Disturb
その日は、朝から霹靂が降るくらいに…不機嫌だった。
気に入らない。
本日、数十回目かの溜息を、
は零さずにはいられなかった。
一体なんでこうなったのだろうか。
今日は久しぶりの休日。
ルシウスと、出かける予定だった。
ルシウスが、「久しぶりに休暇が取れた」と連絡をくれたのが、昨日。
支度をして、急いで家まで来たのが今朝方。
早く逢いたくて、早起きして、箒を飛ばして此処まで来たのに…
なのに…
ついた時には、既に先客が居た。
「伯父様、だっこして」
ソファーに座って、オレンジジュースを飲んでいる、
より3つほど年下の女の子。
綺麗なブロンドの緩やかなウエーブの髪を肩下まで伸ばしている。
例えるなら、幼くなった、ハーマイオニーの様。
ルシウスと同じ、アイスブルーの瞳と真っ白で美しい肌。
『美少女』という代名詞が本当に似合いそうな、そんな女の子。
自分とは、違う…純粋な血を受け継ぐ女の子。
が、ルシウスの家に着いたとき、既にルシウスはこの女の子と一緒に居た。
申し訳なさそうに、『ティアラが帰ったら…』そう言っているような表情で、女の子と一緒に出迎えてくれた。
本当、有り難い事に、紹介までして貰ったけれど、
には関係が無い。
ティアラも同じようで、一瞥だけすると、そのままルシウスの手を取って、リビングへ戻ろうとする。
…私の、ルシウスなのに。
そう思った
の心は、既にルシウスには届いていなかった。
「ティアラ、大人しくしていなさい」
と向かい合って座っているルシウスは、隣に居るティアラにそう告げる。
けれど、そんな言葉にもメゲナイ可愛い子供なティアラは、ジュースをテーブルにおいて、ルシウスの膝によじ登る。
此処は自分の場所だ、そういうようにルシウスの膝に落ち着いたティアラは、向かいって居る
をまじまじと見つめる。
「 …駄目ね、不合格。
顔は綺麗だけど、私、黒髪嫌いなの」
幼いながらに、そう吐き捨てるティアラ。
けたけたと無邪気に笑いながら、机のジュースを手に取る。
こんな、小さな子供に対して、嫉妬するわけには行かない。
ルシウスに、何と思われるかも判らないのだから。
もうじき、この子供は帰る…、そう思って、耐えてきた。
けれど、最初にそう思った時から既に…数時間は経過していた。
「伯父様、私、大きくなったら伯父様と結婚するわ」
天使のような笑みを浮かべて、ティアラはルシウスに話しかける。
完全に、その瞳には、彼しか映っては居ない。
大方、ティアラにしてみたら、
の存在は、女中か、その辺の高価な置物くらいにしか考えていないのだろう。
頷く事しかしないルシウスに、それでもめげずに語りかけるティアラ。
それは、幼いながらに凄いことで。
「お前には、いい人が現れるから心配するな」
ぽん、とルシウスの手がティアラの頭に載せられる。
それは、いつも自分にだけ、してくれる仕草だと思ったのに。
落胆を隠そうにも、隠せない。
それどころか。
勝ち誇ったような笑みを見せるティアラ。
こうもあからさまに敵視されると、言い返したくなるのが、人間というもの。
けれど、
が言い返すことは、無かった。
「 私は伯父様がいいの。
エフェット家とマルフォイ家の婚姻ですもの。
皆様祝福してくださるわ」
幼い少女は、次から次へと言葉を紡いで行く。
ルシウスには、妻が居ることなど、まるで関係ないかのように。
にとって…それはある意味、羨ましいことでもあった。
の中には、いつも、『愛人』という名前が付く。
それ故に、浮かんでくるのはいつも、ルシウスの正妻のことで。
それすら構わず居れる少女が…羨ましかった。
「 そういえば、貴女は何処の名家の出身…?」
いえるものならば、言ってみなさい、といわんばかりの期待の表情を浮かべる幼い少女。
の頭の中には、先ほどのティアラの言葉が詰まっていて、きちんと思考することが出来ては居ない。
故に…思ったことをそのまま口に出してしまっていた。
『自分は、混血だ、』と…。
「 汚らわしい!!
マグルの分際で、この私と同じ空間に居るなんて!!
さっさと出て行きなさいよ!!」
が言葉を言い終えたと同時に、非難の言葉が降りかかる。
その台詞など、聞きなれた言葉で。
しかし、言葉よりももっと酷い事態が起きることとなった。
「きゃっ…」
怒りの浸透しきった少女は、目の前のグラスを掴むと、半分まで入っていたジュースを
に向かって投げる。
グラスは空を舞って、大して距離の無い、
の上半身に落ちた。
勿論、中身のジュースは
の服を汚し、中身を失ったグラスは、高級絨毯の上に静かに横たわる。
「 いい様だわ!!
マグルなんて、消えてしまえばいいのよ!」
流石の
も、コレには泣きそうになる。
幼い少女に此処まで貶される筋合いなど、ないというのに。
これが、どこか他の場所…ルシウスの見ていない場所で起きた出来事だったらば、まだ良かった。
けれど、ルシウスの眼下で…怒った出来事。
きっと、ルシウスも笑っているだろう。
この、幼い少女と同じように。
そう思ったら、顔など上げることが出来なくて。
オレンジ色に染まる自分のスカートを見ていることしか出来なくて。
「 …直に迎えが来る。
それまで大人しくしていろ、ティアラ」
そう言ったルシウスの声を、
は直ぐ傍で聞いた。
ふわりと、身体が宙に浮いたかと思えば、そこには、酷く悔しそうなティアラの表情。
背を支えてくれる温かいルシウスの手の感触に…
初めて
はルシウスに抱かれていることを知った。
「 それから…、
私を好いているなら早めに諦めた方がいい。
私には大事なものが居るからな」
そう苦笑したルシウスは、そのまま、
の額に優しく口付けた。
自分の服が、オレンジ色に染まるのも気にせずに、更に強く抱き締めるルシウス。
自分の首に
が腕を絡めたのを合図に、そのまま扉に向かって歩き出す。
「叔母様に、言いつけるから!!」
言葉に涙を含んだ少女の声がする。
それでも、ルシウスは振り返ることも立ち止まることも無く、部屋を後にする。
まるで、
『だから、どうした』
そういうように。
「仕方ないから、許してあげる」
「何を、だ?
」
自室へ向かう階段を上りながら、ルシウスが問う。
「勿論、全部よ」
嬉しそうに微笑んだ
は、ぎゅっとルシウスの首にしがみ付く。
その瞬間、
には、ルシウスが微かに微笑んだのが、判った気がした。
邪魔者の居ない、二人だけの休日は、これから始まりを告げる。
■ あとがき ■
何が書きたかったのか?!
はい、それは聞いてはいけません(笑
家に小さな子供が遊びに来ていて、その子とばっかり遊んでたら、嫉妬したうちの犬を見て思いついた浅はかなネタなんです(苦笑
この女の子…性格悪そうですね…
なんだか、もう一回くらい出てきそうな勢いです(笑
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