Child’s mind







愛する人に振り向いて貰う為、愛する人にちゃんと見て貰う為、少女は今日も健気に頑張る。
それが毎回失敗に終ったとしても、少女がめげる事はない。
天性の楽観主義というべきか、失敗を失敗とも思っていないのか。
いずれにしても、少女の見せる稚拙な試案の数々を私は何時しか楽しみにしていたのかも知れぬ。
今日もまた…幼稚な笑顔を向けながら私も元にやってくる。












「 ルシウス、今日こそは”Yes”って言って貰うからね! 」












ホグワーツに通う少女は、休みの度に、何らかの理由を付けて私の元へと訪れる。
あどけなさを全面に押し出して微笑む少女は、実年齢よりも大分幼く見えた。
実際、私よりも一回り以上年齢が離れているのだから私がそう感じるのも無理は無いことで。
故に、何故にこの少女が私に興味を寄せるのかが判らない。












「 オレンジジュースでいいか。 」







「 今日は紅茶でいい 」












さらりと返ってきた台詞に思わずグラスを落としそうになる。
今まで一度たりとも紅茶など飲める素振りを見せたことの無いが、強い意志を込めた瞳で私を見返す。
膝に置かれた小さな手が、ぎゅっと握られる。
頑なにジュースを拒否するを横目で見ながら、サイドテーブル脇のカップを手に取り、紅茶を注ぐ。
熱湯が惹き立てるダージリンの茶葉の薫りが、部屋に蔓延し始めた。












「 MilkとSugerは其の籠の中に有る 」












ソーサーにカップを乗せ、律儀に目の前に差し出してやる。
湯気の立つカップの中は琥珀色に染まった紅茶が揺らめいていた。
同じ紅茶を同じカップに注ぎ、ようやくソファーに腰を落ち着け、琥珀を口へと運ぶ。
テーブルの中に有るミルクと砂糖に手を付けずにそのまま喉に落としてやれば、その仕草を頑なに見つめると瞳が合う。












「 冷めても美味いが熱い方が味が際立つ。 」












カップをソーサに戻して、そう告げれば、が意を決したようにカップに細い指を掛けた。
籠に入ったミルクと砂糖には眼もくれず、一呼吸置いたように躊躇するとそのまま口付ける。
咽返るような苦味が口の中に広がることは、誰にでも予想できた事。
それを証するかの様に、は喉元を押さえながら咳を切る。












「 お前には早すぎただろう? 」







「 あ…熱くて咽ただけだもん。 」






「 戯けた事を。 」












妙に子供扱いされる事を忌み嫌うは、キッと鋭い視線で私を一瞥した。
さり気無さを装って差し出してやった籠を、業と自分とは離れた私の方へと押しやると、そのままもう一口飲み込んだ。
途端に、苦さが表情に現れる。
それを無理やり全て喉奥に押しやると、”お代り”のカップを差し出した。












「 オレンジジュースと交換か?
 それとも、未だ無理して紅茶を飲むか 」






「 勿論、紅茶!! 」












顔では”もういい”と言っている癖に、何処から沸き上がるプライドなのか紅茶を所望する。
その頑固なまでの態度に思わず苦笑さえこみ上げて来た。












「 子供は子供らしいほうが可愛いのだがな 」







「 私はもう子供じゃないんだから!! 」












二杯目の紅茶をカップに注ぎながら、促してやっても当の本人はご機嫌斜め。
子供扱いしているつもりは無いのだが、自分の息子と同い年と有らばやはりそう見てしまうのが常。
ぷいっと頬を膨らませて横を向く仕草など、子供以上に子供染みていて。
気に掛けた仕草や言動は大人の真似事であったとしても、不意に自然と出る仕草はやはり年齢そのまま幼い。
一生懸命に背伸びをしている風にも見て取れるその行動は、所詮は今に始まったことではない。












「 そう言えば、学期末テストで主席だったそうだな。 」







「 え?…どうして知ってるの? 」







「 息子から聞いた。
 流石スリザリンの幼姫だけある 」







「 そう、ドラコが… 」












ちらりと見てやれば、酷く悲しそうな顔をして俯く。
息子の話をすると決まっては悲しそうな表情を見せる。
やはり、私の息子と同い年というのがネックになるのか。
それとも私が妻子持ちだからだろうか。
いずれにしても、が私の家庭関係に口を出すことは愚か、聞いてきたことすら記憶に無い。
自己防衛か、聞けないだけか、聞かないだけか。












手にしたカップをソーサではなく、テーブルに置くと、膨れっ面のままのの前に立つ。
きょとんとしたままのが、真っ直ぐに私を見た。
二杯目の紅茶は、主に飲まれる事無く冷え逝くのを待っていた。
ゆっくりと手をの方に伸ばしてやれば、叩かれると勘違いしたのか身を竦める。
子供染みたその態度。
これで子供扱いするな、と言われる方が無理な話。












、良く頑張ったな。 」












普段は見せもしないような柔らかい表情を浮かべていたと自負する。
驚いたような表情のまま固まる
屈みこむ様に少しだけ腰を落として、小さな頭をそっと撫でてやる。
柔らかな絹の如き手触りの上質の髪が、掌を伝って脳に届く。
そのまま滑らせるように後ろの結い髪を撫でてやれば、緩く結わえただけのリボンがするりと抜け落ちて。
さらりと流れ落ちてきた髪が、ふわりと広がって弧を描いて落ちる。
幼姫が一瞬で大人びた表情に変った瞬間。
不覚にも私は息を呑んだ。












「 有難う、ルシウス 」












何時もの幼い微笑が、少しだけ大人びた微笑へと変化した。
それでも嬉しそうに無邪気に微笑うこの少女は、息子と同い年。
背伸びをすることしか覚えてこなかったかの様な態度に、自然と笑みが漏れ。












「 祝いにディナーでも行くか? 」







「 本当?!
 じゃあ、急いで支度しなくっちゃ! 」








「 その様でも充分可愛い 」








「 …… 」












どうやら褒めたつもりが逆効果だったようで。
無邪気に微笑ったの表情が一変に険しいものへと変化した。












「 やっぱり着替えてくる。
 ”可愛い”なんて子供みたいな俗称、要らない!! 」












頬を膨らませた少女は、急ぎ足で着替えに向かう。
その後姿を腕組をしながら見送る。
ディナーは7時。
それまでに、如何に変身するかを楽しみに、私は冷めた紅茶に口付けた。












今日も幼姫は奮闘する。
ルシウスに少しでも”大人”として見られるように。
けれど少女は気づいていなかった。
ルシウスと二人で逢って居る時点で、”独りの大人”として見られているという事に。












■ あとがき ■


素敵な夢を下さったほんのささやかなお礼としまして、 蒼摩 花耶 様へ捧げますv
リクエスト内容は…

 ・ルシウス殿下夢。
 ・子ども扱いしかして貰えない主人公が奮闘。
 ・結果的にはくっつけずに、微笑ましい感じで。


…あんなに素敵な夢を頂いたというのにこんなにちゃっちい夢で申し訳有りません(汗)
殿下がヒロインを子供扱いしているのかも、ヒロインが奮闘しているのかもイマイチ微妙で…
最初はかなりノリノリで書いてたのですが…途中から壊れ始めたみたいです(爆)
因みに、冒頭で書いたヒロインの「Yesと言わせて見せる」という台詞の意味もあったのすが…どうにも素晴らしく長くなりそうなので全面カット(汗)
機会があったら書きたいですね。
微笑ましいかも微妙ですね…なんだか微妙だらけで申し訳ないです。
返品書き直し承りますので、お気軽にお願いします!!
愛する花耶さんに、愛と一緒に捧げますvv




++++ この作品は蒼摩 花耶様のみお持ち帰り可能です ++++











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