Eternal Christmas 前編






こんな事、絶対に興味がない人だと思っていた。






ホグワーツにも、雪が積もって早一ヶ月強。
白一色に包まれた雪原のような大地で、黒一色に身を包んだ全く対照的なコントラストの人物が居る。
白のキャンバスに落ちた黒いインクのような存在で居る彼は、一際際立って周りの目に映る。
彼は、深々と降っては積もる雪の中で何かを探しているようだった。






「ねぇ、あれ・・・・・・スネイプ先生じゃない?」






近くでそんな声が耳に入る。
クリスマスをホグワーツで過ごす学生の内の一人だろうか、私には聞き覚えのない声なので、私に話し掛けている訳では無さそうだ。
それでも、会話の中に混じってきた”スネイプ先生”の文字に、立ち退きかけていた私の足が止まる。
スネイプ先生・・・魔法薬学教授、通称:陰険根暗のエコヒイキ教師。
自分が寮督を勤めるスリザリンの生徒にはそれなりに優しく・・・基、基本的に接し、敵対するグリフィンドール寮の生徒には鬼のような仕打ちをする自己中心 的教師。
最近は、グリフィンドール寮のハリー・ポッターを虐める事を楽しみの1つに加えた、なんて噂もある。






まぁ、私には関係ないけどね。



「せーんせv」






周りから生徒達が完全に消えるのを待ってから、私はようやくその場から、スネイプ先生の元へと歩み寄る。
語尾が甘くなってしまうのは、いつもの癖。
大好きな先生を呼ぶときの、私の癖。
そんな、私の声が聞こえたのか、雪の中から黒い陰が僅かに動いて先生が顔を上げる。






「・・・・ か。どうした、課題は終わったのか」



・・・、愛しい恋人に逢えたと言うのに、第一声目は『課題』ですか、先生。



「勿論、終わりました。だからこうして先生を探しに来たんじゃないですかv」



勿論、これは嘘。
課題なんて終わってるはずがない。
スリザリン生の私にさえ、膨大な量の課題を出すなんて・・・先生私と冬休み中、会いたくはないんですか?






「ほう。それは素晴らしいな。
では、後で我輩の部屋に課題を持ってきたまえ。
特別に採点してやろう」



「い・・・いえ、あの・・・・、まだ、抜けてるところとかがあるんで、結構です!!」



「・・・・・なるほどな」






ピクリ、と眉を僅かに動かして、口角を少しだけ上に上げて先生は言う。
私の言葉がどもってしまったのが原因か、最初から嘘がばれていたのかは判らないけれど、先生は何かを悟ったようだ。
・・・不機嫌なオーラを少し出しながら。






「そ、それより、こんな雪の中で何してたんですか?もうじき夕食ですよ??」






先生の顔を覗き込んだ私の目に、酷く皸た先生の指が止まる。
普段は、透けるように白い指先が、紫に変色しかけて真っ赤になっている。
みているだけでもそうとう痛そうである。
長時間、雪の中に手を突っ込んでいた証拠。






「先生!!いい大人が何時間も雪遊びしちゃダメですよ。ほら、真っ赤に腫れてるじゃないですか!!」






冷たくなった先生の手。
私は嵌めていた手袋を先生の手に無理やり被せると、上から擦るように暖める。
血が通ってないみたいな冷たい指先。
こんなになるまで、何を探してたんですか、一体。






「・・・ミス、君は寓話を信じるかね?」


「お伽話ですか?小さい頃はよくお母さんが話してくれましたけど・・・」


「では、”雪凪の花”という話は知ってるかね?」


「知ってますよ、勿論。
雪凪の花を好きな相手からプレゼントされるとその人は一生その相手に愛されるっていう意味の花言葉を詰ったお伽話ですよね。
 少し前に友達が教えてくれました。ホグワーツに伝わる、お伽話なんですよね」



「・・・・・寓話等ではないのだがな。
 まあ、いい。
、薬指を出したまえ」



「・・・・・はい?」






左利きの私は、言われるままに先生の前に左手を差し出す。
先生は懐から一本の小さな白い花を取り出して、私の左手の薬指に巻きつける。
すると、
茎の部分がくるっと一回転して、指の中心に白い花が来る形の一種の指輪のような形状に変わる。
茎の余分なところが自然と落ちて、白い花は綺麗なガラス細工の花へと変化した。






「・・・・???せんせ、これ・・・・」






指を見ながら困惑気味に尋ねると、先生は少し笑ったような照れたような顔をして、






「それが、雪凪の花、だ。
 相手に付けると自然と指輪へと変わる魔法草だ」






え?
ちょ、ちょっと待って下さい、
私が雪凪の花の話を聞いた後、確か・・・・






「先生、この花・・・・百年に一度しかホグワーツに咲かない、って・・・・
 しかも、気温マイナス10℃以下でしか生息できないっていう話じゃ・・・・」



「今年がその100年目なのだよ、
今月の気温位、気にとめる事も必要だと思うが?」






少々眉間に皺を寄せた先生。
それでも、目が優しく微笑んでる。
先生、私の為に、こんなに冷たくなったんですか?
薬を調合するとき、染みたりしませんか?
綺麗な手が・・・傷だらけじゃないですか。
どうして、そうなんですか?
普段は恐ろしいほどに冷たい貴方が、
どうして時々、呆れる位に優しいんですか?






「・・・何故泣く。
我輩は、 を泣かせたかったわけではない」






その気持ちが痛いほど伝わって、私の目から、幾筋もの涙が零れ落ちる。
困ったように言う先生が、そっと私を抱きしめてくれて、
周りにはらはらと散る雪が凄く綺麗で、
先生の温もりが、酷く暖かくて。






「せんせ・・・、私・・・」






言葉が思うように単語にならなくて、
泣いてる所為か、嗚咽と混じって更に聞き取りにくいものとなって。
何をどう言ったらいいのかすら判らなくなって、ただただ、先生の暖かい胸の中に顔をうずめる事しか出来なくなっていて。






「夕食が終わったら・・・、我輩の部屋で、2人だけのクリスマスを迎えようではないか」






耳元で先生が優しく囁く。
その声は酷く甘美で、妖艶さをも含んでいて。
そっと髪を撫でてくれる仕草に胸が熱くなる。






思ってもいなかった、先生の発言、行動。
今夜は、何かが起こりそうな気がする。
それは、先生が一瞬だけ見せた、あの、勝ち誇ったような表情から察する事が出来た。
そして、それが現実のものとなる。






今日は12月24日。



白い白い雪が舞い散るホワイトクリスマス。







後編へ続く。





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