これからを見てみるのも、悪くない。
□ あとがき □
…階段でおもいついたのがこれしかないという…(笑)
階段の距離って微妙ですよね。私は出来れば一人で上がりたいですが、やたらと距離が開いてしまうのは切ないです…(汗)
やはり適度な距離が一番ですよねv開きすぎると足引っ掛けそうですから…(笑)
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