君を愛していないと沿う云えば、君は私の前から消えて居なくなってしまうだろうか。
見せ掛けだけの恋を幾つも踏み固めてきた私は、嘘で塗り固めた想いを吐き出す行為等日常茶飯事で。
愛していない人間に【愛している】と告げる事にも心の痛みを感じる事は無い。
寄って来る女等吐いて棄てる程居るこの時分、態々心の底から誰かを愛する事等に何の意味が在ろうか。
愛される事等、此方から願わなくても手に入った当たり前の事象だとそう思っていた筈だと言うに。
気付けば、何時も君を瞳で追っていた。
在り来たりな恋等に興味等無かった筈が、今までの己を全て否定する様に脆くも崩れ去っていた。
君にだけは【愛していない】と言えない私が、【愛している】と云うのは虚偽なのだろうか。







らいおんハート







「 …を知らないか? 」


「 僕が知る訳無いだろう。ならば朝からポッター達も探していた様子だが。 」










昨夜から酷く不快不穏な空気がホグワーツを包み込んでいた。
その予想が的中するかの様、ホグワーツ内に知れ渡る事となった名門家の壊滅。
魔法界の中でも有権力を持つとされていた家の人間が、何者かに抹殺されたとの酷報が流れ、家の一人娘であるの元にもその魔の手が及ぶ前にとホグワーツには厳重な魔法管理体制が敷かれていた。
スリザリン寮に在籍するは、普段からポッター一味と行動を共にしており、一緒かと思えばポッター一味も朝からの存在を認めて居ないと言う。
偶々寮から出てきたセブルスに問うて見ても行方が知れる事は無く、配下の者も従えて朝からを探していた。
何時も笑顔を絶やす事無く笑い気丈な印象の強いが、本当は誰よりも儚く脆い人間だという事は判り切っていた。
家当主が命と引き換えに飛ばした一羽の傷だらけの梟は、今傷の手当てを受け終えて何とか一命を取り留めたらしいが、その梟が気を失う前に確かにに無残な伝言を伝えていた事だろう。
相部屋の人間が目覚めた時には、ブランケットに抱かれた梟がの代わりにベットに横たわっていたと云う。
気配から、ホグワーツ内に居る事だけは間違い無いのだが何処にも姿が認められてはいない。
膝を抱え、独り涙を流しているのかと想像すれば、傍に居て遣れない己の腹立たしさに怒りが髣髴と湧き上がり其れが周囲に伝わるのか普段は邪魔で仕方ない意外の女も寄り付いて来ない。










「 …まさか… 」










朝からホグワーツ内を隈なく探した。
其れでも誰も姿を見た人間が居ないと言うことは、他の誰かが入る事が出来ない空間の中にが居ると云う事を如実に示している事に為る。
他の誰もが入れる事は許されず、だけが入り込める空間。
そんなものはこのホグワーツ内に唯の一箇所しかない。
思い当たる節を見つけた私は、踵を返すと唯其処を目指して早足に歩いていた。
時折掛けられる声など全て右から左に聞き流して立ち止まる瞬時間でさえも惜しいとばかりに歩いた。
見慣れた風景に辿り着けば迷う事無く入り込んで、扉を開けた。
案の上、扉の奥には独り膝を抱えて嗚咽を漏らすの姿が在った。










「 ……済まない、もう少し早く気付いてやれば… 」










其処は数時間前まで自分が寝ていたであろう自室だった。
特別に与えられたこの部屋は独り部屋であり、私が此処に入る事を許した人間は未だ嘗て一人しか存在しない。
そんな特権を活用する事も少なかったが、私のベット横に座り込んで泣いていた。
細い身体を恐怖に震わせながら、脱ぎ捨てた己のローブに縋る様に低い嗚咽を殺して唯独りで耐えていた。
見るも無残に壊されたと云う表現が正しい程に其の様は痛々しく、触れれば壊れて仕舞いそうな気さえ起きる程か弱かった。
年端も行かぬの脳裏に描かれているのは、一族最後の生き残り等と言う事柄では無く、帰る場所の無くなった事への悲しさと失くしてしまったモノの大きさ。
泣く事しか出来ない彼女を、気が付けば、この腕にキツク抱き締めて居た。










「 ルシ…ウス…誰も、居なく為っちゃった… 」










項垂れる様に力の抜けた細い腕が重力に即してダラリと落ちた。
泣き腫らした瞳は真っ赤に腫れ上がり、留まる事を知らぬ涙は頬に跡を残さんばかりに流れ続けた。
支えていなければ地に伏してしまう様な力の入らぬ抜け殻の様な身体を唯抱き締めて、細く指を抜ける髪を撫ぜた。
如何言葉を掛けて遣れば良いのかすら判らずに、抱き締めて遣る事しか出来ない痴態に腹立たしさが脳天を突き抜ける。
何時も柔らかい笑みを絶やす事無く私を癒してくれていたが、笑みを消したその奥にはやはり泣き顔があるのだと思い知らされた。
一番辛いのは、触れることすら許されない感情等ではなく、目の前で泣かれる事でもなく己の知らぬ処でその表情を歪めて泣く事。
女の涙を見る事が此れ程辛い事だ等と、今まで経験した事も無かった。










「 私が居る。 何時も変わる事無くお前の傍に居る。 」










どれだけ愛の言葉を言えば、この言葉を信じてくれるだろうか。
見せ掛けの恋に、無感情で紡げる愛を述べる言葉。
嘘と偽りだけで塗り固めてきた過去の結末が此れなのだとしたら、其の贖罪を受けるべきだと神は哂うだろうか。
肯定も否定もしないは、唯微動だにせず抱き締められた侭動こうとはしなかった。
泣きたいのならば此処で泣けばいいと、抱き締める事しか出来ないけれど其れでも泣き止む迄延々と抱き締め続けてやるとそう思う。










「 お前は私が守ってやる。此の命に代えても、必ず。 」










お前が失ったモノは、全てこの私が埋めて遣る。
嘗てお前が私の心を埋めてくれた様に、私がお前の心を埋められるのならばこの命が尽きるまで。
本当に愛するという事の意味を教えてくれたお前にだから、虚偽ではない言葉を吐けるのかも知れぬ。
例えこの先一生お前が望む事は無かったとしても、傍に居続け守り抜く。
昨日までのあの微笑を取り戻すことが出来るのならば、これ以上何も望む事は無い。
心の底から誰かを愛する事等に何の意味も無いと嘲って居た過去からは、想像も出来ない程ガラリと変った胸中に自身で哂い。
最初で最後、嘘偽り無い愛情を注ぐ相手はお前だけだと腕に抱き締めながら心の中で呟いた。





















「 ねぇ、ルシウス今日は何処に行くの? 」



「 そうだな、庭にでも出るとするか。 」










伸ばした手に、細いの指が絡まる。
辛い事を全て忘れた様に笑顔を振り撒くは、其の後ルシウスの傍でだけ泣くように為った。
あれだけ多く居たルシウスの恋人も夢絵空事の様に誰一人として身を留める事も無く、何時もルシウスの傍にはが居た。
この先どれだけ多くの時間が流れようと、ルシウスの傍からが消える日は無かった。




何時の日か、本当の意味で愛していると告げられる日が来る時は、迷わずお前に言うだろう。
小さな子供が無いもの強請りをする様に告げる単なる言葉ではなく、意味を持った感情を現すものとして。
口にしてしまえば虚偽に聞こえてしまいそうな其の言葉を、如何して伝えられよう?
否、言う必要など無いのやも知れぬ。
言葉に表せば薄汚くなってしまいそうな愛という感情を含んだ言葉を口に出せない、己。
愛を伝えるには言葉が無くてはいけないのか、と思い知らされるも、否定したい自分が此処に居る。










、私はお前を… 」










愛している。
そう告げる前間際で、振り向いたが同じ言葉を口にした。
お前を護ってやる、この先何が有ろうと私の命に代えてでも。
二度と哀しい想い等させたりはしない。
生きる存在意義を初めて自覚したあの時から、私の気持ちは揺らぐ事は無い。
愛していると同じ台詞を返す代わりに、細い腕を引き寄せて口付けを。







あの日誓った言葉を、私は二度と忘れることは無いだろう。






















後書き

藤原 アヤメさんに捧げるルシウス夢です。
 ・ ルシウス・マルフォイ(学生)。
 ・ スリザリン、スネイプ達と同年代。

悲恋不可との事だったのですが、如何考えても悲恋の様な気がしてなりません(汗)
私の中でのルシウスのイメージが如何も、ヒロインに出会うまではタラシだったという暗黙の鉄則があったりするので、途中で酷い男オーラ出してしまってますが(苦笑)。
やはりヒロインにだけは優しいルシウスが私は好きらしいです。




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