Eternal Christmas 後編






どれくらい時間が過ぎたか判らない。
いつもよりも長めの夕食をみんなと食べている時に、スネイプ先生がふと、席を立って歩き出したのを私は見た。
それだけならば、私もみんなと食べかけのチキンを頬張り、暖かいスープを飲んで、色鮮やかなケーキを堪能した後で、スネイプ先生の部屋に行ったであろう。
でも、今日は違っていた。






私の目には、スネイプ先生と、その先生に駆け寄るように走って行ったある生徒。
私と同じスリザリンの制服を着た、髪が少し長めの純血の魔法使い出身の成績優秀の美少女。
私より1つ年下で、器量がよく、どの寮の生徒とも訳隔てなく付き合っているという噂の彼女。



-------------スネイプ先生のことが好きだと噂されている、セレス・リブナール。



私は彼女が嫌いだった。






何かを語りかけたであろう、セレスは微笑みながら先生を引き止める。
それから暫く立ち話をした2人は、連れ立って歩き出した。
私は急いで後を追うように席を立った。
いつもなら、こんな、探るようなマネ、しない。
でも、今日はクリスマス。
好きな人と一緒に過ごしたいと思うのは、皆、同じ。
でも、私を行動に移させた要因はそれだけではなかった。






……笑ったのだ。
あの、セブルス・スネイプが。






私以外の、女の子に対して。






そう思ったら、私は席を立って、あとを付けるように2人の後ろに着いて行った。
一体、何処へ行くというのだろうか。
私の位置と距離からでは2人の話し声は途切れ途切れにしか、聞こえない。
その単語から文章を推測する事が恐ろしい事のように思えて、私は敢えて聴覚を研ぎ澄まさないように…寧ろ、誰かに見つかりはしないかと視覚だけを最大限ま で極めて2人を追った。






5分くらい歩いただろうか。
2人は石像の前で立ち止まり、何やら話を始める。
丁度、石像が無意味にごろごろ転がっている場所だったため、私はその内の1つに身を潜めるようにして座り込む。
此処からだと、2人に私の姿は見えないけれど、私には姿どころか話し声さえ聞こえる好都合な場所。






「で、何の用かね、ミス リブナール」






この呼び方だけで私は少しだけ、安心する。
どうやら、ファーストネームで呼ぶのは、私だけみたい。
人のこないような場所で呼ぶのだから、普段もそうに違いない。
でも、まだまだ安心は出来ない。






「先生、先日のお返事を、頂けませんか?」






優しそうに微笑むセレスはまさに天使と言えるべき存在だった。
柔らかい口調でそういう彼女は、女の私から見ても、ドキッとさせる。
おまけに、さらりと肩から落ちるシルクのような髪が彼女の顔に掛かって尚一層彼女を際立てた。
それだけで、自分が男であったらば、落ちていたかもしれない。






「返事?それはあの時に言った筈だがな」


「いいえ、先生。
 あの時は動揺されていたんですわ。私が急に服を脱いでしまったから…
 だから、断りの返事を…」






思い出したように顔を赤らめるセレス。
好きな人に告白するために服を脱ぐなんて、流石はスリザリン生。
ん?



……先生、私そんな話聞いてないんですけど。






「あれは君が勝手に脱いだのであろう。
 それに、我輩は動揺等していない」


「では、何故に私を拒否なさるのですか?
 私は、先生に気に入られているという自覚があります。
 それなのに、どうして…」


「いいかね、ミス リブナール。」


溜息と共に先生がそう言うと、セレスは”ミス セレスと呼んでください”と講義の声を上げた。
それでも、先生は耳を貸すことなく、話を続ける。






「我輩は動揺等していないし、君を特別扱いもしていない。
 ましてや、身体を差し出せば男は皆落ちる等と言う馬鹿げた考えを持っているようなモノを好きになれるほど落ちぶれてもいない。
 それから…、我輩がファーストネームを呼ぶのはこの世で唯、一人だけなのだよ。
 そして、それは君ではない、ミス リブナール」






セレスの瞳から、はらはらと涙が落ちる。
小さな嗚咽させ聞こえてくるのに、先生は身動き1つせず、話を進める。






「ミス リブナール。君は寓話を信じるかね?」


「いいえ、先生。
 空想が作り出したものを信じる事は出来ません。」


「では、我輩の為に泣いてくれるかね?」


「…ですから、今こうして・・・・」


「それは悲しいからであろう?
 我輩の為に嬉しくて涙を流す事が出来るのかね」


「……判りません……でも……、」


「帰りたまえ、ミス リブナール。
 我輩には、我輩のためだけに泣いてくれる愛しい者が居る。
 彼女にこんな場面を見られて悲しませたくはないのでな。
 もう二度と、こんな話はしないで頂きたい」






それだけ言うと、セレスはついに声を上げ、泣きながら私の傍を駆けていった。
思わず前のめりになっていた私は、危うく彼女とぶつかりそうになるのを何とか避けて、元の石像の位置に戻ると、先生に気づかれないように食堂へと戻ろうと そろり、と動いた。
その時。






「何処に行くのかね、ミス 






目の前に立ちはだかる黒い陰…いや、黒いローブ。
先ほどと同じ、感情の篭らない冷たい声。
それでも、私が大好きな先生の声。



今、一番聞きたくない…聞いてはならない声。






「せ、先生…偶然ですね、何してらしたんですか??」



思わず顔が引きつる私。
ばれていたのだ、多分、最初から。
私が2人の後を追いかけた時点で、先生は私の存在に気づいていながら、話をしたのだ。






「ほぉ……我輩相手にシラを切るつもりかね。
 まぁ、それもいいだろう。今宵はクリスマスだ。
 つまらぬ事で揉める気など更々無い」


「え?ちょ、せんせ!!」






言うだけ言って、先生は私を軽々抱き上げた。
そしてそのまま、横抱きにして、セレスが駆けていった食堂とは全く正反対のほうへと歩いていく。
幸い、未だ食事中なのか、誰も居ない。
その瞬間に食堂のほうから歓声が上がる。
どうやら、何かが始まったみたいである。
それでも、私にはそんなことはどうでも良かった。
これから、2人だけのクリスマスを迎えるのだから。






「先生、どうして黙ってたんですか?」


抱えられながら、私は問う。
下から見上げる先生の顔が綺麗で、思わず顔を赤らめてしまいながら。


「先ほどの通りなのだがね。」


「それだけじゃ説明になってません」



「……では、我輩は服を脱いで迫ってきたミス リブナールを張り飛ばした、とでも言えば通じるのかね。」






…張り飛ばしたんですか、先生。
紛いナリにも女の子を。



私が絶句しながら、言葉を紡げずにいると、先生は続けてこうも言った。



我輩は しか見えていないのだからな、と。






「…ところで、今年は何を頂けるのかね、


「プレゼントですか?
 そうですね〜一応考えたんですがどうも、いいものが浮かばなくて…」


「では、今年は我輩がリクエストしてもいいかね?」


「えぇ、いいですよ。
 ただ、この短時間で用意できるものに限りますが」






そう言った私は、先生を再度見上げる。
すると、先生は、ニヤリ、と笑ってから、私の耳元でこう囁いた。






---我輩は、 の全てが欲しい---と。






その問いに、唯私は小さく頷く。





私もそのつもりだった、なんて死んでも教えませんけどね。







続編へ。
↑クリスマススペシャルという名目で、続編はお約束の裏です…(笑)
鬼畜気味な教授さん、いらっしゃ〜いvです(死)
続編は、このドリームの”前編”にリンクを張ってありますので、読みたい貴女は頑張って下さい(爆笑)
後書きも其方にありますので、お暇な方はどうぞv
尚、隠し場所に関しては一切口外しないのでご了承下さいませ。




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