この樹なんの樹、気に為る…樹?
written
by Saika (2006.6.28)
時は薄紫の空が広がりを見せ始めた早朝、場所は魔法薬学研究室奥のスネイプの自室。
「さーて、お目当てのものは何処かしら…あ、此れ此れ、私は貴方を求めていたの。」
漆黒の外套をすっぽりと頭の上から被り、ご丁寧に手拭いを捻り鉢巻の様に後頭部から耳の後に掛けて鼻の下で引き結んだ江戸時代の窃盗スタイルのが、朝
霧を背に立っていた。
眼前に犇く様々な薬品が詰った薬瓶をラベルも読まずにポイポイと教卓の上に置いては、あぁでもないこうでも無いと大きな独り言を零しながら、目的の瓶を探
している様子。「あったあった」と独り言を言いながら掻き集めた薬瓶既に20本余り。何に使うのかは一切不明だが、は20本全てを順番などお構い無し
に手当たり次第魔法鍋に突っ
込むと、劫火の勢いで焔を滾らせ、沸点を超えた時点で一気に上から液体窒素をぶち込んだ。
ボコッ、ボコ、ゴボボボボボボボ……と、何かが猛襲した様に急激に煮沸する。
「ふ…ふふふふふふふ…」
(…………現在魔法熟成中、チャンネルは其の侭でお待ち下さい)
ボゴンと一つ間違った咳払いの様な音を立て、ぐらんぐらん左右に揺れていた魔法鍋が静まる。
次いで、パキリ、と小さな音を立てて高さ1cm程度の薄い薄荷色の氷が出来上がる。其れを見て、は酷く満足そうに口元を歪め、文字通りニヤリと不敵な
笑みを零した。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪♪」
脳裏では既に予想されている結末に着実に近付きつつ在るのか。
は鼻歌交じりにローブの中に手を突っ込み、何やらがさごそと弄り、効果音付きで1L牛乳パックを取り出し、即座に口を開ききると勇ましく中身
を大鍋に注ぎ込む。
(因みに、1L牛乳パックが何故ローブの中に入っているのか、また小さいローブの一体何処に格納されていたかは業務上の秘密である。)
ボボボボコッ、ボコ、ゴボボボボボボ……と、先程のデジャヴの様に、何かが猛襲した様に急激に煮沸する。
魔法鍋を再び左右に激しく揺さぶる程の威力を持つ1L牛乳パックの中身。
其れは、一体何を混ぜ合わせたのかすら想像したくない程に濁った色味が強く、所々斑模様に出来上がった土気色のポリジュース。
魔法鍋の中身が綺麗
に攪拌されていく様子を
横目で見ながら、満面の笑顔でスネイプが大切に世話をしていたのだろう、柔かな土に根を
張った15cm程度のマンドラゴラを無残にも鉢諸共鍋に突っ込む。何の容赦も無ければ躊躇も無く、男らしい潔さ満天、片手でポイ、である。
そうして最後の仕上げに凝固魔法を一発。万事OK、此れで小指程度のカプセルが出来上がっていれば完成だ、あとは此れをスネイプ教授に飲ませれば全てが想
像通りのシナリオを辿り、此れを飲んだスネイプ教授は……
スネイプ教授は……
…………スネイプ教授は……
「あれ?失敗?可笑しいわね、ちゃんと入念にとある双子で人体実験を重ねた筈。
私の頭脳を以ってすれば間違いなく小指程度の変身薬が出来上がっている筈よ、可笑しいですわ。
何処で間違えたのかしら?いいえ、間違いだなんて、そんな筈は無いわ、ちょっと時間が掛かり過ぎているだけよ、そう、何も問題も無いわ!」
スネイプが温室の世話に行っているのを良い事に、魔法薬学研究室中に響き渡る大声で心の中の焦りを口に出したは、そろそろと忍び足で魔法練成が終って
いる筈の魔法鍋へと近付いて行
く。
一歩一歩前進する度、マンドラゴラとポリジュースが合さった独特の凄みある臭いにハンカチで鼻を押さえ餌付きを堪えながら、はゆっくりと大鍋の中を覗
き込ん
だ。
其処に在ったのは、凝固した薄荷色の液体と薄荷色の液体に身体を縛り上げられる様に凍りついたマンドラゴラ(鉢付)。
「可笑しいわね、何処で間違ったのかしら?まぁ良いわ、時間は幸いにして豊富に在る訳だから、もう一回…」
赤茶け、30cm程度の鉢の半分までを薄荷色の液体に汚染されたマンドラゴラの葉を問答無用で握り締めると、華奢な腕に全身全霊を篭めて力任せに上方へを
引っ張り挙げた。
ところが世の中そう簡単にはいかないものである。ピシリ、と薄荷色の液体に薄氷が割れる様な皹が入るだけで、鉢は引き抜けるどころかピクリとも動かない。
寧ろ、更に深く減り込んだ気さえしてきた。
「ふんっ!」
乙女に有るまじき気合を入れてみてもダメである。
為らば、と魔法鍋が掛かっている脇の壁に足の裏を引っ付け、全体重を加味して引っこ抜こうとした矢先、ぐらりと大鍋を支えていた台が揺れマンドラゴラが抜
けるどころか大鍋ごとの上に振り被って来た。
後はもう想像通りである。
漆黒の外套に唐草模様のほっかむりをしたの頭上に、大量の魔法薬が滝の様に流れ込んだ。
「どぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ、臭い、くさい、くさ………」
猛烈な眠気と倦怠感、ポキポキと骨が軋む様な音と壮絶な悪臭に苛まれながら、は思う。
ポリジュースに百味ビーンズ糞味と鼻糞味を
混入したのは失敗だった、と。せめて、鼻糞味だけにして置けばよかった…とも。
沸点を優に上回った熱さも臨界点を突破した冷気さえも感じる事無く、唯ポリジュースとマンドラゴラの素敵で芳しい香りに全身を包まれながら、は魔法を
掛けられた様に瞼を閉じた。
-------------------------それから約三時間後、静寂仕切った魔法薬学研究室の重味
のある石造りの扉を蹴り破らん勢いで開いたのは、この部屋の主人・セブルス・スネイプ教授その人だった。
「まこと腹立たしいわ!大体だな、如何して我輩が忌わしいポッター何ぞの肩身を持たねば為らんのだ!
我輩はあくまであの忌まわしい借りを一秒でも早く返す為だけに我輩は力添えをしているだけだと云うに、何をトチ狂ったかあのクソガキ………(怒)。
思い出しただけでも腹立たしい、口に出せば余計に腸煮え繰り返るわ!
今日は朝からに捕まらず我輩の星座は1位だと喜んで居れば糠喜びではないか!
これ以上気分を急降下させぬ為にも、今日は一歩も出んぞ、
我輩は今日この部屋から一歩も出ないと決めたら出ぬのだ!」
開口一発目、誰も居ない事を予想して怒号の如き勢いで腹内に溜め込んだ憤りをがらんどうの空間へと放出すると、手近に在った椅子に腰を落とした。ローブが
だらしなく床に垂れるが知ったことでは無い。
今日は如何も朝から妙な胸騒ぎというか山勘というか悪寒が走るというか、兎に角妙な気配に付き纏われていると思えば、元凶がではなくポッターだった
とは。抜かった、最近はにばかり気が行ってポッターはノーマークだ。
腹立たしい、憤りが納まらぬ、こう云う日は次から次へと惨事が振って来る様な予感さえ過ぎる。大人しく自室で溜まったレポートの採点でもしよう、今の内に
厳重に鍵を落とせばさえも入って来れまい。
「(ふっ、一枚上手だな。)」
懐から杖を取り出し、自室の錠を5重に施した後丁寧に暗証番号と秘密の質問(勿論解答付き)を魔法で掛け、ふぅと浅い息を付く。此れで軽めのカモミール
ティーでもあれば言う事は無い。
あぁそう云えば、と先日友人が送ってくれたカモミールティを薬品棚に陳列した事を思い出し、視線を
後方の薬品棚に移した。其のとき。偶々目に付いたものに違和感を感じた。
「………………………………………………………………」
ラベルに記載された名称でアルファベット順に整理して陳列された薬瓶の小脇。薄暗い室内の翳に埋もれて見え辛い視界の片隅、最近手に入れたばかりの珍種の
マンドラゴラを置
いていた。
日光を激しく嫌う性質で在り水分だけは充分に与えて遣らねば即座に枯れる故、普段から目に付く位置に置いておこうとしたのが一ヶ月ほど前。其れから丹念に
丹念に手塩に掛けて育てて来た筈のマンドラゴラ。
それに、妙な違和感を感じた。
「…………はて…こんなに大きかっただろうか。」
昨夜見た際は少なからず、鉢を含めても身の丈50cm程度の小ぶりなマンドラゴラだった筈だ。其れが僅か一日で、1メートル以上も成長するものだろうか。
昨日間違えて生長剤を一錠ではなく一瓶もあげたか?いや、幾ら疲労困憊だったとはいえ、そんな過ちを我輩が犯す筈は無い。
いやいやまてまて、よくよく見てみると、色も僅かにくすみ、所々が斑尾に為っている。はて、突然変異でもするような事が明記されていただろうか。
じぃ、と眇めた瞳で無愛想に凝視すれば、ほんの一瞬、マンドラゴラが戦慄いた気がした。如何も可笑しい。如何考えても可笑しすぎる。もしや、が朝我
輩が自室に居ないのを良い事に、マンドラゴラを何か別の物体…そう例えば人喰いワニの子どもだとか吸血ピラニアだとか食人間花にでも植え替えたのだろう
か。
有り得る、充分に有り得る。が朝食に見えなかったのは此れが原因では在るまいな?此処は一つ、慎重に…
「………………………………………………………………」
鉢に手を添えマンドラゴラの葉を鷲掴む。
瘡付いた枯れ葉の様な感触と水に濡れたようにやんわりとした、けれど人肌のようにリアルな温かみが我輩の肌を一瞬で伝い、ゾクリと背に悪寒が駆け抜け
た。
たらりと自然に流れる汗に、厭な気ばかり起きる。鬼が出るのか蛇が出るか。何か出るなら早めに出ておけ、とばかり勢いに任せて根元から一気にマンドラゴラ
を引き抜いた。
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃぁぁ〜〜〜〜ん♪
お待たせ致しました、でございますわ、スネイプ教授。さぁ、貴方の願いを一つだけ…」
引き抜いた先、認めたくない物を我輩は見付けた。バカが出た、と大きな溜息を吐きながら眉間の皺に指を当てたくなる。
ズボッと音を立てて出てきたのは、マンドラゴラの付根を頭に生やし、普段以上にテンションの高いが顔中に土を塗した状態で作り上げた満面の笑み。
例えるなら、蛇遣いのコブラだろうか。ぱぁぁっぁっと光りと眼を滾らせ意気揚々と口を開き未だ尚何か言葉にしようとするを…
ズボッ。
埋めた。問答無用で土の中に叩き戻してやった。
先ほどと同じ音を立ててマンドラゴラを頭から生やした奇怪な生き物を見なかった事にする為、我輩は無理やりマンドラゴラを鉢の中へ強制的に埋め込むと、隣
に置いたカモミールティーを取り出し、蓋を開ける。キュポンと云う破裂音と共に広がる独特の香りに心が休まる。
あぁそうだ、我輩は疲れて居るのだ。頭にマンドラゴラを生やして鉢の中で蹲っているスリザリン寮監督生など一瞬たりとも見ていない、そうだ、見ていないの
だ、我輩は連日の作業で極限まで疲れているのだ、そうだ。間違い無い。
「スネイプ教授!今見なかった事にしましたね!?全て無かったことにしましたね!?」
我輩が引き抜かずとも自分で土の中からゾンビの様に両腕を突き出し、頭上の土を払い除ける様に土の中から上半身を這い出させたは、酷い酷いと我輩を
睨む。頭と顔に降掛った土埃をパンパンと払い除けながら、小さな仕返しとばかりに鉢中の土を掌で丸めて投げ付けながら、厭味ったらしく口を開いた。
「見なかった事にして何が悪い!
良いかね、此処が我輩の自室だとか勝手に忍び込むなと何回言えば理解するのだとか、人のものを勝手に触るなとか取り敢えず言いたい事は山の様にあるが今回
の貴様の服装は何だ、新手の仮装大会かね。
此れを見て怒らぬ寛大な人間が居るなら此処に今直ぐ連れてきたまえ、いいか、人が丹精込めて世話したマンドラゴラを無残に引き抜いて鉢を巨大化させた挙
句、貴様が我輩の一ヶ月の研究成果を無駄にしたのだ、判るかね!?」
「……お言葉ですが教授、私だって好きでこんな恰好をしている訳ではありませんわ。
ほんのちょっと…スネイプ教授にマンドラゴラに変身した挙句生徒に見付かって生ゴミ廃棄され燃やされかける体験をして頂こうと思いまして、このが朝
5時からせっせと準備していたのですが………気付いたら頭からマンドラゴラ生えてま
したの」
「………………………………………………………………」
「あぁ如何しましょう、折角スネイプ教授の為に丹精込めた魔法だったのに、此の侭だと私が燃やされてしまいますわ!こんな姿じゃ寮にも戻れないし…何よ
り、スネイプ教授への愛が私をあそこまで駆り立てたんです。そう、ス
ネイプ教授に全ての責任があるのですわ、そうですわ!
…と言うことで、不束な娘ですが、此れから宜しくお願い致します、スネイプ教授。」
律儀にペコリと頭一つ下げた。
頭の上に生えたマンドラゴラに降り積もった土が一気に我輩の顔を目掛けて発射され、心底馬鹿にされたような心地になる。我輩の感情総シカト状態で尚も土を
飛ばし付ける頭上のマンドラゴラに、ピキと浮き上がった血管を、もはや隠す事すら出来はしない。鉢から抜け出そうと上方へ伸びようとするの身
体を、もう片方でぐっと押さえつけるのが精一杯だ。
「貴様、何寝惚けた事を言っている、顔を洗って出直して来い!
これ以上暴れて部屋を土だらけにするつもりかね、さっさと魔法を解いて部屋へ帰れ!
毎度毎度貴様に構って遣れる程暇では無いわ!!」
あぁもう如何して今日はこんなにも厄難が降って来るというのだ。
この間はアフロ頭にされた挙句にアルバスに余計な………………………あぁ思い出しただけでも嘆かわしい。そろそろ本気で厄除けにでも行くべきか?それとも
転職?いや、
アイツは地の果てまで掛けて来そう
だ、此処はやはり百発百中の厄払いだろう。ともすれば、早々に予約せねば為るまい。
鈍痛に苛まれる頭を抱え、思いながらローブを翻し、淹れたてのカモミールティを口に含んだ瞬間。
「帰りたくても帰れませんの、だって魔法の解き方知らないんですもの。」
「………………貴様、今何と言った?」
「えぇですから、解きたくても解けなくなってしまいました。
だって私の予想では小さいカプセルが出来上がる筈でしたのに、気付いたら頭にマンドラゴラ生えていたんですよ?私に解けるわけがないじゃなですか。
あぁ、憐れな・。マンドラゴラを頭に生やした侭、帰れる場所が無いんです。
未来の旦那様の部屋は未来の奥様である私の家……だから暫くの間宜しくお願い致します、だ・ん・な・さ・ま」
にっこりと秀麗な笑顔を零し、天津さえ語尾を一つ一つ区切って可愛らしく首を左右に振って見せた。
其の仕草にの頭上のマンドラゴラがファサファサを風に戦ぐように揺れ、時折瘡付いた葉が我輩の頬に触れ、まるで撫ぜられているかのような感覚に虫唾
が走った。
「やっぱりここは三つ指でもつくべきかしら?んもう、スネイプ教授ったら、お堅いんだ・か・ら。」
ふうぅぅ、と長い溜息を吐きながらが肩を竦める。しかも、ご丁寧に掌を上に見せ、やれやれといった顔つきで。押さえつけた手が怒りに震えて外れそう
だ。
この間切れたばかりの堪忍袋の尾が再び、盛大にブチリと千切れる音を片隅で聞いた気もする。
だが、我輩も三十路を遠くに迎えた立派な大人である。そう易々と毎回毎回理性木っ端微塵にブチ切れていると何より身体が持たない。血管をはちきれさせて盛
大にキレればキレる程、最近は腰に響く様になった。あぁ、歳とは辛いものよ。
…と暢気に言っている場合ではない。
「これ以上バカになりようのない頭がさらにバカになったようだな。
ではバカの中のバカである君でもご理解頂けるよう、簡潔にご説明しよう。ここは私の部屋
だ。
迷子になったのならそのバカ面に似合う、ミラクルバカな迷子札を作ってやろうか?」
「御心配には及びません、そんなこともあろうかとこんなものを作ってみました。」
|
迷
子札
スリザリン寮公
認マンドラゴラ@・(スリザリン科マンドラゴラ目)
---------------------------------------------------------------------------------------------------
生息地:スリザリン寮監督兼魔法薬学教授、セブルス・スネイプ氏自室
関 係:スネイプ氏の未来の妻
その他:放置プレイされているのを見掛けましたら、生息地までお運び下さい。
|
自信満々に「迷子札」と書かれた看板を土の中から掘り起こす様にして、鉢の上野柔らかい土に突き刺した。が見ろ、と言わんばかりにきらきらと瞬かせ
た
視線の先、書かれた文字を見た我輩は、土に刺さった立て看板(品種札?)を引き抜くと、問答無用で杖を取り出し焔を灯す。
何時ぞやの監督生日誌の様にジ…と、墜星の様な残響がかそけく響いて、の目の前で立て看板が一気にこんがりとした消炭と化した。其れを満足げに眺め
遣って暖炉へ放り投
げる。
「だぁぁぁぁ-------------------------!
心無い鬼悪魔鬼畜スネイプ教授が私を生ゴミに出したら誰が私を此処まで運んでくれるんですか!!」
「やかましい!!誰が鬼悪魔だ、我輩が鬼悪魔なら貴様は疫病神だろうがッ!
此れから片付ける論文に飽きたら元に戻れる方法を探して遣る、其れまで其処で大人しく待って居れ!」
「其処…って此処ですか!?こんなジメジメして黴臭くて湿度がアホみたいに高い場所に放置!?
酷いですわ、あんまりですわ、スネイプ教授はが愛しく無いんですわ…!
あぁぁぁ、カビが生えたら如何しましょう、苔が生したら如何しましょう、根っこなんて生えた日にはもうお嫁に行けませんわ…!!!
私はきっと一生此処に放置プレイなんですわ…だってそうですわよね、論文に飽きたらってあの論文馬鹿なスネイプ教授に限って飽きることなん
てある筈無いんですもの。」
頭にマンドラゴラを生やし、ご丁寧に目薬まで挿しながらはらはらと涙を流すに、最早溜息も出なかった。
結局、何時ものパターンに為るのか。どこぞの国の玩具の様に鉢の上でクネクネと身体を左右に揺らしながらマンドラゴラの葉も揺らす奇怪な動物が入った鉢を
片手で拾い上げ、教卓の隅に置いて魔法を施す。
泣こうが喚こうが騒ごうが鉢から抜け出そうが、マンドラゴラを置いた四方1メートル区間に結界を張り巡らせて、の杖を懐に仕舞い込む。此れで邪魔も
出来
まいに。
「ス・ネ・イ・プ・教・授♪」
時折耳障りな雑音と小さく丸められた土塊がポンポンと飛んで来るが、毒物入りの糞爆弾に比べたら屁でも無い。
只管に論文に集中していれば良いだけの話で在って、を視界にさえ入れなければ其れほど気分が削がれる行為でも無かったし、躍起になって声を荒げるほ
どの事でもない。
数時間、はあぁでもないこうでもないと理由を付けながら邪魔を企て子ども染みた悪戯を仕掛けて来たが、全てを綺麗に流し無視を決め込めば流石に飽き
たのか、夕暮れを迎える頃には頭にマンドラゴラを生やした状態で土の中で浅い寝息を立てていた。
そろそろ反省もした事だろう。元の姿に戻してやるとするか。
心中で呟いたスネイプは頭を垂れカクンカクンと船を扱ぎながらマンドラゴラの葉を揺らす(鉢)を机の上からソファーへと戻すと、袖机の引き出しから
淡い空色の液体が詰った小瓶を取り出し、マンドラゴラに振り掛ける。
ゆっくりと液体が染み渡る様に攪拌され、小瓶の中身が空に為る頃には、頭にマンドラゴラを生やした奇怪動物の姿は見る影無く、スリザリンの制服に身を包ん
だがソファーに横に為っていた。
昏々と眠りに落ちたが身体をよじらせ寝返りを打つ。スネイプは僅かな震動で頬を滑り落ちた繊髪を指先で掬い上げ耳に掛け置いた。
「全く、こうでもせんとお前は大人しく我輩の傍に居れぬのか。」
驚く程柔らかい音程で吐き出された科白は残念なことに、に届くことは無かった。
仄明かりに照らされるスネイプの自室。普段の素行からは到底想像できない程穏やかな顔で眠りに落ちるの僅か数センチの距離を保って、スネイプが腕組み
をしながら浅い眠りを貪った。
数時間後。
普段は交わる事の無い、つかず離れずの二つの人影が、ゆっくりと重なった。
[title]
「これ以上バカになりようのない頭がさらにバカになったようだな。ではバカの中のバカである君でもご理解頂けるよう、簡潔にご説明しよう。ここは私の部屋
だ。迷子になったのならそのバカ面に似合う、ミラクルバカな迷子札を作ってやろうか?」

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